【開催レポート】The Zeroboard Day 2026|データとAIをサステナビリティ経営の力へ

【開催レポート】The Zeroboard Day 2026|データとAIをサステナビリティ経営の力へ

Written by
KEPPLE編集部
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株式会社ゼロボードの設立5周年を記念するカンファレンス「The Zeroboard Day 2026」が、2026年10月15日、東京・東銀座の時事通信ホールとオンラインで開催された。

主催のゼロボードは、温室効果ガス排出量の算定・可視化を起点に、ESG(環境・社会・ガバナンス)情報の開示支援やサプライヤー情報の管理へと事業領域を広げてきた企業だ。

当日のテーマは「データプラットフォームとAIが拓く、サステナビリティ経営の未来」。一橋大学の伊藤 邦雄氏、サステナビリティ分野で活動する牧 陽子氏が登壇した。ゼロボードからは、データ収集や分析を支援する新たなAI機能も発表された。

本稿では、基調講演と主要セッションを中心に、当日の様子をレポートする。

オープニング:データ収集に追われる現場を、活用へつなぐ

ゼロボード 代表取締役の渡慶次 道隆氏は、設立からの5年間を振り返り、顧客の困りごとや要望、サステナビリティに関するルールの変化に応じて、サービスを拡充してきたと説明した。

脱炭素への逆風が指摘される一方、企業が集めるべきデータや求められる正確性は増している。渡慶次氏は、大企業にとっては取り組むかどうかよりも、どう実現するかが課題になっているとの見方を示した。

現場ではデータの収集に追われ、その後の活用に十分な時間を割けないという課題がある。同社は、企業の内外にあるデータを経営判断に生かすプラットフォームを目指している。渡慶次氏は、AIの登場によって、その実現が現実味を帯びてきたと語った。

財務と非財務の接続:投資によって会社は何ができるようになったのか

基調講演「財務と非財務をどう企業価値に結び付けるか」には、一橋大学CFO教育研究センター長・商学博士の伊藤氏が登壇した。

伊藤氏が問題提起したのは、人的資本やDXへの投資と財務成果の間にある、価値創造の過程だ。投資額や各種指標の改善を示すだけでは、それが企業価値にどう結び付くかを十分に説明できないと指摘した。

その間に置くべき概念として挙げたのが、会社としてできることを意味する「ケイパビリティ」である。投資によって企業の能力がどう変わり、その能力が顧客価値や事業成果を生むのか。この流れを捉える重要性を説いた。

講演では、人的資本や研究開発、AIに投資しても海外売上高が伸びない製造会社を例に説明した。顧客の課題が営業部門に、技術が研究所に、データがDX部門にとどまっていれば、資本はそろっていても成果につながらない。伊藤氏は、資本の不足に見える問題の背景に、部門間で資本が滞っている可能性があると指摘した。

そこで必要になるのが、人や知識、データなどをつなぎ、循環させ、組み替える「組織フロー」だ。これは、各部門が持つ情報や技術を組織内で共有し、組み合わせることで、課題の解決につなげる考え方だ。例えば、海外顧客の課題を共通のデータベースに集め、AIで過去の事例や技術を検索し、営業・研究開発・データ担当が連携する。こうした仕組みを通じて、顧客の課題を発見し、解決策を提案する能力が生まれると説明した。

ただし、能力を高めれば必ず企業価値が上がるわけではない。その能力が自社の戦略に必要か、顧客に価値をもたらすか、差別化や利益につながるかまで問う必要がある。

伊藤氏は「非財務資本に投資した結果、会社として何ができるようになったのか」を問う重要性を強調した。投資家が知りたいのは戦略実現の確からしさであり、情報開示にも、投資によって獲得した能力と戦略のつながりを説明する視点が求められると述べた。

現場を動かすには、相手の言葉で意義を伝える

「現場が支えるサステナビリティ経営の本質」には、八千代エンジニヤリング株式会社 フェローの牧氏が登壇した。

牧氏は、以前の職場で店舗への太陽光パネル設置を進めた経験を紹介。環境面の意義を伝えるだけでは理解を得にくかったものの、財務や店舗開発など、各部門の業務上のメリットや投資対効果を説明することで、協力を得られるようになったと語った。

重視したのは、取り組みの意義を「相手の言語で語る」ことだ。その説明を支える材料がデータとなる。現状や施策の効果を見える化することで、各部門が取り組みを自分事として捉え、次の行動を考える共通の土台になると述べた。

ゼロボードはデータ収集・分析を支援するAI機能を発表

当日は、ゼロボードの今後のプロダクト戦略も発表された。登壇したのは、VP of Productの藤森 信義氏と、VP of AI & DataのTran Quang氏だ。

藤森氏は、社内・グループ企業のデータを集める「Zeroboard」と、サプライヤー情報を管理する「Dataseed」を軸に、企業内外のデータを集約する方針を説明した。Zeroboardでは、温室効果ガス排出量とESG情報を扱う機能の統合も進める。

続いてQuang氏は、データ収集を担うAIモジュール「Dr.Zero Foundry」と、収集したデータを任意の形式で表示・分析できるダッシュボード「Dr.Zero Canvas」を紹介。2027年1月に両者の提供を開始すると発表した。

同社がイベント後に公表した試算では、Dr.Zero Foundryの導入により、現場担当者の入力作業と本社担当者の確認作業にかかる時間を最大80%削減する見込みだという。講演では工場の月次業務を想定し、担当者が請求書などをメールで送ると、データの読み取りや検証を進める利用例が示された。異常値があれば担当者に理由を問い合わせ、未回答の場合は再度連絡するほか、必要に応じて本社担当者へ通知する設計だ。

数値だけでなく、現場から得た変動理由を業務知識として蓄積する構想も示された。例えば、電力消費量が増えた背景に新たな生産ラインの稼働があれば、その情報を残し、以後の分析に生かす。

Dr.Zero Canvasでは、利用企業が使うAIエージェントを通じてZeroboardのデータを呼び出し、グラフなどで表示・分析できる。現場から得た回答を根拠に、数値の増減理由も示す。今後は、シミュレーションなどにも機能を拡充する予定だ。 

これらのAI機能は、普段使うメールやチャット、AIアシスタントを通じて利用する「Zeroboard Headless」構想のもとで共通の基盤を利用する。Quang氏は、収集作業の自動化で生まれた時間を、現場と本社がデータを活用する時間へ振り向ける狙いを説明した。

データの収集から、経営判断への活用へ

今回のセッションでは、非財務情報を企業価値につなげる考え方や、現場の協力を引き出すための工夫、AIを活用したデータ収集・分析の効率化など、サステナビリティの取り組みを具体的な行動や価値創造につなげる方法が示された。

サステナビリティ経営において、データの収集から活用へとどう移行していくか。ゼロボードが2027年1月に提供開始を予定する新たなAI機能も、その取り組みの一つとなる。今後は、実際の業務でどこまで負担を軽減し、企業の意思決定を支援できるかが焦点となる。


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