AIアイドルの開発とAIアイドルユニット専門事務所「Paradigm Entertainment」運営をするParadigm AI株式会社がプレシードラウンドにて、Skyland Venturesを引受先としたJ-KISS型新株予約権による資金調達を実施したことを明らかにした。
今回の資金調達により、AIアイドルのさらなるコンテンツプロデュースや技術開発を強化する。
AIアイドルを用いた新たなエンタメの世界へ
同社は、生成AIを用いてAIアイドルの制作とプロデュースを行う。バーチャルな存在でありながら、個々の性格や背景、個性を持つ人間らしい魅力を持つアイドルだ。
資金調達の実施と併せ、AIアイドルの専門事務所であるParadigm Entertainmentの設立を発表。複数のアイドルユニットを同時に運営するAIアイドル事務所として、音楽活動に加え、インフルエンサーとしての育成にも力を入れる。
2023年10月には、同社の第1弾所属ユニット「aideal」のメンバーオーディションを実施した。AIアイドルでありながらも、メンバーがオーディションを通過するよう応援するため、ファンが特定の推しメンバーに複数回投票する行動がみられた。
AIアイドルなどのバーチャルヒューマンは、近年企業のPR活動への起用も注目されている。広告モデルによるスキャンダルなどのリスクがなく、企業を代表してメッセージを届けやすいためだ。
今後はリアルやメタバース空間を活用したライブなども積極的に行い、バーチャルな存在ながらも新しい形で人々を魅了するエンタメとして、AIアイドルが社会に提供する価値を高めることを目指す。その取り組みの一部として、11月以降には男性アイドルユニットの発表や、第1弾所属ユニット「aideal」のミュージックビデオ配信を予定している。
今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 吉田 泰陽氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
AIアイドルの魅力と可能性
―― バーチャルヒューマン市場の現状について教えてください。
吉田氏:人間のようなリアルな姿で動く3DCGであるバーチャルヒューマンは、すでに韓国やベトナムでは、音楽活動やタレント活動の分野で一般化してきており、ミリオンヒットのMVを出すなどの盛り上がりを見せています。
これまでもAITuberなどの取り組みは進んでいましたが、ChapGPTの一般への普及やAIによる対話能力の向上が影響し、AIとバーチャルヒューマンを組み合わせたエンタメ領域への注目は2023年ごろから特に高まっており、今後も市場は拡大していく見込みが高い状況です。
AIのみを利用し、完全に自律して動くバーチャルヒューマンは、まだ一般には普及していません。そのためどの程度の割合でAIを活用するかは、運営主体により異なります。また、完全にAIを用いたバーチャルヒューマンでは、人間味がなさすぎて親近感がわきにくいこともあります。AIアイドルの普及フェーズでは、声は人間が吹き込む、人間が踊る映像にキャラクターの顔を合成するなど、人間が一定の役割を果たすケースが多くなっています。
―― AIアイドルにはどのような特徴がありますか?
AIアイドルの最大の特徴は、安価で高品質なIPを短期間で生成できる点です。スピード感をもって事務所として展開することができ、言語や時間、場所の制約なく世界中にコンテンツを発信することができます。
加えて、企業が著名人をPRに起用する場合に比べてスキャンダルなどのリスクが低く、理想的な広告モデルをピンポイントで提供できるということも魅力のひとつです。
熱狂的なファンを獲得するためには、各アイドルの背景やストーリーを綿密に構築し、共感できるように伝える必要があります。SNSや動画を通じてストーリーを展開することで、アイドルの応援やファン同士の連帯を促すようなコンテンツ制作が重要です。
―― 創業のきっかけを教えてください。
小中学校時代、海外に住んでいた経験があり、日本の文化を外から眺める機会が多くありました。日々触れるコンテンツとしては、アメリカのヒップホップや韓国のK-POPの存在感が大きく、日本独自のエンタメの存在感が薄いことに疑問を感じていました。
日本のエンタメには他に負けない魅力があるはずです。既存のコンテンツを尊重しながら、最新のテクノロジーを取り入れて新しいエンタメを創り出すことで、日本の魅力を広めたいと考えたことが事業着想のきっかけの一つです。
また、自分自身がプログラマーとして、テック系のイベントを企画することもあり、新しいものを創り出す楽しさを実感していたことに加え、元々アイドルへの関心も強く持っていました。
こうしたバックグラウンドから起業の選択肢は常にあり、Skyland Venturesのインキュベーションプログラムに参加して、さまざまなプロダクトを作る中で現代のトレンドと調和するアイデアを追求し、AIアイドル事業を軸としてParadigm AIを設立しました。
バーチャルとリアルを融合させた新しいエンタメ
―― 資金調達の背景や使途について教えてください。
韓国やベトナムでは、バーチャルヒューマン市場が盛り上がりを見せており、日本でもAIアイドルがPRモデルに起用され始めています。従来のPRと比較して効果を見せる成功事例が増えてきているこのタイミングで、事業をさらに拡大していくために資金調達を行いました。
調達資金はAIアイドルの制作や技術の研究開発、楽曲制作や海外展開に向けたコンテンツプロデュースに充当する予定です。現在では、まだエンタメとして満足ができるレベルの歌唱をAIアイドルにさせるまでには至っていません。技術の改良や開発を通じて、人間と変わらず自然に話したり、歌唱したりできるよう取り組みます。
―― 今後の展望を教えてください。
今後はさらなるユニットの発表に加え、12月ごろにはミュージックビデオの配信などを予定しており、音楽活動に力を入れて取り組みます。また、AIアイドルというコンテンツのブランディングに注力し、メディアへの露出や著名な作曲家を起用するなど、さまざまな方面からAIアイドルの信頼度や社会的価値を高めたいと考えています。
また、バーチャルとリアルを融合させたこれまでにないライブの世界を築き、革新的なエンタメ体験の提供を目指しています。そのために、AIアイドルの企画から制作まで自律して行うAIを実現することで、スピード感を保ちながら人間にはない発想力を取り入れていくことも一つの目標です。
AIアイドルにも、実際のアイドルと同じように熱狂的なファンを獲得する力があることは、第1弾所属ユニットのオーディションで検証できています。2024年春ごろの次回調達に向けて投資家や事業会社とも会話しながら、IPとしての本格的な展開に取り組んでいきます。
Paradigm AI株式会社
Paradigm AI株式会社は、AI(人工知能)アイドルユニット専門事務所『Paradigm Entertainment』の運営を行う企業。 同社は、生成AIを用いたバーチャルヒューマンアイドルの制作および、そのアイドルユニット専門事務所『Paradigm Entertainment』の運営を行う。AIアイドルは、AIの技術を活かして制作された実際には存在しないアイドル。
代表者名 | 斎藤大誠, 小山実花, 吉田泰陽 |
設立日 | 2023年8月9日 |
住所 | 東京都新宿区高田馬場3丁目1番5号サンパティオ高田馬場309号室 |