再生可能エネルギー調達プラットフォームを運営する株式会社エナーバンクが第三者割当増資による2億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、Spiral Capital、ジェネシア・ベンチャーズ、SMBCベンチャーキャピタルの3社。
調達した資金は、採用強化やサービスの拡充に充てるほか、独自特許技術を活用した共同調達・共同オークションのシステム仕様の強化、マーケティングに活用するという。
リバースオークション方式で電力料金の最適化を支援
エナーバンクは「エネルギー調達をもっとシンプルに」をビジョンに掲げ、電力需要家の目線でエネルギー調達の最適化を進めている。
代表の村中健一氏はソフトバンク出身。エネルギー、電力関連の自由化前に、IoTサービスの立ち上げや経済産業省のプロジェクトなどに携わった知見をもとに起業した。
同社が提供するのは、電力リバースオークションサービスの「エネオク」、環境価値取引プラットフォームの「グリーンチケット」、太陽光発電設備導入支援サービス「ソラレコ」の3事業。いずれも脱炭素の取り組みを軸としている。
2020年、当時の菅総理大臣が「2050年までに脱炭素社会の実現を目指す」と宣言。それ以降は、再エネの選び方や設備の導入、CO2を下げる取り組みなどについて、法人や自治体の電力需要家としての課題は大きくなっている。
そこで同社が立ち上げたのは、環境とコストの課題を解決できるソリューション「エネオク」だ。エネオクはリバースオークション方式を採用した、需要家の電気料金最適化を支援するプラットフォーム。リバースオークション方式とは、他社の入札価格が見える状態で、一定期間に何度でも再入札可能な仕組みを指す。
電力自由化による競争下で強みとなるサービス
2016年の電力自由化以降、多くの小売電気事業者が登場したことにより、各社は競争環境に置かれている。事業者がエネオクを利用する場合は、競合他社の価格を見ながら期限内であれば何回でも再入札でき、需要家の条件に近づけていけるのが特徴だ。事業者はエネオクによって、見積もりが契約へ結びつきにくいという課題を解決するという。
一方で電力需要家は、電力の適正価格を判断するためのマーケット情報にアクセスしづらい状況にある。これは電力自由化と昨今のエネルギー高騰でますます大きくなる課題であるため、同社のエネオクによる価格情報の提供は強みになるとしている。
同社は現在35社の小売電気事業者とパートナーシップを結んでいる。事業者と需要家の間で契約が成立した場合、事業者からマッチング手数料を受け取る仕組みとなっている。需要家はプラットフォームを無料で利用できる。
今回の資金調達に際して、代表取締役 村中氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
自治体と一緒に、地域で再エネの流通を担う存在に
―― 創業までの経緯と、エネオクを始めようと思ったきっかけを教えてください。
村中氏:学生の頃からエネルギー事業と起業に興味があったので、通信インフラをゼロから立ち上げた孫正義氏に学ぼうと考え、ソフトバンクに入社しました。興味のあったエネルギー事業にアサインされ、幅広い電力ビジネスに携わる中で、電力自由化のタイミングが訪れたんです。
お客様の選択の範囲が広がったため、エネルギー業界でもソフトバンクが通信の世界で取り組んできたようなことができないだろうか、と考えました。多くの人がプラットフォームにアクセスでき、さまざまな選択肢に触れられる環境を作らなくてはならない、という思いがあったからです。
需要家が電気を選べる環境になったため、そこにマーケットを作ればもっと効率的な形でお客様に電力サービスを届けられるのでは、と発想しました。需要家目線で、お客様にとって適正価格での最適化ができるよう、さまざまな電力会社とパートナーシップを結ぶプラットフォーム型でスタートしました。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
当社は自治体のニーズを的確に捉えたと考えています。地域事業者への取り組みに注目している唯一のプレーヤーとしても、期待に応えられるようさらに事業を推進していきます。
エネオクは既に全国規模のサービスですが、さらにエリア展開を強化していきます。自治体は近隣の都市の動向を見ているので、数珠つなぎに拡大していければと。
再エネの普及はとどまることなく、大手企業が風力発電やバイオマス発電、太陽光発電に投資しています。しかし、需要家サイドでは再エネに関する情報が可視化されていないことに気づきました。地域の中でさまざまな方に対して、再エネを利用できるキャパシティの可視化が必要です。
「再エネを取り入れたい人々」のデマンド情報と地域の再エネ計画をマッチングし、そこにテクノロジーの要素を重ねることで、再エネ投資に関する意思決定を促すのが2025年から2030年までの課題です。自治体を巻き込み、一緒に地域の中での再エネの流通を担う存在になりたいと考えています。
私たちが得意とするのは、条件を切り分けて仕様化し、そこに最適なプレーヤーを見つけてくることです。各パートナーの強みをマッチングできる切り口で、プラットフォームを拡大していきたいと思っています。もちろん、パートナーあってこそのサービスですので、パートナーシップのさらなる強化も図ります。
世の中にない、新たなサービスを地域や自治体へ
自分の頭で考え、実行して、お客様を獲得するという、非常に自由度の高い会社です。私たちしか手がけていないサービスを作っているため、取り組む仕事は世の中の最初の事例になります。
こういった考え方をサービスに実装し、地域や自治体に届けていきたいという思いがある方は、ぜひ一緒に「脱炭素No.1パートナー」というキャッチフレーズのもと、このラウンドを駆け抜けていきましょう。
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株式会社エナーバンク
株式会社エナーバンクは、電力オークションシステムの開発・運営を手がける企業。法人向け電力オークション『エネオク』を全国エリアで提供する。 『エネオク』は、Web 上で電力リバースオークション(競り下げ方式の入札)を行い、法人と電力会社をマッチングするオークション型の仲介サービス。電気代の見直しや切り替えを検討する法人が、最適な電力契約を簡単に見つけられる。 テクノロジーとアイデアの力でエネルギーインフラをアップデートして、成長への活力と未来へつながるワクワクを創造することをビジョンとしている。
代表者名 | 村中健一 |
設立日 | 2018年7月10日 |
住所 | 東京都中央区日本橋2丁目1番17号丹生ビル2階 |