(2022年5月30日週) 海外資金調達 Weekly <Seed&Early編> パンデミックで成長加速のQコマース、ポテンシャル大きいインドネシア市場は誰が制するか

(2022年5月30日週) 海外資金調達 Weekly <Seed&Early編> パンデミックで成長加速のQコマース、ポテンシャル大きいインドネシア市場は誰が制するか

    この記事では、5月30日週に資金調達が報道されたシード・シリーズA・シリーズB(それぞれプレラウンドを含む)の企業を調達額順に紹介します。

    シード第1位 Princeton NuEnergy(資金調達額1,000万ドル)

    シードラウンドで1,000万ドルを調達したPrinceton NuEnergyはリチウムイオン電池のリサイクル技術を開発し、EV製造などリチウムイオン電池関連企業に対してライセンシングやコンサルを提供している、Princeton大学発の企業です。本案件は、同社が戦略提携を結んでいるWistron GreenTechの親会社Wistronが率いる形での調達となりました。

    同社はリチウムイオン電池の構成材料(リチウム酸化コバルト、ニッケル・コバルト・アルミニウム酸化物、ニッケル・コバルト・マンガン酸化物、リチウムリン酸鉄)の95%を回収できるLPAS®(Low-temperature Plasm-Assisted Separation)技術で特許を取得しています。同社はリチウムイオン電池のリサイクルが、リチウムイオン電池のコストを引き下げるとともに、水・エネルギーの利用やCO2排出、ガス・液体廃棄物が減り、環境負荷の緩和につながるとしています。

    Verified Market Researchによると、EVの普及加速等により、世界のリチウムイオン電池は2019年の364億ドルから、2027年には1,160億ドルに成長する見込みであり(※1)、他のリサイクル技術開発企業も資源会社やEVメーカー等と戦略提携・資本提携を結ぶケースが散見されています。同様にリチウムイオン電池のリサイクルを手掛けるLiCycleは今年に入り、LG Energy SolutionやGlencoreから計2億5,000万ドルの投資を獲得しています。

    リチウムイオン電池に含まれる資源価格は、EV化による需要の高まりや、特にニッケルなどはロシアによるウクライナ侵攻に伴う供給懸念から高騰しており、このこともリサイクル技術への関心を高めている要因となっています。


    シリーズA第1位 Profound Bio(資金調達額7,000万ドル)

    シリーズAのエクステンションラウンドで7,000万ドルを調達したのは中国で癌に対するバイオ治療薬の開発を進めるProfound Bioです。Profound Bioは、薬物を添加した抗体を使うことで、癌細胞にターゲットを絞り、薬物を届ける抗体-薬物複合体、癌細胞に結合する抗体とT細胞に結合する抗体の抗原認識部位をあわせもつT細胞エンゲージャー抗体により、免疫細胞を活性化するT細胞エンゲージャー、2つのアプローチを取っています。現在抱える10のパイプラインのうち、2つが前臨床開発段階であり、臨床試験に進めるための資金調達となります。

    上場企業ではナスダックに上場する米国のSeagenが同様に癌のバイオ治療薬を開発しています。同社は主として4種類の医薬品を販売しており、2021年の売上は15.7億ドル(ロイヤルティー収入・ライセンス契約等含む)、純損失は一時金の影響もあり6.7億ドルでした。同社は6/7現在約266億ドルの時価総額で取引されています。


    シリーズB第1位 WorkOS(資金調達額8,000万ドル)

    シリーズB1社目は、プロダクトマーケットフィット(PMF)後の企業のプロダクト開発を支援するAPIプラットフォーム、WorkOSです。同社は、Single Sign Onやディレクトリ同期、管理者ポータルといった、エンタープライズが導入するために求める機能を簡単に付加できるAPIを提供しています。エンタープライズは一般に、サービスの質やセキュリティへの要件が中小企業と比べて、厳しかったり導入までに検討時間を多く要したりと、サービスの導入の難易度は高いですが、導入に成功した場合は売上を大きく伸ばすことができます。したがって、PMFを完了した企業が成長していく上でエンタープライズが要望する機能を実装できているかは重要なポイントですが、同社はID管理関連やそのオンボーディングを中心に、こうしたエンタープライズ向け機能の実装を支援しています。

    現在、同社はVercel、Stripe、Scale、Airtableなど高成長企業を含む200以上の有料顧客がいるとしています。

    同社は2021年、Okta社に買収されたAuth0と比較されることも多いですが、主要な違いとしては、Auth0が認証に注力しているのに対して、同社は認証に限らない幅広なエンタープライズ向け機能の支援を行おうとしている点です。OktaはSEC提出書類(※2)の中で、Auth0を2021年5月に公正価値(現金除く)56.7億ドルで買収しており、同年のOktaの売上成長のうち、約1.4億ドルがAuth0との経営統合に起因することを明らかにしています。


    シリーズB第2位 Astro(資金調達額6,000万ドル)

    シリーズBで6,000万ドルを調達したAstroはインドネシアでオンデマンドデリバリーサービスを提供しています。インドネシアは世界第4位となる2.7億人の人口を抱えていますが、オンライングローサリーの普及率は1%を下回ると言われており、他国と比較すると遅れています。(※3)しかしながら、今後の成長が期待される中で、小売業者のアグリゲーターであるHappyFreshや生鮮食品ECであるSayurboxやTaniHubなど、多数の競合が存在する市場でもあります。Sayurboxは今年5月にシリーズCで1.2億ドル、HappyFreshは昨年7月にシリーズDで6,500万ドル、TaniHubは昨年5月にシリーズBで6,550万ドルの資金を調達しています。

    こうした環境の中、Astroは創業時より、ダークストア(ネット販売専用の物流センター)を活用して15分以内に食料品を配送するクイックコマースを標榜してきました。クイックコマースは、在庫や配送にコントロールを利かせる必要があることから、特に資本集約型のビジネスモデルとなる傾向にあり資金調達が重要ですが、2021年9月に創業した同社の本シリーズBラウンドではAccelやTiger Global、Sequoia Capital Indiaをはじめグローバルの著名投資家が参加して6,000万ドルの調達に至っています。

    欧米ではすでに15分以内の配送に対するニーズは高く、デカコーンのgopuff(評価額150億ドル)、ユニコーンのGorillas(評価額31億ドル)などが誕生しています。どのプレイヤーがインドネシア市場を抑えることになるのか要注目です。



    ラウンド別の主要案件は下記のとおりです。


    ※1
    https://www.prnewswire.com/news-releases/princeton-nuenergy-announces-strategic-partnership-with-wistron-greentech-and-etak-worldwide-on-a-sustainable-direct-recycling-solution-for-lithium-ion-battery-and-kickoff-pilot-project-301388230.html
    ※2
    https://www.sec.gov/ix?doc=/Archives/edgar/data/0001660134/000166013422000010/okta-20220131.htm
    ※3
    https://techcrunch.com/2022/05/29/astro-indonesia-grocery-delivery-60-million-funding/

      最新の特集記事

      最新の特集記事

      STARTUP NEWSLETTER

      スタートアップ資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ
      1週間分の資金調達情報を毎週お届けします

      ※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします

      ※配信はいつでも停止できます

      STARTUP NEWSLETTER

      投資家向けサービス

      スタートアップ向けサービス

      notelinkedInfacebooklinetwitter
      notelinkedInfacebooklinetwitter