長期資産形成に特化した新たな証券会社(登録申請中)のブルーモ・インベストメント株式会社がシードラウンドにて、第三者割当増資による8億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、Spiral Capital、グローバル・ブレイン、Scrum Ventures、Angel Bridge、三菱UFJイノベーション・パートナーズ、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、Insignia Ventures Partnersの8社。
今回の資金調達により、今冬までに資産形成サービスの正式リリースを目指す。
個人の資産形成をBloomoで支援
同社が提供予定のサービス「Bloomo」は、米国株・ETFをアプリで取引できる資産形成サービスだ。
取り扱うのは米国株とETFというグローバル資産に絞っている。ユーザーはポートフォリオやコミュニティの機能によって、作業の手間を省きながら安心して資産形成を開始できるのが特徴だ。
現在500名ほどのウェイトリストの登録者に対して今夏には招待制でのリリースを予定。正式リリースは冬頃を目指す。
今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 中村仁氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
増える個人投資家、簡単で快適なサービス体験が必要
―― これまで、一般個人による投資にはどのような課題がありましたか?
中村氏:証券サービスは一般の個人にとってわかりにくく、必要以上に細かい印象があります。それが解消されない理由として、従来の投資家の多くが、デイトレーダーなど、短期で集中した取引を行うことが挙げられます。それにより、難解なワードでも問題なく、細かい機能の方が求められる市場環境が広まったことにより、ネット証券も含めた大手証券会社のサービスは、一般の人にとってかなり難しいものになってしまっていました。
ただ、ここ数年で大きく市場が変わってきており、より多くの人が今投資を始めようとしています。
コロナ禍で新たな証券口座が500万口座ほど開設されました。2020〜21年の2年間で、過去10年分の新規開設数に到達し、多くの新しい人たちがマーケットに入ってきました。彼らは従来のように、インテンシブにデイトレーディングしたい投資家ではなく、貯金の延長で資産形成したいと考えている一般の個人です。
特に20〜40代の若年層の資産形成をしたい方に向けて、グローバル投資による資産運用・資産形成に特化したのが当社のサービスです。
―― 多くの人が新たに投資を始めた背景について教えてください。
これは戻ることのない不可逆なマクロトレンドで、政治・経済・社会という3つの要因があると私たちは考えています。
まず政治的な要因としては、2019年の「老後2000万円問題」という話題をきっかけに危機感が煽られ、個人投資家の資産形成を後押しする政策ができたことです。
次に経済の要因です。この20年、日本の金利は0.01%程度の状態が続いています。対するアメリカの株式市場は、過去30年で平均7%の成長率を保っています。この利回りの差から、日本での円預金に経済的な合理性がないことが浸透してきました。
そして、私が最も重要と考えている社会的要因が、投資の一般化です。ここ5年ほどで、金融の専門家ではないインフルエンサーや、ツイッター上の一般ユーザーが投資について語るようになりました。以前から日本には、金融専門家の言うことを本当に信じられるのか疑う風潮はありましたが、一般の個人やインフルエンサーの発信によって世論ができ、金融が一般的になっています。そういった土台ができたのが、数年間での変化です。
これら3つの要因が大きな追い風となって、日本の個人投資家の投資環境は進んでいると考えています。
―― 創業のきっかけを教えてください。
昔から金融領域に関心があり、どうすれば一般の個人にもメリットのある経済システムを作れるのか、ずっと考えてきました。2007年、大学1年生の時には、学生が日本銀行に対して金融政策を提言するコンテストに出場し、最優秀賞をいただいたこともあります。当時はリーマンショックによる金融システムの崩壊を目の当たりにして、その安定性とは何なのか、関心が高まった時期でした。
自分が長期的にコミットできることや、個人投資家の増加というマーケットの動きもあり、証券投資による個人投資家の資産形成に関する事業を始めました。
経済システムを変えるためには、今まで政府や金融機関の専門家だけのものだった投資を、もっと一般の個人に広めなければなりません。私自身、個人投資家としてもサービス利用、手続きの難しさから、せっかく関心が高まっても投資をやめてしまったことがあります。一般消費者として持っていた問題意識のもと、その改善に向けて長期的に取り組めると考えました。
また、私の周りでは投資を始めた人が増えてきており、投資が話題に上がっています。実際のデータでも伸びています。このテーマは何度もチャレンジされてきた歴史がありますが、非連続的な変化の起きている今こそチャレンジすべき時期であると判断し、この領域で創業することにしました。
投資を起点にスーパーアプリへ
―― 資金調達の背景や使途について教えてください。
証券会社は、自己資本規制比率を一定の水準以上に保たなければなりません。その他にも様々なシステムとの連携などに費やすキャッシュも多い背景から、資金調達を行いました。特に自己資本に関する規制は厳しく、こうしたハードルの高さから、参入障壁は高い領域です。
投資家の皆様には当社のチームを評価いただきました。日本のマーケットの動きから、個人向け投資における資産形成のニーズがあることにも共感くださっています。また、当社の資産形成に特化したプロダクトのポジショニング、投資情報をシェアするカルチャーを踏まえたコミュニティ作りなども、今のマーケットに合致した独自性として認められたと思っています。
資金の使途はプロダクトの開発です。採用については、現在フルタイムで10名ほどの組織を、1年で倍の規模にしたいと考えています。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
当社のプロダクトはあくまで個人のニーズに立脚し、それを満たす世界でプロダクトを拡張していきます。一般の個人が資産形成や資産管理しながら使えるインターフェース、顧客接点を作っていきたいと思っています。
この1年はひたすら開発を進めて、いいチームでいいサービスを作り、世の中に出していきます。ただユーザー数を伸ばすのではなく、サービスを本当に必要として、共感していただける熱狂的なユーザーに使っていただくことを目指し、そのユーザー経由で次のユーザーに広がっていけばと思っています。
中長期的には、投資をより広げながら、日本の資産形成や資産管理のニーズに応えたいと考えています。投資した資産を担保にして日本円を借りられるローンの機能や、資金移動業口座を持ってキャッシュフローをコントロールできる仕組みを作りたいですね。これらが一つの金融サービスの中にインテグレートされている世界が理想です。
5〜10年後には、金融スーパーアプリ、デジタルバンク、チャレンジャーバンクを目指すことが大きな展望です。
ブルーモ・インベストメント株式会社
ブルーモ・インベストメント株式会社は、スマホによる長期投資サービスを開発する企業。 同社は、ユーザーに向けにポートフォリオ(現金や株式などの金融商品の組み合わせのこと)や、米国株・ETF(証券取引所へ上場している投資信託) を自動で作成するスマホサービスを開発する。同サービスはそのほか、他ユーザーの投資情報などの閲覧やユーザー好みのブランドを絞って投資できるという。
代表者名 | 中村仁 |
設立日 | 2022年6月9日 |
住所 | 東京都中央区日本橋茅場町1丁目8番1号 |