株式会社FLUX

AIトランスフォーメーションを推進する株式会社FLUXが、シリーズBエクステンションラウンドで44億円の資金調達(第三者割当増資、融資)を実施した。これによりシリーズB全体の調達額は88億円、累計調達額は100億円に達した。
引受先にはDNX Ventures、Archetype Ventures、Salesforce Venturesなどの既存投資家に加え、りそなキャピタルやみらい創造インベストメンツなど複数の新規投資家が参加した。また、りそな銀行、東京スター銀行、静岡銀行、日本政策金融公庫などの金融機関から融資を受けた。
FLUXは2018年設立のスタートアップで、AI技術の研究開発とそのビジネス活用に特化した事業を展開している。主なサービスには、エンタープライズ企業向けにAI活用による事業変革を支援する「FLUX Insight」、AIとコンサルタントの知見を組み合わせた人材紹介サービス「FLUX Agent」、AIを活用したデジタルマーケティング支援「FLUX AutoStream」などがある。こうした独自プロダクトを軸に、複数領域でサービスを展開している。
特徴的なのは、FLUXがAIを単なる業務効率化の手段としてではなく、事業基盤の変革に活用している点である。たとえば、AIワークフローの自動化を実現する「FLUX Workflow」、求人と求職者のマッチング精度を高める「FLUX Match」、コンサルタントの業務効率を向上させる「FLUX Guide」など、独自プロダクトを組み合わせて顧客企業の課題解決を支援している。
代表取締役CEOの永井元治氏は、学生時代にHRスタートアップを創業。米系戦略コンサルのベイン・アンド・カンパニーにて、大手通信キャリアの戦略立案・投資ファンドのデューデリジェンス・商社のM&A 案件などに従事。その後2018年5月に株式会社FLUXを創業した。
AI関連事業の成長背景には、国内企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)からAIトランスフォーメーション(AX)への潮流がある。日本国内のAI活用企業は増加傾向にあるものの、経営戦略や現場オペレーションの本格的な変革に至っている企業は限定的である。コンサルティング大手やシステムインテグレータがDX、AX支援に参入するなか、FLUXのようにAI活用とプロダクト開発、事業デザインまでを一気通貫で担うスタートアップへの市場評価が高まりつつある。
今回の資金調達により、FLUXはAI人材の採用強化や既存プロダクトの機能拡充、広告宣伝活動による認知拡大を進める計画だ。採用面では「FLUX Insight」や「FLUX Agent」部門での人員増強を図る。プロダクト開発では、既存のAIプロダクトの高度化や新機能追加を進め、サービス競争力の強化を目指す。また、事業成長に伴いオフィス基盤の整備も進めており、2025年には東京ミッドタウンへの本社移転を完了。オフィス面積は従来の約5倍となった。
直近の業績について、FLUXは「FLUX Insight」や「FLUX Agent」の新規顧客獲得が売上成長を牽引し、2025年3月期の売上は前年同月比で100%増加したという。背景には日本の大企業におけるAI人材やAI活用スキルの内製化需要の高まりがある。
今後、FLUXはAI活用による事業変革を推進する企業の経営パートナーとして、AIトランスフォーメーション支援をさらに強化するとしている。スタートアップによる大型資金調達や、AX領域における事業成長性、企業ニーズの変化などを背景に、人材・プロダクト・組織体制の強化に取り組む構えだ。