3月28日週に資金調達が報道されたシード・シリーズA・シリーズBの企業を調達額順に紹介します。
シード第1位 Kooply(資金調達額 1,800万ドル)
シードラウンド(プレシード含む)で、最も大きく資金調達したのはモバイルゲームの開発プラットフォームKooplyです。ゲーム市場調査会社Newzooによると、2021年のスマートフォンおよびタブレット用ゲームの収益は932億ドルで、ゲーム機(504億ドル)とPC(367億ドル)の合計を上回りました。Kooplyはプロダクトローンチ前でありサービスの詳細を明らかにしていませんが、多くのモバイルゲームにおいて①ゲームの作り方、②利用者のニーズ、③ゲーム普及、いずれか一つ以上が上手くいっていないことを課題ととらえています。
シード第2位 BeamUP(資金調達額 1,500万ドル)
2番手はDXの遅れる建設業界にて、AIを用いた施設の設計・管理を展開するBeamUPです。企業向け不動産は1.1兆ドルのマーケットですが、従来設計・管理がマニュアルで行われており、建築コストが跳ね上がっているのみならず、サステイナビリティが求められる現在においてもエネルギーの無駄が多く存在し、エネルギー規範の順守率が低くなっています。たとえば、建築費の7.25~10.89%を占める再作業の7割は設計エラーによるものだそうです。その中でもBeamUPが占める2021年の都市計画・設計ソフトウェア市場は、29億1000万ドル規模と推定されており、2028年まで年率6.5%で成長すると見られています。既存のBuilding Information Modeling(Autodeskなど)が直接の競合となりますが、建設計画自動化のスタートアップ企業であるSwappなど、業界の違う分野に分析を適用している不動産テックや建設技術の企業もあります。現在Fortune 100社のうちの5社と試験運用や契約をしており、1,100以上のユーザーを有しているとのことです。
シリーズA第1位 Khazna(資金調達額 3,800万ドル)
シリーズAで調達額が大きかったのは、エジプトのKhaznaです。エジプトには3500万人の銀行口座を持たない人々が存在するとされていますが、KhaznaはEarned Wage Access(従業員の賃金へのリアルタイムでのアクセス)を起点に、中低所得者に銀行その他の金融サービスを提供する「金融スーパーアプリ」を目指しています。Earned Wage Accessは新興国を中心に盛んなサービスであり、月払いでは生活費に苦しむ従業員に早期の賃金アクセスを提供します。同じエジプトではNowpayなどがサービスを展開するほか、今年に入ってからも、インドネシアのGajiku(シード・$1.1m)、Wagely(プレシリーズA・$8.3M)やナイジェリアのEarnipay(シード・$4m)、南アフリカのFloatpays(シード・$5m)などが資金調達に成功しています。
シリーズA第2位 Wiz Freight(資金調達額 3,600万ドル)
2番目はインドのデジタル貨物輸送スタートアップWiz Freightです。Wiz Freightはテックを活用しながら海運・空運・陸運にまたがるend to endの物流サービスを展開するスタートアップです。200を超えるcarrier・vendorのネットワークを有し、Tatas、Adani group、Mahindra、Aditya Birla、Renew Power、Hero Motors、ITC、Maricoといった顧客を抱えているといいます。Mordor Intelligenceのレポートによるインドの貨物・物流市場は道路インフラの改善とE-commerceの拡大を背景に、2021年から2026年にかけて年平均成長率約4.37%で成長すると推定されています。
シリーズB第1位 Omnipresent(資金調達額 1.2億ドル)
シリーズBで調達額が大きかったのは、国境を超えた人材の雇用を可能にするためEOR(Employer of Record)サービスを提供するOmnipresentです。リモートワークの広がりや優秀な人材の不足、多様性の重視を背景に、グローバルな人材雇用のニーズは高まる一方で、グローバル人材の採用には現地の労働法への対応から給与税、福利厚生に至るまで、さまざまな課題がありますが、Omnipresentはクライアント企業に代わって国際的な人材をリモート雇用し、従業員の採用・退職や給与・福利厚生などの管理を代行します。同社は160か国でサービスを展開しており、2021年には売上高を25倍に伸ばしたとしています。今回、1.2億ドルの調達を行いましたが、戦略的投資家としてテンセントも参加しています。
シリーズB第2位 Yami(資金調達額 5,000万ドル)
2番目はアメリカでアジア系アメリカ人をメインターゲットにアジアの食品や美容製品、家電、本などを販売するYamiです。米国勢調査によるとアメリカには2000万人近くのアジア系アメリカ人が住んでおり、その消費市場は1.2兆ドルと言われています。その中で、4000以上のブランド・26万以上のSKUを展開するYamiは強く支持されており、10人に1人からNo.1オンラインショッピング先に選ばれていると言います。
ラウンド別の主要案件は下記のとおりです。