(2022年6月20日週) 海外資金調達 Weekly <Unicorn編> 労務管理システムやスマホ決済端末など競合が多い企業に資金が集まる

この記事では、5月16日週に報道された資金調達に伴い、ユニコーン(企業評価額10億ドル以上の企業)となった2社を企業評価額順に紹介します。この週のユニコーン企業が少なかったため、番外編として、企業評価額は不明なものの、調達金額が大きかった企業も1社取り上げます。
第一位は、小売店向けの決済システムを提供するSpotOn(企業評価額 36億ドル)です。同社の主な競合は時価総額484億ドルと巨大なBlock社ですが、同社は決済システムを軸に小売店の業務に関わるあらゆるITツールを提供して「ワンストップショップ」になることで差別化を試みています。Blockの決済総額は、直近の決算で前年比31%増加したのに対して、SpotOnのARR(年間経常収益)は前年比100%の伸びを記録したそうです(※1)。規模の違いはあるものの、BlockはSpotOnのような新興プレイヤーの急激な売上増を脅威と感じているはずです。また、レストラン向けにPOSシステムを提供するToastも類似企業です。
一方でSpotOnの評価額は、前回のシリーズEの資金調達からそれほど伸びませんでした。前回の増資と比べると5億ドル増で14%評価額が上昇しましたが、シリーズCからシリーズDで200%増、シリーズDからシリーズEで評価額が68%増加したことを踏まえると成長にブレーキがかかったように見えます。直近の株式相場の調整が影響した可能性があります。
国内で決済システムを提供する会社としては、三井住友カード株式会社の「stera」端末の導入を小売店に行うGMOフィナンシャルゲートなどがあります。
GMOフィナンシャルゲート株式会社は、創業以来19年間、一貫して対面決済事業を運営している企業。 多種多彩な決済端末を取り揃えており、モバイル型や据置型のものがある。クレジットや各種電子マネー、ポイントサービス機能にも対応しており、接続はLTE回線やLAN回線での接続が可能。各カード会社との煩雑な手続きも一括して対応することができる。 2020年の東京オリンピックに向けて、日本の決済シーンの変革を起こすべくチャレンジをしている。
第二位は、公共交通機関の効率的な運行をAIで支援するOptibus(企業評価額 13億ドル)です。コロナの拡大によって公共交通機関の利用は減少しているため、一見すると同社のビジネスモデルは逆風にさらされているように見えます。しかし、構造的なトレンドとしてメガシティ(1,000万人以上の人口が居住する都市)の数は増加しており、そのような都市では公共交通機関の普及が必要不可欠です。一方で既存の公共交通機関のITシステムは古いため、同社のようなツールへの移行が求められます。
IBMが買収したMobileyeもイスラエルに本社があり、同地域がAIによる交通システムの効率化に大きな一助を担っていることがうかがえます。MobileyeのIPO計画についてまとめた記事も参照ください。
決済インフラのXendit(資金調達額:3億ドル)が大型の資金調達を行いました。今回の資金調達に伴う企業価値額は不明なものの、前回のシリーズCの資金調達でユニコーンになったことが報じられたため、評価額が下がっていなければユニコーンである可能性が高いです。同社は「東南アジアのStripe(オンライン決済サービス)」と呼ばれており、地域に根ざした戦略を打ち出しています。例えば、米国ではクレジットカードが普及しているためクレジットカードに対応する決済システムがあれば充分な一方、東南アジアではクレジットカードの普及率が低いため、あらゆる決済に対応できるようなシステムを提供する必要があります。クレジットカード以外の決済手段も普及している日本と近いかもしれません。国内でオンライン決済処理を行う会社としては、GMOペイメントゲートウェイ、SBペイメントサービス、デジタルガレージなどがあります。
※1
https://techcrunch.com/2022/05/18/square-rival-spoton-lands-300m-at-a-3-6b-valuation-after-seeing-100-arr-growth-in-2021/
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