AIで保険代理店の属人性を変える──FwCがプレシード資金調達、改正保険業法を見据え提案プロセスの透明化へ

AIで保険代理店の属人性を変える──FwCがプレシード資金調達、改正保険業法を見据え提案プロセスの透明化へ

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AIを活用した生命保険代理店を運営するFwC株式会社は、TRUST SMITH & CAPITALおよびインキュベイトファンドを引受先とした第三者割当増資により、プレシードラウンドでの資金調達を実施したと明らかにした。調達した資金は、社内AIシステムの開発強化と採用・人件費に充当する予定だ。

FwCは2025年に設立された生命保険代理店だ。個人・法人オーナー向けに、生命保険を活用した資産形成・相続・事業承継支援を提供しながら、営業活動から社内業務までAIを活用する体制づくりを進めている。顧客へのヒアリング内容や提案根拠をAIツールでデータ化・記録し、担当者が変わっても一定水準のサービスを提供できる仕組みの構築を目指す。

同社が主な顧客として想定するのは、個人に加え、富裕層・資産家、法人オーナー、事業承継を検討する経営者などだ。税理士や弁護士といった士業との連携により顧客基盤を形成している。

ビジネスモデル
(図:同社提供)

代表取締役の藏田尚哉氏は、早稲田大学卒業後、野村證券に入社。リテール・ホールセールス部門で超富裕層向けの相続・事業承継支援に携わった。その後、プルデンシャル生命保険で相続・事業承継を中心とした生命保険提案業務に従事。2018年以降は保険代理店に勤務し、Total Life Designの創業メンバーとして支店長を務めた後、FwCを創業した。

藏田氏が起業に踏み切った背景には、保険業界に対する問題意識がある。

「『保険業界の慣習をテクノロジーで変えられる』と感じつつ、誰もやらないなと思いながら2、3年を過ごしてきた。だったら自分がやらなければと思った」同氏はそう振り返る。

国内の保険代理店市場ではDXが重要なテーマとなってきた一方で、営業現場では担当者の経験や人脈に依存した提案が依然として主流だ。顧客に対する提案根拠が十分に可視化されないまま契約に至るケースもあり、近年は業界内の不祥事も課題として指摘されている。

こうした状況を受け、2025年6月6日に保険業法の改正法が公布され、2026年6月1日に施行された。改正保険業法は「顧客本位の業務運営の徹底」と「健全な競争環境の実現」を柱としており、大規模乗合代理店に対して法令等遵守責任者・統括責任者の設置や苦情対応の強化を求めるほか、比較推奨販売に関する義務も盛り込まれている。

法改正を見据え、提案プロセスの透明化へ 

今回の資金調達は、こうした制度変更を見据えたタイミングでもある。同社は調達資金の約半分を社内AIシステムの開発強化に、残りを営業人材の採用・人件費に充てる計画だ。商談内容の記録・管理、顧客意向に沿った比較推奨、提案プロセスの透明化など、保険代理店に求められる業務の高度化にAIを活用していく。

藏田氏は、保険代理店における提案の属人性について次のように話す。

「お客様との商談内容をAIツールを用いて社内できちんと記録・管理することが重要です。改正保険業法の施行によって、顧客意向にのっとった比較・販売のデータ化が求められるようになる。テクノロジーを使わなければ、適切な比較推奨はできない時代に変わりつつあると思います」

AIの活用は、コンプライアンス対応だけでなく、営業生産性の向上にもつながるという。

「従来は2〜3時間かかっていた顧客の保険情報の取りまとめ作業が、AIを使うと15分ほどに短縮できます。法人顧客に対しても、事前調査をテクノロジーでレポート化し、商談前に提供することで、信頼関係の構築を効率化しています」

同社は年内に営業20名、翌年に50名、さらにその翌年には100名体制を目指す。中長期では国内での基盤確立を経て、5〜7年後の海外展開も視野に入れる。

AIネイティブな保険代理店モデルを世界へ 

藏田氏が世界市場を見据える理由は大きく二つある。

一つは、AIネイティブな組織として既存の大手代理店とは異なる成長曲線を描ける可能性だ。日本国内にも大手保険代理店は存在するが、世界最大手のプレイヤーと比べると、事業規模には大きな開きがある。

「日本から世界を目指す人間がいてもいいんじゃないか、いなければいけないんじゃないかと思ってチャレンジしている」同氏はそう語る。

もう一つは、日本の保険会社による海外展開の加速だ。同氏によると、国内の人口減少等を背景として、日本生命や第一生命などが海外保険会社の買収を進め、日本発の保険商品やサービスを海外市場に売り出していく動きが強まっているという。

「世界最大手の保険代理店グループは創業150年以上です。そのリードを30〜40年で追い抜ける可能性があるのは、AIネイティブな小さな組織だからこそだと考えています。日本の保険会社が世界に打って出てくれると、日本の保険を扱いやすい土壌が育つ。(海外で日本の商品を扱い)、テクノロジーと日本式の細やかなサービスで勝負する構想があります」

保険代理店業界では、法改正を契機に、顧客本位の提案や比較推奨の透明性がこれまで以上に問われることになる。FwCは、AIを単なる業務効率化の手段ではなく、営業品質や提案プロセスを標準化するための基盤として位置づける。

属人的な営業が中心だった保険代理店の現場を、テクノロジーによってどこまで変えられるのか。今回の資金調達は、AIネイティブな保険代理店モデルを構築するための第一歩となるだろう。

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