株式会社SYSLEA

株式会社SYSLEAは、ジャフコグループをリードとする第三者割当増資(4.1億円)と日本政策金融公庫からの融資(2億円)を合わせ、シードラウンドで総額6.1億円を調達。約170社が先行導入中のAIネイティブCRM「Frictio(フリクシオ)」の正式提供も同時に開始した。
同社が掲げるのは「未来の働き方を創る」というビジョン。代表取締役CEOの大橋勇輔氏は、その核心を「システムに手入力をしないことが正義になり、行動し続けることが最も価値ある世界」と語る。
主力プロダクトのAI-SaaS「Frictio」は、営業活動で得た一次情報を自動で記録・構造化し、ネクストアクションの実行までを自動化するCRMだ。営業担当者が顧客との対話に集中し、記録・報告・フォローアップといった業務はAIエージェントが自律的に担う、新しい働き方を提案する。

Frictioはまず、カレンダーからZoomやGoogle Meetなどのオンライン会議を自動検出し、会議が始まるとともに録音・文字起こしを開始する。対面での録音にも対応するほか、電話・メールのデータも自動取得する。
次に、取得した一次データをリアルタイムに構造化する。この際、顧客の課題や予算、決裁構造、競合サービスの検討状況など、営業上重要なコンテキストを自動抽出し、人・企業・商談等の過去データに紐づけ整理する。
ミーティング終了直後に、それらのポイントを押さえた要約を生成し、アクションアイテムを提示するだけでなく自律的に業務を遂行する。商談後約1分でフォローアップメールの下書きが生成され、担当者はレビューして送信するだけでよい。既存CRMへの情報の同期も可能だ。
さらに、競合サービスの検討状況や顧客側の決裁者の関与度低下など、見逃せない変化を自動検知し、社内Slackなどに即時通知する機能も備える。通知を受けた営業マネージャーはシステム上で議事録を直接確認でき、迅速な意思決定・指示出しが可能になる。大橋氏は「私自身、セールスイネーブルメントチームで営業の現場を見てきた経験があるが、現場の営業は商談後のCRMへの情報入力や上司への報告など、お客様への価値提供ではない部分でコミュニケーションコストをかけていた。Frictioを使えば、現場の営業は顧客との会話に専念できる。営業マネージャーはAIが整理した一次情報をもとに、戦略立案と軌道修正に集中できる」と説明する。
先行導入企業ではすでに、Frictio導入により1人当たり月800分の業務時間削減や、月100時間以上の工数削減といった効果が報告されているという。大橋氏は「工数削減も重要だが、最も大きな変化はデータが蓄積されることで意思決定や営業戦略の質そのものが変わることだ。属人的な情報伝達の過程で生じる情報の欠損やバイアスを排除し、組織全体が真の一次情報に基づいて行動できる環境をつくることが、Frictioが解決を目指す課題の本質」と、大橋氏は語る。
従来のCRMが抱える構造的な課題は、データの入力コストにある。2026年にSalesforceが公表したデータでは、営業担当者が顧客と向き合う時間は全体のわずか40%程に過ぎず、残りはデータ入力や資料作成などの事務作業に費やされている。IDCとBoxの調査では、企業内データの約90%は非構造化データとしてシステムに記録されないまま散逸しており、AI活用に足る水準で構造化・蓄積されている営業データはわずかだとされている。「情報を入力することを前提としたCRMでは、情報蓄積そのものが課題になり、営業データを経営に活かすことが難しい」と、大橋氏は「人間が入力しなくて良い」CRMの価値を強調する。
大橋氏は10年以上にわたりソフトウェア業界に携わってきた。第二新卒で入社したITベンチャーでSaaS事業の立ち上げを経験した後、外資系ソフトウェア企業を経てユーザベースに参画。同社ではBtoBマーケティングソリューション「FORCAS」の立ち上げから関わり、セールスチームリーダーおよびセールスイネーブルメントを担った。「2022年11月にChatGPTが公開された時、ソフトウェアに知性が宿ることで人間の働き方が根本から変わる予感がした」と語り、翌年に退職してSYSLEAを創業した。共同創業者でCTOを務める松本宜之氏はNewsPicksで法人向けSaaS開発をゼロから手がけた経験を持つ。大橋氏がビジネス、松本氏がテクノロジーをそれぞれ担う体制で創業している。
セールステック・CRM市場は国内外で拡大が続いている。矢野経済研究所によると、CRM・MA・CDPを含む国内デジタルマーケティング市場は2024年に約3672億円規模に達し、2025年には前年比14.1%増の約4190億円に成長すると見込まれている。大橋氏は「顧客との一次情報をデータベース化し、顧客管理まで一気通貫で完結させるアプローチをとる国内プレーヤーは、現時点では存在しない」と語る。
SYSLEAは今回の調達資金を、AI基盤のさらなる強化とエージェント機能の拡充、および営業・マーケティング組織の構築に充当する方針だ。
今回調達した資金は、AI基盤のさらなる強化・エージェント機能の拡充、および営業・マーケティング組織の構築に充当する計画。Frictio単体の年間収益目標は2027年に10億円、2028年に20億円を掲げる。大橋氏は「今後は人間のためのAIネイティブCRMだけでなく、AIエージェントのためのAIネイティブCRMが必要になる」と見ており、AIエージェントを前提とした新事業の立ち上げも視野に入れている。将来的には「100人で100億円の売上を作るソフトウェア会社」を目指し、2032年頃のIPOを目標に掲げる。「私たちが創りたいのは、まだ実証されていない"新しい働き方"。テクノロジーの社会実装を通じて、世界の生産性をリードしていきたい」と、大橋氏は力強く語った。
日々刻々とAIが進化を遂げる中で、SYSLEAがどのような「新しい働き方」を提案し社会実装していくのか、今後の展開に注目だ。










