太陽光発電システムの第三者所有サービス「シェアでんき」を提供する株式会社シェアリングエネルギーがシリーズBラウンドのファイナルクローズにて、第三者割当増資による3.6億円の資金調達を実施したことを明らかにした。シリーズBラウンドでの資金調達額は55.9億円となり、累計資金調達額は約81.9億円に上る。
今回のラウンドのファイナルクローズでの引受先は、新生企業投資株式会社、七十七キャピタル株式会社、静岡キャピタル株式会社、山梨中銀SDGs投資事業有限責任組合、南都キャピタルパートナーズ株式会社、株式会社ちゅうぎんキャピタルパートナーズの6社。
調達した資金は、全国金融機関の顧客基盤の活用やJV設立、全国地銀主導による戸建てオンサイトPPAサービス(※)の提供、人材採用による開発体制の強化などに充てる。主に全国地方銀行・信用組合・地元企業との協業を通じて、地域の脱炭素化に向けた取り組みを一層加速させる。
(※)オンサイトPPAモデル:Power Purchase Agreement(電力購入契約)の略称であり、発電事業者が需要家の敷地内に太陽光発電設備を発電事業者の費用により設置し、所有・維持管理をした上で、発電設備から発電された電気を需要家に供給する仕組み。
太陽光発電システムを無料で設置できる「シェアでんき」
株式会社シェアリングエネルギーは、主に戸建ての屋根上に設置する太陽光発電システムの設置サービスを手がける企業だ。「分散電源の創出により、エネルギーシステムを変革する」をミッションに掲げる。再生可能エネルギーの自家消費・地産地消を促進することで、持続可能な社会の実現に寄与することを目指す。
従来、太陽光発電システムは販売モデルが主流となっていた。設置には200〜300万円の費用が必要であるほか、メンテナンス面の不安もあり、消費者にとって身近なものではなかった。
そこで同社は2018年に「シェアでんき」の提供を開始。ユーザーは初期費用なしで太陽光発電システムを設置でき、15年間後に無償譲渡されるまでメンテナンス費用もかからない。同社は、発電した電力を使って22/kWh(税込)という割安な電気代でユーザーに電力を提供し、それ以外の余剰電力から売電収入を得るビジネスモデルとなっている。契約依頼数は、2022年7月時点で累計7000件を超えている。
2021年からは自治体との取り組みも積極的に推進している。福岡県吉富町との包括連携協定を端緒に、自治体が所有する倉庫、防災施設、公民館、体育館といった公共施設の屋根に太陽光発電パネルを設置し、地域の脱炭素化促進を目指す。
今回の資金調達に際して、取締役CFO 田原正崇氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
付加価値でユーザーの利便性向上を図る
―― シェアでんきを始められた背景を教えてください。
田原氏:私たちシェアリングエネルギーは、環境・エネルギー分野に特化したVCである環境エネルギー投資と、エネルギー関連企業のアイアンドシー・クルーズ社のジョイントベンチャーとして事業を開始し、2018年2月に「シェアでんき」をリリースしました。当時、太陽光発電サービスの競合は、ほとんどがパネルメーカーや新電力事業者でした。初期費用なしの太陽光発電システムをユーザーに導入してもらい、それとは別の主力事業の拡販につなげるようなサービスモデルでした。
そのような中でも、太陽光発電システムのサービスは確実に需要があり、世の中に貢献するサービスだと確信していました。私たちは当初から太陽光発電システムのみを提供しており、太陽光発電を専業とする事業者の先駆者だと思っています。
―― 今回の資金調達にあたり、多くの地方銀行から出資を受けられていますが、どのような背景からでしょうか?
全国の自治体はもちろん、地銀のみなさまも、地域の脱炭素というミッションを背負われています。何かしなければいけないという状況の中で、再生エネルギー領域に非常に興味を持たれています。銀行自体が新電力の立ち上げや、自ら再生エネルギー事業を始めるところも出てきています。
一方で、やはりノウハウがなく提携先を探されているケースも多いです。そのような背景から、当社のビジネスモデルにご注目いただき、各地域で協業しながら進めていく案件が増えてきました。今後も取り組み地域を拡大していきます。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
シェアでんきにプラスアルファのサービスを提供して、ユーザーの生活の利便性向上を図っていきます。2021年にはTesla社製蓄電池「Powerwall」をパッケージ化した「シェアでんき蓄電池モデル」をリリースし、現在は「シェアでんきEVモデル」について各自動車メーカーと協議を始めています。
私たちが提供する太陽光発電システムは、一つひとつの発電源としては小さくても、束ねれば発電所レベルの電力量になります。これを新しいビジネスに生かせないかと考えています。例えば、DR(デマンドレスポンス)やVPP(バーチャルパワープラント)といった需要側の分散電源を活用したアグリゲーションビジネスの商用化や、太陽光発電の自家消費によって生まれた環境価値を自治体へ無償でお譲りし、地域の発展・税収増に役立てていただくことなどを想定しています。
シェアでんきは関与する全ての人がwin-winになるビジネスだと思いますので、これからさらに広げていければと考えています。
株式会社シェアリングエネルギー
株式会社シェアリングエネルギーは、再生可能エネルギーなどによる発電事業およびその管理・運営に関する業務を行う企業。 太陽光発電システムの第三者所有サービス『シェアでんき』を運営。 『シェアでんき』は、家の屋根に太陽光発電システムを無料で取り付け、発電した電気を居住者がリーズナブルな料金で使用できるサービス。契約期間の15年目経過後は居住者に所有権が移転し、余剰電力収入もすべて居住者のものとなる。また、従来の自己所有型の太陽光発電と比べて初期費用やメンテナンス代がかからない。
代表者名 | 上村一行 |
設立日 | 2018年1月11日 |
住所 | 東京都港区新橋1丁目7番11号 |