MOZU株式会社

建築資材調達のデジタル化を推進するスタートアップMOZU株式会社が、シリーズAエクステンションラウンドにおいて、エクイティおよびデットを組み合わせた形で総額3億円の資金調達を実施した。今回のラウンドでは三菱地所のCVC「BRICKS FUND TOKYO」が主要な出資者となり、日本政策金融公庫からの融資も組み合わせた。これまでの累計調達額は6.5億円に達した。
MOZUは2023年に設立され、建築・リフォーム業者向けデジタル資材調達プラットフォーム「MOZUオーダー」の開発と運営を軸に事業を展開している。このサービスは、エアコンや給湯器、ユニットバス、キッチンなど住宅設備資材の調達に伴う多段階の流通や複雑な見積もり・受発注業務を効率化するものだ。従来は複数の中間業者や紙ベースの伝票処理、電話・FAXを用いたやり取りが主流だったが、MOZUオーダーでは会員制サイトを通じて専門スタッフとLINEなどを利用したやり取りが可能となる。価格比較や発注、納期・履歴管理まで一元的に行える点が利用者から評価されている。2024年4月のサービス公開から約1年で、登録業者数は7000社を超えた。
代表取締役CEOは野口真平氏が務める。野口氏は大学在学中に学生向けSNSを開発して起業し、同大学主催のビジネスプランコンテストで優勝を果たした。卒業後はIT企業でエンジニアとしてシステム設計を担当し、2014年にイタンジに入社。執行役員を経て2018年に代表取締役CEOに就任。のちにGA technologiesのCOOを務めた後、現場課題に根ざしたプロダクト開発を志してMOZUを創業した。
建設業界は国内GDPの約5%を占める大規模産業である一方、業界内でのデジタルサービス普及率は依然として低い傾向にある。特に資材調達の現場では、多様なメーカーや商流、複雑な品番(SKU)管理、紙を用いた受発注書類、電話・FAXによる伝票処理といったアナログな業務が根強く残っている。加えて、原材料価格の上昇や人手不足、後継者問題といった構造的な課題も顕在化している。矢野経済研究所の推計によると、2023年の国内住宅リフォーム市場規模は約7.4兆円に達している。一方で、同業界では人手不足や業務効率化の必要性が高まっており、デジタル技術の導入が進みつつあるものの、その普及は依然として限定的である。こうした状況は、業界全体の成長ポテンシャルを引き出しきれていない要因の一つとされている。
MOZUは、業界ごと・現場ごとの商慣習への細やかな対応や、LINEなど既存のコミュニケーションツールとの連携、AIを活用した受発注業務の自動化を強みとしている。
今回調達した資金は「MOZUオーダー」の機能拡充やマーケティング、人材採用に充てる計画である。今後は現場業務の進捗・納期・履歴の一元管理、AIによる見積やプラン作成の効率化、複数メーカーや商品の横断的な比較提案といった機能強化を順次進める方針とされている。さらに、ユーザーの利用頻度やリピート率の高さを受け、顧客サポート体制の充実にも取り組む構えだ。