「販売代理店ファースト」の営業AIが、メーカーに価値を生む仕組み──ハイウェイがシリーズA調達

「販売代理店ファースト」の営業AIが、メーカーに価値を生む仕組み──ハイウェイがシリーズA調達

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代理店や販売店を介した営業活動をAIで支援する株式会社ハイウェイは、シリーズAラウンドで約3億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は既存投資家のDNX Ventures。調達資金は、営業活動の一部タスクを担うAIエージェントの開発と、法人向けの導入・カスタマーサクセス体制の強化に充てるとしている。

同社は、自社製品を代理店・販売店経由で販売するメーカー向けに、代理店営業を支援するAIソリューション「Hiway」を提供する。実際にツールを使うのは、メーカーの担当者だけでなく、実際に顧客と向き合う代理店の営業担当者だ。

代理店の担当者は、メーカーに対して日常的に見積もりを依頼したり、製品の仕様についてメールで問い合わせたりする。そういった連絡に対し、Hiwayは自動で回答や見積の作成を支援する。複雑な案件や特価判断、条件交渉、例外対応については、人の担当者がレビューし承認・修正する設計をとる。そのやり取りから自然に集まったデータを、メーカー側のCRMに収録する仕組みだ。

Hiwayのメーカー側のUI。販売代理店からメールで受信した問い合わせ内容に対し、回答作成をサポートする。(画像:同社提供)
Hiwayのメーカー側のUI。販売代理店からメールで受信した問い合わせ内容に対し、回答作成をサポートする。(画像:同社提供)

Hiwayは、PRMのようにメーカーと販売代理店の連携を支援するものではある。ただし、代表取締役の久保文誉氏は「私たちは(Hiwayについて)PRMという言葉を使わないようにしている」と述べる。

「PRMというのはメーカー起点の言葉です。『いかにパートナーと関係を築くか』『効率的に案件を管理するか』というメーカー側の発想に立っている。メーカーが自社製品のためのポータルサイトを作り、販売代理店側に案件を登録してもらう設計が多い。ただ、代理店は一社の製品だけを扱っているわけではありません。各メーカーの個別ポータルや案件登録ツールは、代理店にとってあまり意味を感じにくい。 彼らが求めているのは、1時間でも早く見積もりの回答を得ることです」(同氏)。

従来のPRMは、代理店が商談案件を登録し、商談の進捗などを逐次アップデートしていくものだった。久保氏によると、こういったPRMは専らメーカー側の案件管理を行うためのツールであったのに対し、代理店側が情報を入力しなければいけない煩雑さから、データが溜まりにくいという課題があったという。

Hiwayの特徴は、代理店側に案件情報の登録を求めない点にある。代理店はいつも通りメールや電話でメーカーに対し見積依頼や問い合わせを送る。Hiwayがそれを受け取り、製品構成や不足情報を整理し、メーカー側がすぐに返信できるようサポートする。同時に、やり取りの過程で得られた「どの顧客に、どの製品を、いくらで、いつ提案しようとしているのか」といった案件情報を、自動でメーカー側のCRMに記録・連携する。現場の代理店担当者にとっての使いやすさを優先することで、結果としてメーカーがこれまで把握しづらかった営業データが蓄積される。メーカー起点の管理ツールではなく、代理店の営業体験を起点に設計されていることが、Hiwayの大きな特徴だ。

久保氏は、ソフトバンクで法人営業に従事した後、国内のセールステック企業であるマツリカに創業メンバーとして参画し、執行役員としてSaaSプロダクトの立ち上げを担った経歴を持つ。代理店側とメーカー側の双方を経験するなかで、社外をまたいだ営業連携の非効率さと、CRMが営業担当者の支援ツールになりきれず、報告のためのデータ入力に終始している現状に問題意識を抱いたことが、ハイウェイ創業の背景にあるという。

現場の課題をつかむまでには、シード期に長い試行錯誤があった。間接販売には、メーカー側の決裁者と担当者、販売店側の管理者と担当者など登場人物が多く、誰に価値を届けるべきかという軸が定まりにくい。久保氏は「利用率や利用頻度といった、薄いカスタマーサクセスでは語れない、本当の価値を見つけづらい業界だった」と振り返る。同社は一時、メーカーにとって使いやすいPRMとしての正解を目指した時期もあったが、その方向を突き詰めるほど、本来支援したいはずの代理店が見えなくなっていったという。「メーカーが求めるものに向き合うほど、代理店が本当にこれを使うのか、意味があるのか、というピュアな問いがどんどん遠くなっていった」(久保氏)

顧客はメーカーである一方で、ハイウェイはあえて代理店の現場にも足を運び、担当者から直接話を聞き続けた。ポータルを用意してもログインが進まず、成果が出ない様子を間近で見ながら、「代理店の営業体験を最優先にしなければ答えは出ない」という見立てに至ったという。現在も、顧客企業の業務の整理から一緒に入り込む、いわゆるフォワード・デプロイド・エンジニア(FDE)的な進め方をエンタープライズ向けに取り、そこで得た知見をプロダクトに反映しているとしている。

販売代理店向けAIチャットの画面。担当者は、AIに質問することで様々な情報を取得することが可能。(画像:同社提供)
販売代理店向けAIチャットの画面。担当者は、AIに質問することで様々な情報を取得することが可能。(画像:同社提供)

今回の調達資金について、久保氏は「エンタープライズの顧客が増えるなかで、より自律的に回答・支援できるAIを作り込むことと、それを届けるカスタマーサクセスの体制を厚くすることが主目的だ」と語る。見積業務などは現時点では人の承認を挟む段階にあり、今後はAIの品質とワークフローを高め、人の業務をより代替できる形を目指すという。あわせて、プロダクト開発・AI機能開発・BizDev・カスタマーサクセスの各領域で採用を強化するとしている。

代理店・パートナー経由の販売チャネルは、業界横断で大きな取扱高を持つ一方、PRM/代理店管理ソフトウェア市場としてはまだ黎明期にある。隣接するCRMやSFAの市場はすでに一定の規模を持ち、デロイト トーマツ ミック経済研究所によると、2023年度の国内クラウド型CRM市場は5392億円、2024年度は6109億円に拡大し、2028年度には1兆円を超えると見込まれている。ハイウェイは、代理店・販売店を介した営業活動という、従来のCRMやSFAでは十分に捉えきれなかった領域に焦点を当てる。

久保氏は事業の現在地について「自分たちもこれが正解だとはまだ思えていない」と率直に話す。複数のメーカーと代理店、さらに多段の商流が絡む構造のなかで、「誰に価値を提供するのか」という問いに、同社は向き合い続けてきた。

今後は、現在主な訴求先となっているITやOA機器に加え、サプライチェーンが長い製造業などへの展開も視野に入れる。日本には、優れた製品を持ちながら、販売店や卸、取引先を介して複雑な商流を構築している企業が多い。そうした企業に対し、外部の営業連携や問い合わせ対応を支援するAIとして、Hiwayの活用を広げていく考えだ。

また、グローバル展開も視野に入れる。日本で作られた製品を海外で販売する場合も、海外製品を日本に展開する場合も、代理店や販売店を介した商流は発生する。久保氏は、Hiwayを「流通のOS」のような存在にしていくことで、こうした領域にも貢献できると見る。

記録にとどまっていたCRMを、営業の実務を前に進める基盤へと作り替えられるか。同社が示す次の一手が問われる。

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