不正経費を検出、「セキュリティ×AI」で企業のリスク管理を支えるChillStack
経費不正検知サービス「Stena Expense」を運営するChillStackがシリーズAラウンドにて、第三者割当増資及び融資による資金調達を実施したことを明らかにした。累計の調達額は約3.5億円となった。
今回のラウンドでの引受先は、グローバル・ブレイン、HERO Impact Capital、SMBCベンチャーキャピタル、DEEPCORE、コロプラネクストの5社。
今回の資金調達により、新機能開発と情報システム向けのプロダクト開発を目指す。
「セキュリティ×AI」軸に経費の不正利用を阻止
Stena Expenseは経費の不正や不備をAIで検査するサービス。経費精算に関する各種データをもとに異常な経費利用を洗い出す。
二重申請や水増し申請などの検出に加え、特定個人との多頻度利用など、異常な経費利用も検出可能だ。検知した不正経費は一覧で確認できる。申請を不正や異常と判断した根拠も可視化するため、差戻し対応や経費の見直しなど、経理担当者の負担軽減と企業ガバナンスの強化を両面で支援する。
ChillStackの設立は2018年。現在主力とするStena Expenseのほかにもオンラインゲーム向け不正検知サービス「Stena Game」など「セキュリティ×AI」を軸に事業展開してきた。Stena Expenseは2021年にリリース。この7月には、請求書払いデータから不正や異常を検知する新機能「Stena Invoice」のクローズドβ版の提供を開始した。
今回の資金調達に際して、代表取締役の伊東 道明氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
空出張に重複申請、経費申請のチェックで疲弊する財務経理
―― 創業のきっかけを教えてください。
伊東氏:私のバックグラウンドは研究者です。AI × セキュリティの技術領域を専門に研究する中で、さまざまな社会課題を高度な技術で解決したいと思ったのが創業のきっかけです。
大学を出て就職する道もありました。ただ、自分が関心を持てる研究を今後も続けたいという想いが強かった。これまで研究してきた技術で社会課題を解決しようと、最終的に研究室の仲間4人で起業することを決意しました。
―― セキュリティ×AIを軸に事業展開する中、直近は経費領域のプロダクトに注力しています。
Stena Expenseの開発を始めたのはちょうどコロナ禍に入るタイミングです。大手企業から「異常検知分野は得意ですよね」と声掛けがあって。経費不正利用のチェックに人手がかかりすぎている、チェックがし切れていないとのことでした。それから共にPOCを実施し、1年ほど試行錯誤を重ねて2021年にサービスとしてリリースしました。
―― 経費の不正利用に関して、企業はどのような課題を抱えているのでしょうか。
経費の不正はさまざまです。たとえば、誤って同じ領収書で重複申請されているケースです。また、出張期間を水増しして日当を増やす、出張に行っていないにもかかわらず行ったことにする空出張なども大きな問題となっています。
経理はこうした不正を防ぐために、申請ごとに勤怠や出張、フライトのデータと照らし合わせているのです。支払いは現金なのかカードなのか、もしくはアプリ上で支払ったのかなど、さまざまな情報を確認しなければいけません。そのほとんどは人手で確認していて、承認フローも多岐にわたります。それでは細かい点まで確認できずにとりあえず申請を承認してしまう、といった状況に陥りかねません。
電子帳簿保存法の改正でワークフローも大きく変わり、確認作業の手間も増えました。経費の申請や確認がデジタル化された事で生じる不正や不備もあるようです。
財務経理から情シスへ 企業のリスク管理を支援
―― 資金使途について教えてください。
主にサービス開発や人材採用に充当します。7月には、請求書払いデータの不正や異常を検知する機能もベータ版として提供開始しました。この「Stena Invoice」に加え、AIを活用した分析機能の開発を強化します。今後はエンジニアをメインとした人員強化を進め、少数精鋭で徐々に組織拡大していく予定です。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
Stena Expenseを伸ばすのはもちろんですが、サイバーセキュリティ領域の新プロダクト開発も計画しています。たとえば情報システム部門がセキュリティ対応していても、セキュリティの専門家ではないことも非常に多く、課題が山積みです。当社のセキュリティ×AI技術を横展開していくことで、現在注力する「お金」からさらにリスク管理の幅を広げていきます。
財務経理を含め、リスク管理は非常にDXが進みづらい領域です。今は民間中心ですが、日本もDX文脈で取り組みだしている。民間からさらに広げれば、官公庁や国防という観点でもサイバーセキュリティは非常に重要な分野になっていきます。今後の取り組みに少しでもお力添えできるよう、課題解決に取り組んでいきたいと思います。