GHG(温室効果ガス)排出量削減ソリューション「zeroboard」を提供する株式会社ゼロボードがシリーズAラウンドにて、第三者割当増資による総額24.4億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、ファーストクローズ、セカンドクローズ合わせて計18社。VCや事業会社パートナー、CVCからの調達を実施している。
今回の資金調達により、グローバル展開を目指す。
2200社が導入する排出量削減ソリューション
zeroboardは、企業活動全体のGHG排出量を算定・見える化するクラウドサービスだ。
対象は主にメーカーや商社で、GHG排出量の開示が求められるプライム市場上場企業の利用が中心。サプライチェーン排出量の算定、ダッシュボードによるCO2排出量の削減管理、必要な開示・報告形式に対応したアウトプットが可能だ。
2021年7月にベータ版、2022年1月にプロダクト版をリリース。特にGHG排出量が多い自動車、化学品を始めとする大手製造業、商社など排出量算定が複雑かつ困難な上場企業を中心に、現在およそ2200社の企業が導入している。
今回の資金調達に際して、代表取締役 渡慶次 道隆氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
事業者に降りかかる排出量の開示義務
―― 現在、脱炭素への取り組みにはどのような課題がありますか?
渡慶次氏:脱炭素問題については、2015年に発足したTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が、企業に対して気候変動関連リスクと機会の開示を推奨しました。すると、それに応じる企業が増え、日本でも2022年4月から、プライム市場の上場企業にTCFDに相当する開示が義務付けられました。
開示すべき情報の中でも、重要な項目として挙げられているのがGHG排出量です。GHGプロトコル※には、自社の直接排出・間接排出を計上するScope1・2と、サプライチェーン排出量と言われるScope3という範囲があります。Scope3は取引先の排出量が対象となるため、特に算定が困難です。
※GHGプロトコル:世界的に推奨されている、GHG(温室効果ガス)排出量の算定、報告の基準。Scope1から3までの範囲に区分けされている。
メーカーであればサプライヤーの、銀行であれば融資先のデータを集めることに苦労しています。多いところでは数百社以上からの収集が必要となりますが、データを要請される側はそもそもどのようにCO2排出量を算定すればいいかわかりません。これが当社の解決しようとしている課題です。
―― zeroboardを始めようと思ったきっかけを教えてください。
私は前職のA.L.I. Technologiesでソフトウェア事業を任されており、自社のソリューションとして作り始めたのがzeroboardです。
前々職の三井物産ICT事業本部で担当していた電力・エネルギーのデジタライゼーション、さらに投資銀行での経験に基づく金融の観点を生かし、A.L.I. Technologiesから独立したメンバー7名と一緒にゼロボードを立ち上げました。
ちょうどその頃は、当時の菅政権によるカーボンニュートラル宣言があり、世の中が大きく舵を切った時期です。A.L.I. Technologiesでこのサービスを発表した際に、非常に引き合いが強かったことや、A.L.I. Technologiesというハードテック企業の一部門として運営するよりも、SaaS企業として独立し、ビジネス戦略を組み立てる道を選ぶ方が成功の確率が高まると思い、MBOを決断しました。
サプライチェーン全体を見通すことのできる世界へ
―― 資金調達の背景や使途について教えてください。
当社はGHG排出量削減の領域で、データ連携を整備するクラウドサービスとして国内で先陣を切ってきました。欧米にも同様のサービス事業者はありますが、サプライチェーンが複雑な製造業、物流業などのGHG排出量の算定に関して、当社のプロダクトは世界をリードしていると思っています。
資金使途は、海外展開に向けたカスタマーサクセスと、エンジニアの採用です。
前者は、お客様のニーズを確認しながら、海外の算定ルールのリサーチを進めるポジション。主に製造業でのLCA※の算定や、企業で排出量開示の経験を持つ専門人材の獲得を進めます。後者については、次々に生まれる多様なニーズに対応するプロダクトを作れるエンジニアを求めています。
※LCA : ライフサイクルアセスメント。製品やサービスの流れを査定し、環境影響を評価する手法。
海外展開については、当社がサプライチェーン排出量に重きを置いていることから、製造業の拠点が多いタイ、インドネシア、ベトナム、マレーシア、台湾などがターゲットです。ほかに、シンガポール、香港などは金融アプローチによるパートナー獲得を進めています。
現在は全体で約100名の組織ですが、順調に優秀な人材を採用できれば、2023年末には国内外含めて200名程度になる想定です。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
脱炭素の領域は、欧州が有利になるようなルール変更が先行するため、日本企業の制度対応はやや後手に回ってしまいます。ただ、一度ルールが決まると、日本企業はきっちりとそれに従い、さらに改善するのが得意です。当社のプロダクトがそうした企業の武器となれば、と思っています。
当社は人類全体に重くのしかかる気候変動というチャレンジに対して、企業のサプライチェーン全体を見通すことのできる世界を作ります。ニーズを捉えたプロダクトを作り、それをサステナビリティの世界での武器としてクライアント企業に与えるのが、中期的な目標です。
サステナビリティ領域で求められる機能はどんどん広がっています。高い感度を常に持ち続け、新しい開示のフレームワークや、開示要請に応えられるソリューションを随時投入することで、ユーザー企業の企業価値向上に貢献していきたいと思います。
株式会社ゼロボード
株式会社ゼロボードは、CO2排出量を算出・可視化するクラウドサービス『zeroboard(ゼロボード)』を製造・販売している企業。 『zeroboard』は、CO2排出量を算出・可視化し、脱炭素化経営を支援する法人向けクラウドサービス。 同サービスでは、CO2排出量の削減管理やコスト対効果のシミュレーション、TCFD等の国際的な開示形式や国内の既存環境法令の報告形式に対応したレポートの出力を行うことができる。 株式会社ゼロボードは、株式会社A.L.I. Technologiesの「zeroboard事業」をマネジメント・バイアウトし、設立。
代表者名 | 渡慶次道隆 |
設立日 | 2021年8月24日 |
住所 | 東京都港区港南2丁目15番1号 |