実践型サイバー攻撃対策のAironWorks、デジタル化社会のセキュリティインフラを目指す

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KEPPLE編集部

サイバーセキュリティ訓練・教育プラットフォームを提供するAironWorks(アイロンワークス)株式会社がプレシリーズAラウンドにて、第三者割当増資による約$2.64M(3.9億円*)の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドでの引受先は、イスラエル大手銀行Bank Leumi系VCのThe Garage、ココナラスキルパートナーズ、ALL STAR SAAS FUNDの3社。

今回の資金調達により、自然言語処理技術によるサイバーセキュリティシミュレーションの高度化と、多機能化に関わる研究開発、および多地域展開を目指す。

*資金調達完了時為替レートにて登記

イスラエル国防軍のナレッジに基づくサイバーセキュリティ訓練

AironWorksは、サイバーセキュリティに関する実践的な訓練と教育に特化した、SaaSのプラットフォームだ。開発したのは共同創業者でCTOのGonen Krak氏。世界トップレベルの技術力を誇るイスラエル国防軍のサイバーセキュリティ精鋭部隊「Unit 8200」出身のホワイトハッカーという経歴を持つ。

従来の標的型メール訓練ではカバーできないSNSやSMS攻撃、標的に応じて個別最適化されたサイバー攻撃などに対して、継続的かつ実践的な訓練が可能。さらに、イスラエル国防軍の教育メソッドにゲーミフィケーションを加えた「オリジナル教育プログラム」を実装している。

サービス資料画像
AironWorksは諜報やセキュリティに関するUnit 8200の知見をもとに、実際のハッカーが使う手法で、AIが標的型攻撃の訓練を個別に最適化して生成。訓練内容の企画から実行、フォローアップ教育およびレポーティング業務まで、一括した自動化で工数を大幅に削減し、企業のセキュリティレベルを高める。

2022年8月の創業から現在までの導入社数は、有償および無償(PoC)導入を合わせて約50社。内訳は国内約40社、海外約10社となっている。2026年までに累計2万社の導入を目指すという。

今回の資金調達に際して、代表取締役 寺田 彼日氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。


実際の攻撃に近い訓練でセキュリティのスキルを向上

―― イスラエルで起業された背景を教えてください。

寺田氏:私は戦後の起業家や創業者に憧れていて、何もない焼け野原からソニーやホンダのような会社が生まれたことに感銘を受け、自分でビジネスをやりたいと思っていました。しかし、トルコの大学院に留学した際、日本のプレゼンスが下がっているのを体感しました。今でもそうなのですが、イスラエルでもアメリカでも、日本発のスタートアップは1社も知られていません。こういった状況はとても残念です。

戦後にできた企業は大企業になり、この40年ほど、優秀な人材はそちらに流れていきました。私は国内ではなく、優れたスタートアップエコシステムのある国でグローバルに勝てるソフトウェア企業を目指したいと考えました。そのためにスタートアップの数、投資額、技術面を調べると、イスラエルが条件に合いました。トルコ留学時に中東エリアの雰囲気が好きだったこともあって、2014年に片道切符でイスラエルに向かい、最初の会社を設立しました。

スタートアップスカウト

―― AironWorks設立のきっかけを教えてください。

行ったこともない国で会社を始めたので、イベントの主催や参加など日々の行動を通して少しずつ知り合いや友達を増やし、共通の友人の紹介で後に共同創業することになるGonenと出会いました。グローバルに使われるプロダクトで社会的な課題を解決したいという思いが一致して、彼とプロジェクトを始めました。

企業へのサイバー攻撃の中でも、特に人を狙った攻撃による被害が急速に増加し始めたのが2019年頃です。デジタル化が進む中でサイバー攻撃の急増は確実であり、そして私たちの強みであるイスラエル国防軍のナレッジと人脈、私が7年以上取り組んできたBtoBビジネスのネットワークもある。これを活用して、2020年にまずは日本で市場の検証からスタートしました。

―― これまで、日本におけるセキュリティ訓練にはどのような課題がありましたか?

既存のサービスは、基本的にeメールのテンプレートを使った訓練で、訓練に慣れている方はあまり引っかかりません。当社のデータでは、定型的な訓練のメールを開いてしまう方は、平均3〜5%以下です。運用については、誰が訓練用のメールを開いてしまったのか、情報システム部門の方がエクセルで手集計したレポートを経営層に報告しているケースが多く見られます。

一方、私たちのシステムでは、ハッカーによる実際の攻撃に近い訓練メールを送信するため、初回のケースでは30〜60%という高い確率で開封されます。継続的に訓練すると防御力が飛躍的に上がり、セキュリティに関するスキルや知識が身につきます。また、運用に関する業務は一括してAIで自動化しているのも、大きな差別化のポイントです。

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価値創造に取り組む人々を後押しするインフラに

―― 今回の資金調達を経て、足元の事業拡大の方針について教えてください。

アメリカ、イギリス、シンガポールなど英語圏のグローバル市場での再現性を持った事業開発に、今回の資金の半分を使用します。2023年の夏頃までに、大手の銀行や金融機関とデザインパートナーシップなどを組み、複数の市場で有償顧客への転換が再現できればと考えています。

日本国内の市場はPMFが見えており、まずは2023年夏~秋頃までに年間の契約額1億5000万円を目指します。そこから3年先をめどに10〜20億まで積み上げる計画です。

残りの半分は開発費用です。エンタープライズのお客様から要望のある追加機能と、AIによる自動化をより高度にすること。アップセル、クロスセルに必要となる機能の研究・開発に投資する予定です。

―― 今後の展望を教えてください。

2023年はアメリカ、イギリス、ヨーロッパに加え、シンガポールを中心としたAPAC(アジア太平洋)をターゲットにした事業が、各市場で立ち上がると予想しています。ハッカーの攻撃に国境はないため、そのリスクはあらゆる国の企業が直面する大きな課題です。私たちのプロダクトは、そんな世界共通の課題に対応しています。まずはリスクを低減し、イノベーション創出に取り組む全ての会社が安心して事業に取り組める基盤になりたいです。

将来的には、デジタル化社会のセキュリティインフラになるというビジョンがあります。その実現に向けて、訓練教育から入り、総合的なセキュリティプラットフォームを作りたいと考えています。当社の存在意義は、AIやテクノロジーを使って価値創造に取り組む人々・チームをエンパワーメントすることです。セキュリティで世界ナンバーワンになることが実現できた先には、もう少し違ったアプローチも生まれるかもしれません。

AironWorks株式会社

AironWorks株式会社は、企業向け標的型攻撃シミュレーション・訓練プラットフォーム『AironWorks』を運営している企業。 『AironWorks』は、標的型メールやSNS(Facebook、Twitter、LinkedIn) 、SMS攻撃など、多様なベクトルからの攻撃に対する訓練が可能な訓練プラットフォーム。

代表者名寺田彼日
設立日2021年8月2日
住所東京都港区虎ノ門4丁目3-1
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