
(2022年6月20日週) 海外資金調達 Weekly <Unicorn編> 労務管理システムやスマホ決済端末など競合が多い企業に資金が集まる
この記事では、6月20日週に資金調達が報道されたユニコーン(企業評価額10億ドル以上の未公開企業)3社を評価額順に紹介します。
第1位 SumUp(企業評価額 85億ドル)
第一位は、スマートフォンによる決済端末機能を有するSumUp(企業評価額 85億ドル)です。同社のサービスは、Square(アメリカ)、Tiller (フランス)、Payleven(ドイツ)、Goodtill(イギリス)など類似サービスが多いため、各社は機能拡充を行うことで差別化を試みています。同社は、POS決済以外にも、ビジネスバンキング、オンライン決済などのサービスを拡充しており、ネオバンクの大手になるポテンシャルを秘めています(ネオバンクについては、デジタルバンクに関する業界レポートもご参照ください)。
SumUp
設立期:
2012年
本社:
イギリス
企業評価額:
85億ドル
今回調達額:
6.24億ドル(企業評価額の7%)
参加投資家:
Bain Capital Tech Opportunities, BlackRock, btov Partners, Centerbridge, Crestline, Fin Capital, Sentinel Dome Partners
約400万の中小企業が同社のスマートフォンによる決済端末機能を利用。
日本では、大手企業を中心に据置型決済端末が使われていますが、キャッシュレス決済の普及に伴い、リクルートの「Air PAY」、スマレジの「スマレジ PAYGATE」、ヘイの「STORES決済」などのスマホ決済端末を導入する中小企業が増えています。
ヘイ株式会社
ヘイ株式会社は、オンラインストア開設サービスの「STORES」、キャッシュレス決済の「STORESターミナル」をはじめとし、商売のデジタル化を支援する「STORES デジタルストアプラットフォーム」を展開する企業。コイニー社とストアーズ・ドット・ジェーピー社の経営統合により生まれた新会社。 個人や小さなチームによる 「たのしみ」 のための経済がこれからの社会をリードしていくと信じ、「Just for Fun」という合言葉のもと、活動をエンパワーメントするサービスを提供する。
代表者名 | 佐藤裕介 |
設立日 | 2012年3月23日 |
住所 | 東京都渋谷区東3丁目16番3号 |
同率第1位 Personio(企業評価額 85億ドル)
同率第一位は、HRクラウドシステムのPersonio(企業評価額 85億ドル)です。SumUp同様、競合がひしめく領域であり、中小企業に特化している会社だとWorkday(アメリカ)やServiceNow(アメリカ)が挙げられます。5月9日週の特集記事では、RipplingとGustoの資金調達を紹介しました。同社にとって追い風なのは、在宅勤務と出社の併用を行う企業が増えており、人事業務が一層複雑化していることです。同社は、他システムとの連携を強化することで、タスク管理、承認プロセス、電子署名などのワークフローの自動化に取り組んでいます。今回の企業評価額は一見すると大きいですが、CEOのHanno Renner氏は「昨年10月の資金調達以来、収益を2倍に伸ばしたが、評価額は30%しか上がっていない」と述べており(※1)、株式市場の調整の影響を受けたことを示唆しています。
Personio
設立期:
2015年
本社:
ドイツ
企業評価額:
85億ドル
今回調達額:
2億ドル(企業評価額の2%)
参加投資家:
Greenoaks, Capital Partners
中小企業向けの採用、給与計算、人材管理、育成、ワークフローの自動化のためのクラウドシステムを運営。6,000社の50万人の従業員を支援している。
日本では、以前挙げたSmart HRに加え、51億円の資金調達を行ったjinjerやDonutsなども類似として挙げられます。
株式会社SmartHR
株式会社SmartHRは、SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)形式で提供する人事労務ソフト『SmartHR』の企業。 『SmartHR』は、従業員の入退社や社会保険、雇用保険の手続きを効率化するソフトをクラウドで提供する。人事情報も一元管理でき、年末調整や給与明細の発行、退職・住所変更手続きなど、労務管理業務をWeb 上でできる。 人事労務の効率化に加え、経営層や人事、経理担当者の社内業務やコミュニケーションを円滑にするサービスも拡充している。子会社のSmartMeetingでは、会議の効率化ツールを提供。企業向け採用支援システムの子会社Looperも設立している。
代表者名 | 芹澤雅人 |
設立日 | 2013年1月23日 |
住所 | 東京都港区六本木3丁目2-1住友不動産六本木グランドタワー |
jinjer株式会社
jinjer株式会社は、バックオフィス向けクラウドサービス『ジンジャー』を提供している企業。 『ジンジャー』は、人事管理・勤怠管理・給与計算・経費精算・電子契約・Web会議などの機能を備え、バックオフィス業務の効率化を行う。 また同社では、給料日前に給与を受け取り可能にする福利厚生サービス『ジンジャー給与前払い』の提供も行う。 そのほか同社では、人事向けメディア『HR NOTE』、SaaS・クラウド比較サイト『Torteo』を運営する。
代表者名 | 桑内孝志, 加藤賢 |
設立日 | 2021年10月1日 |
住所 | 東京都新宿区西新宿6丁目11番3号WeWorkDタワー西新宿 |
株式会社Donuts
株式会社Donuts は、SaaS、ゲーム、メディア、医療の IT 分野の4領域においてサービス提供に取り組む企業。 バックオフィス業務を効率化する国内最大規模の SaaS『ジョブカン』を提供。 バックオフィス業務をクラウドで一元管理できる『ジョブカン』は、勤怠管理をはじめ、経費精算、ワークフロー、採用管理、労務管理、給与計算などのシリーズを展開している。 また、『ブラックスター -Theater Starless-』や、『艦つく -Warship Craft-』などのスマートフォン向け人気ゲームアプリも多数手がける。 そのほか、クリニック向けのクラウド型電子カルテ『CLIUS(クリアス)』の提供や、ライブ配信サービス『MixChannel(ミックスチャンネル)』も運営。
代表者名 | 西村啓成 |
設立日 | 2007年2月5日 |
住所 | 東京都渋谷区代々木2丁目2番1号 |
第3位 Magic Eden(企業評価額 16億ドル)
第三位は、NFTマーケットプレイスのMagic Eden(企業評価額 16億ドル)です。同社はLaunchpadというNFTマーケットプレイスを運営しており、Launchpadでは芸術作品を中心としたNFTの取引がなされています。同社の企業価値が高い理由は、SolanaのNFT取引市場の約97%を占めていることが大きいです。Solanaは仮想通貨の時価総額順で9位となっており、主要仮想通貨の仲間入りをしています。驚くべきことに、Solanaの価値は年初来で75%程度減少しているにも関わらず、SolanaのNFT取引における月間アクティブユーザーと取引量の増加が過去3か月間続いていることです。
Magic Eden
設立期:
2021年
本社:
アメリカ
企業評価額:
16億ドル
今回調達額:
1.3億ドル(企業評価額の8%)
参加投資家:
Electric Capital, Greylock Partners,Lightspeed Venture Partners, Paradigm, Sequoia Capital
SolanaのNFT取引市場を運営。