(2022年5月9日週) 海外資金調達 Weekly <Seed&Early編> 不安定な暗号通貨市場を横目に暗号通貨の利用を支える企業の資金調達は継続

5月2日週に報道された資金調達では、ユニコーン(企業評価額10億ドル以上の企業)となった企業が見つからなかったため、1億ドル以上の大型資金調達を行った企業を3社取り上げます。
1社目は、オフィス業務自動化ソリューションのLaiye(資金調達額 1.6億ドル)です。企業評価額は開示されていないものの、同社はユニコーンの基準である時価総額10億ドル達成まで「あと少し」とコメントしています(※1)。CEOのGuanchun Wangは、AI起業家がショートビデオなどのアプリに注目していた一方、伝統的な産業におけるAI革新にはあまり見向きをしていなかったことから、Laiyeを2015年に創業しました(※2)。同社は、積極的な海外展開を進めており、直近では、チャットボットサービスを提供するフランスのMindsayを買収しました。時価総額77億ドルのアメリカの巨大企業UiPathなどとの競争が注目されます。
日本のRPA市場においては、大企業向けではUiPathや国内SIerのNTTデータや富士通、中小企業向けでは、RPAホールディングスなどが主要プレイヤーです。Laiyeの当面の注力は、東南アジア、ラテンアメリカ、欧州などの市場のようですが、外資系のUiPathなどが日本で躍進していることを踏まえると、Laiyeの日本進出も実現するかもしれません。
2社目は、デジタルバンクのNeo Financial(資金調達額 1.45億ドル)です。カナダでは、既存の金融機関が市場を独占しています。イギリスなどでも、銀行業は寡占市場であったものの、既存の金融機関に対する満足度が低かったことからデジタルバンクが台頭しましたが、カナダでも同じようなトレンドが起きる可能性があります。大手銀行に対抗するため、Neo Financialは、プライベート・ウェルス・マネジメント商品や住宅ローンなど金融サービスを拡充する予定です。
日本のデジタルバンクは、楽天銀行、住信SBIネット銀行など大手が中心ですが、その中でもスタートアップのKyashなどが奮闘しています。Kyashは直近49億円を調達しており、米国の決済大手Block(旧称:Square)の初のアジア投資案件として話題になりました。
株式会社Kyash(キャッシュ)は、ウォレットアプリ「Kyash」の開発・運営、プリペイド式 Visa カードの発行、Web APIを通じてカードを発行できる決済プラットフォーム「Kyash Direct」を運営する企業。 Kyashはアプリ上でクレジットカードなどから金額をチャージして、決済や個人間送金ができる。企業向けに法人カードを発行する事業を手掛けていたが、金融サービスのインフキュリオンに売却。消費者向けサービスに注力する。
3社目は、農業テックのAbsolute(資金調達額:1億ドル)です。AIなどを用いて、生産者の収穫量を最大20%、収益性を40%程度向上させることができるそうです。以前の農業投入材市場の業界レポートでも述べた通り、インドの農業テックは一層の拡大が見込まれます。成長市場であるため、ライバルも多く、その中には、DeHaat、Gramophone、Bijak、Onatoなどが含まれます。一方で、今回投資を行ったSequoiaによると、インドは、世界の農産物の10%を生産しているにもかかわらず、金額ベースのシェアは1%に過ぎず、付加価値の高い農作物を生み出せていない現状があるそうです(※3)。Absoluteが提供するような科学的な知見に基づいた技術導入が進めば、インドの農作物の収益性の改善が見込まれます。
※1
https://asia.nikkei.com/Business/Startups/Chinese-startup-Laiye-nears-unicorn-status-with-160m-fundraising
※2
https://techcrunch.com/2022/04/18/chinas-work-automation-startup-laiye-raises-160m-acquires-frances-mindsay/
※3
https://india.sequoiacap.com/build/absolute-sowing-the-seeds-of-sustainable-scalable-agriculture/
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