未経験転職をサポートする後払い型リスキリング転職プラットフォーム、長期のキャリア形成を支援
未経験の業界・職種への越境転職を支援するWorX株式会社がプレシリーズAラウンドにて、第三者割当増資と融資による1.5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、XTech Ventures、ユームテクノロジージャパン、ナハト、ベクトル取締役副社長の長谷川創氏。融資における借入先は日本政策金融公庫。
今回の資金調達により、複数のコース展開と年間300名以上の転職を支援する体制構築を目指す。
転職成功後の後払いで負担を軽減
同社は、転職決定後の後払い型リスキリング転職プラットフォーム「WorX」を運営する。リスキリングによる未経験の業界や職種への転職を実現するためのトレーニングコースを提供し、転職活動をサポートする。
カウンセリングや適職診断、e-ラーニングのほか、キャリアコーチングを通じて求職者の転職を支援する。2023年8月時点では、IT業界を中心としたソリューション営業やWebマーケター、Salesforceの導入コンサルタント、ノーコードエンジニアへの転職を目指すコースを展開している。
約3ヶ月間、200時間程度のプログラムの後には実際の転職活動に取り組み、同社が提携する企業の求人に応募することも可能だ。
また、プログラム受講中には費用が掛からない点が大きな特徴だ。転職成功後、月収の10%を24ヶ月間支払う後払い制度を採用しており、転職前の費用負担を軽減する。
2023年8月時点で、受講者の約8割が転職を成功させており、リモートワークなどの柔軟な働き方を可能とすることに加え、転職後の年収は平均で90万円の増加につながっている。今後は受講者の増加や新コースの展開を加速する。
今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 藤原 義人氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
友人の相談をきっかけに開始した未経験転職のサポート
―― 未経験の業種や職種への転職には、どのような課題がありますか?
藤原氏:労働市場において、人材の流動性と労働生産性には高い相関性があることが確認されています。日本では、人材の流動性、生産性ともに、先進国では最下位レベルの低さです。転職に対するハードルは未だに高く、生産性が低い市場に人が集中してしまっている可能性は非常に高いと思います。
新型コロナウイルスの流行は、多くの人々が自身の仕事やキャリアについて見直したり、収入の増加を求めて転職を検討する大きなきっかけになりました。これまで年間で数千円単位しか収入が変わらなかった人も、成長市場に転職することで大幅に給料が増加することは珍しくありません。一方で、業界や職種を変え、未経験の成長市場に転職することは、同業種内で転職をすることに比べてさらに難易度が高いです。
さらに、キャリア支援サービスを利用するにも、高額な費用がかかります。転職の成功が保証されていない段階にもかかわらず、出費をしてスキル獲得をすることへの不安は大きな課題です。
―― 創業のきっかけを教えてください。
大学時代、自分自身がキャリアについて深く悩んでいた経験から、どのようにキャリアを考えていくかには常に関心を持っており、在学中には就活支援のサービスを提供していたことがあります。多くの人が楽しみながら働ける社会を築きたいと思い、そうした新規事業やサービスに携わることを目的に、人材業界の企業に新卒入社しました。
WorXのビジネスを開始したきっかけは、友人から転職の相談を受けたことです。結婚をきっかけに、安定して成長できるキャリアを求めての相談でした。
アドバイスをしながら、エージェントを利用してITや医療分野を中心に応募を進めましたが、なかなか採用には至りません。現職での実績があるにもかかわらず、未経験であることを理由に1次選考を通過できず、転職を諦めざるをえない状況に違和感を覚えました。
一方で、友人自身もIT業界に進みたい理由やキャリアの方向性を整理できていませんでした。企業としても、今後のキャリアを描けていない未経験人材の採用ハードルは高く、求職者が転職に向けてスキルを高めようとしても、高額な費用負担が障壁となります。
こうした経験から、求職者が未経験の業界や職種におけるスキルを身につけたうえで、双方のニーズを満たす存在になりたいと考え、後払い制度を導入したWorXを立ち上げました。
個性を活かせる社会へ
―― 資金調達の背景や使途について教えてください。
今後は年間300名規模の受講者を受け入れるための組織体制を構築することが急務です。さらに、複数の新たなコース展開も行い、総合型の越境転職プラットフォームを目指すために今回の資金調達を行いました。
コース展開に関しては、バックエンドエンジニアやキャリアコンサルタント、ITコンサルタントなど、さまざまな職種のコースを提供していき、これから2年で10コース程の展開を予定しています。
2024年には追加の資金調達を予定しており、そこに向けてコース展開を強化するために、足元では事業開発担当やキャリアアドバイザーの人材採用を強化していきます。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
当社は経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業者」に認定され、事業運営に関する支援を受けています。この機会を活かしながら、受講者数の増加や新コース展開などの事業展開を加速していきます。
将来的には、一度転職に成功した人のその後のキャリアアップに向けて、新たな転職のサポートやリスキリングサービスを提供したいと考えています。受講生とパートナーシップを築きながら、長期にわたってキャリア相談を安心して任せていただけるような立ち位置を目指します。また、越境転職の支援を増やしながら、今後は未経験の転職者を受け入れる企業向けに、人材の早期戦力化のための教育サービスの提供も検討しています。
リスキリングやキャリア支援による賃上げは、国策のひとつでもあり、当社も責任感を持って事業を成長させていく必要があると考えています。人材会社や求職者支援を行う企業と提携しながら労働市場の流動性を高め、すべての人が能力と個性を活かして働く社会の実現に向けて取り組みます。