11億円調達の株式会社KAKEAIが目指す、プロダクトで支える従業員視点のマネジメント

11億円調達の株式会社KAKEAIが目指す、プロダクトで支える従業員視点のマネジメント

KEPPLE編集部

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1on1支援クラウド「Kakeai(カケアイ)」を提供する株式会社KAKEAIはシリーズ Aラウンドにて、第三者割当増資および融資による総額11億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

1on1とは、指示・指導目的のミーティングではなく、部下を主体とした継続的なミーティング。
KAKEAI が実施した1on1 に関する実態調査によると、新型コロナウイルス流行以前である2019年の1on1実施人口が推計516万人・国内全就業者数の7.5%であったのに対し、2022年7月時点では、推計1,310万人・国内全就業者数の19%と1on1への取り組みが加速し広がっている。

今回のラウンドでの引受先は、モバイル・インターネットキャピタル、DBJキャピタル、博報堂DYベンチャーズ、SMBCベンチャーキャピタル、イノベーション・エンジンの5社と、複数の個人。

調達した資金は、マーケティング活動の拡大や開発体制の強化に充て、これまでのエンタープライズ向けに加えて、国内SMB市場および海外展開を目指すとしている。

今回の資金調達に際して、代表取締役社長 兼 CEO の本田氏に、詳しく話を伺った。


―― まずは、御社の事業についてお聞かせください。

本田氏:弊社は、法人向けに提供している1on1支援クラウド「Kakeai(カケアイ)」を開発・運営しています。

コロナ禍になる以前からエンプロイーエクスペリエンスやエンゲージメントと呼ばれる、従業員視点のマネジメントの重要性が認識され始めましたが、カケアイはこの従業員視点で現場の上司と部下のコミュニケーションを支えるサービスです。

従業員視点でのマネジメントかつ日常的に利用するサービスとしては、パルスサーベイやピアボーナスなどに近しい位置づけ、また、非日常的なソリューションとしては、管理者向け研修や、診断やアセスメントに関するものが近い領域となりますが、それらの「測るだけ」「教える/教わるだけ」」とは全く異なり、継続的な上司部下コミュニケーションそのものを支えるものです。

コロナウイルスに伴う働き方の変化により、カケアイについても、特に2021年以降、お問い合わせ数やユーザー数が急激に増加しています。コロナ以前の2020年1年と比較すると、ユーザー数は約200倍に伸びている状況です。

*パルスサーベイ:会社が従業員の満足度や心身の健康度を把握するため、短期間に繰り返し実施する調査方法
*ピアボーナス:従来の会社から従業員に対して贈られる報酬とは異なる、従業員同士で報酬を贈りあうことができる仕組み・制度

――カケアイのサービスの特徴について、教えてください。

現在、様々な企業から1on1のツールを探しているとお問い合わせいただいているわけですが、最終的に比較検討された場合、確実にカケアイを選んでいただいています。1on1ツールの選定の際にお客様が求められる要件は主に3つあり、まさにこの3点において、カケアイが良いねとお客様から評価いただき、選ばれている状況です。

この3つの要件について、まずは「本音が言いやすい・聞きやすい仕組みかどうか」。続いて、「継続的かつ連続性のあるミーティングをし続けられるように、負担がないか/便利に利用できるか」。最後に、1対1のクローズドな中で行われるコミュニケーションの中であっても、「自律的な改善を促されるような仕組みかどうか」。これらの要件が重要視されています。

カケアイの一番の特徴は複数の特許に支えられる、理想的な1on1実施を促すUXです。当然、1on1を継続的に行っていくために必要な基本的な機能である、カレンダー連携やビデオ通話、チャットツールとの連携、共有メモなどを1on1というシーンに最適な型で揃えています。

カケアイでは、部下の方が1on1を実施する前に、どういうトピックを話したいのか、また、アドバイスが欲しいのか・一緒に考えて欲しいのか、などを選択する、非常に簡単な事前準備ができるようになっています。例えば、本当は話をきいてほしいと思っているのに、上司がアドバイスばかりしてくるということはよくあるズレだと思いますが、これを部下側がストレートに伝えることは容易ではありません。会社ごとに推奨のトピックを設定したり、必ず話して欲しいことを必須のトピックにするなども可能です。 

また、上司は1on1の事前に、今回部下が選択したトピックや、自分が期待されている対応(アドバイスがほしい、一緒に考えて欲しい、意見をききたい...など)が、上司として得意なテーマか苦手なテーマかがわかるようになっており、事前にアドバイスが表示されます。さらに、カケアイを利用している他社のマネジャーの皆さんが回答した、意識しているポイント等がレコメンドされるようになっているので、それらに目を通しておくだけで、1on1が楽で質の高いものになります。

1on1実施は、カケアイに内蔵されているビデオ通話や、リアルタイムに確認し合えるメモや、自分だけの備忘用のメモ、二人の間での約束事の管理なども可能です。

1on1の終了後には、部下に対して簡単なアンケートが表示されます。この回答は上司にもシステム管理者にも、誰にも一切開示されません。このデータが上司の得意・不得意を判別するデータの一つになっています。判別には、自分の部下のデータだけではなく、数十万人のカケアイユーザーのデータも加味されます。 匿名性が担保され、かつ受け入れやすい情報として、改善した方がよいポイントや、自信を持ってよいポイントなどのアドバイスがレコメンドされるようになっており、自律的な改善を促します。

―― 現在の事業を始めようと思ったきっかけを教えてください。

元々、新卒でリクルートに入社し、最後はリクルートホールディングスの人事をしていました。特に、人事の中でも現場のマネジメント力強化を担当していました。

30代前半で仕事もとても順調で、会社からも評価され始めてきている中で、ある時、360度評価が実施されました。匿名で得点をつけてフリーコメントで回答する形式でしたが、自信があったので、きっとメンバーから「本田さんいつもありがとうございます!」といったコメントがくるだろうな、と思って実施が楽しみでした。

しかし、いざ蓋を開けてみると、「あなたには誰もついていきたくないって知ってます??」という匿名の辛辣なコメント。

これを機に部下との関わり方が難しくなっていきました。仕事を自分で抱え込むようになり、よく寝れない、頭も痛い日が多くなり、重度の鬱という診断で、数ヶ月休職することになりました。

休職し始めた当初は、サラリーマンとして順調な人生が終わっていくような感覚に打ちひしがれましたが、少しずつ自分に向き合うことができるようになるにつれて、自分としては良かれと思ってやったいたことも、相手にとっては全然そうではなかったと気づくわけです。
部下は必ずしも上司が選べない状況の中で、上司は部下の人生を背負っているわけだし、自分は部下の人生を毀損させるようなことをしてしまった、ととても申し訳ない気持ちに襲われ続けました。そのまま消えてしまいたい気持ちもありましたが、自分自身に向き合わなければ次に進めないと思い、復職を決意しました。

復職後、改めて人事の立場として、会社の中にいる管理職の皆さんを見たときに、それまでは「出世の競争相手」であり、ある種「改善の対象物(マネジメント強化という意味合いでの)」であった多くのマネジャーが輝いて見えました。それと同時に自分自身の力のなさを改めてくっきりと感じました。さらには、自分と同じような上司と、その上司のもとで苦しむ部下の姿もありありと見えるようになりました。 

このような課題をどうすれば解決できるか考えた時に、「日常の上司部下のコミュニケーションやマネジメント」というものだからこそ当然、現場の管理職に任せなければいけないにも関わらず、部下への関わり方というものは、結局のところ個人のコミュニケーション力やマネジメント力という、属人的なところに依存し、いくらマネジメント研修やエンゲージメントを測るなどのやり方では、変わっていかないと感じました。そこで、多少プロダクトアウトであったとしても、プロダクトを活用してコミュニケーションそのものを支えていく、そこに溜まる真実のデータに基づいて改善を促していくことという方法があるのではないか、その挑戦により、属人的なマネジメントをなくしたいと思い、この事業に取り組むきっかけとなりました。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

これまで幅広いお客様にご利用いただきながらも、特にエンタープライズ向けにプロダクトを磨いてきました。
今回の調達を経て、引き続きエンタープライズ向けはより一層ニーズにお応えできる状態を目指し強化しながら、国内SMB市場と海外に展開していくことを考えています。これまでエンタープライズ向けに磨いてきたプロダクトを、いかにセールスを介さずにご提供できるか、非常に大きなトライになります。

また、1on1の領域に軸足をおいて、深掘りをすることを基本としていますが、ご利用のお客様からはパルスサーベイや、チームマネジメント等の周辺ニーズをカケアイの中に集約したい、というお声もいただいています。
独自のポジションをしっかりと作りながら、カケアイの機能として取り組んでいくところと、データ連携によって他に任せるところを切り分けながら、展開していくことを考えています。

さらに、長期的な目線で、私たちが見通している世界の変化でいうと、雇用の流動化やビジネスの競争環境が変わり続ける中で、従業員視点のマネジメントの重要性がますます高まるにつれて、メンバーの状態やキャリアプランや志向等に応じて、よりきめ細かい個別対応や、仕事のアサインなどを工夫する必要が出てきて、それを現場のマネジャーが判断していくことになると思っています。
そうなると、会社内の部門間における調整や異動だけでなく、企業の枠を超えて連携していくことが普通になると思います。逆に、それができない会社は、働く場所として選ばれもしないし、ビジネスにも勝てない。例えば、社外のマネージャー同士が連携して、「今、自社のメンバーでこういう人がいて、次の3ヶ月間くらいでこういう仕事が本人にあった方が良さそうなのですが、そちらのチームでアサインできませんか」というような、副業や兼業に近いような形で、フォローし合うような関係に発展していくことや、社外の具体的な知見を取り入れながら目の前の業務課題をクリアーしていくような仕組みが新しい社会を支えると考えており、弊社としても企業の枠を超えて機会や知見を繋げていくということをより一層強化していきたいと思っています。

―― 最後に御社からメッセージをよろしくお願いします。

まだまだ、 カケアイのような1on1ソリューションがあることを知らない方も大勢いらっしゃると思いますし、どのようなサービスなのか想像しにくい部分もあるかな思います。
ただ、ご紹介する機会をいただければ、実際に活用いただくイメージや役に立つイメージを持っていただけると思います。
少しでもご興味ある方は、喜んでサービスデモをいたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせいただければと思います!

株式会社KAKEAI

株式会社KAKEAIは、AI クラウドシステム「KAKEAI」の開発・運営を行う企業。 「KAKEAI」は、属人的でブラックボックス化しがちな日常のピープルマネジメントを、科学とテクノロジーの力で変えることにフォーカスしたクラウドシステム。脳科学に基づき、個人の特性を踏まえてコミュニケーションについてアドバイスを提供するアルゴリズム・方法において特許を取得している。 2019年に、日本最大級の HRtech アワード “HR Tech GP” にてグランプリを受賞、また “第4回 HR テクノロジー大賞” において注目スタートアップ賞を受賞した。

代表者名本田英貴
設立日2018年4月12日
住所東京都港区北青山2丁目13番5号
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