余る再エネ電気を、地域の電源に変える——グリーングロースが挑む再エネの再設計

余る再エネ電気を、地域の電源に変える——グリーングロースが挑む再エネの再設計

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太陽光で昼間につくった電気が、使い切れずに余る。再生可能エネルギーの導入が進む一方で、国内の太陽光発電所では、発電が集中する時間帯には電力の市場価格が下がり、発電量を抑える必要も生じている。

この課題に、蓄電池の併設や蓄電所の開発・運用で向き合うのが、株式会社グリーングロースだ。同社は、太陽光発電と蓄電池を軸に、既存の太陽光発電所の収益改善や、再エネ電力を求める企業への供給支援を手がけている。

同社が見据えるのは、東日本大震災後に急増したメガソーラー※1を、今後も地域の電源として活用し続けられるかという課題だ。FIT※2(固定価格買取制度)の買取期間を終える発電所も、2032年度以降に順次増えていく。発電所オーナーにとっては、固定価格で売電できた時代から、FIP※3(市場価格にプレミアムを上乗せする制度)などを活用しながら、市場価格を踏まえて電力を運用する時代へ移行することになる。

グリーングロースは、こうした発電所に蓄電池を併設し、昼間に余った電気を夕方以降に活用することで、発電所の収益性を高める。あわせて、再エネ電力を求める企業に対して調達スキームを提案し、発電所オーナーと電力を使う企業の双方をつなぐ役割を担う。

同社は2026年10月、シードラウンドとして、第三者割当増資と金融機関からの借入により、約5億円を調達した。独立系ベンチャーキャピタルのANRIをリード投資家とし、ドーガンが運用するファンドと、デジタルグリッド代表取締役社長CEOの豊田祐介氏が個人投資家として出資した。調達資金は主に、人材の採用と組織体制の強化に充てる。

グリーングロースは、なぜ既存発電所の支援にとどまらず、新たな電源開発まで手がけるのか。代表取締役の河野 淳平氏に、再エネ市場の課題、蓄電池併設の可能性、地域の電源を地域で活かす仕組みづくりについて聞いた。

※1 メガソーラー:出力1MW(1000kW)以上の大規模な太陽光発電施設のこと。

※2 FIT:固定価格買取制度。再生可能エネルギーで発電した電気を、一定期間(事業用の太陽光は20年間)、国が定めた固定価格で電力会社が買い取る制度。 

※3 FIP:市場価格に一定のプレミアムを上乗せする形で、再生可能エネルギーの売電を支援する制度。FITから切り替えた場合、プレミアムを受け取れるのは元のFIT期間の終了まで。

昼間に余る太陽光を、蓄電池で活かす

──御社の事業について教えてください。

河野氏:再生可能エネルギーの領域で、太陽光発電と蓄電池に絞って事業を展開しています。

東日本大震災以降、国内ではメガソーラーが数多く建設されました。当時は、発電した電気を売電すれば収益が上がる時代でした。一方、現在は太陽光発電が増えたことで、昼間の電気が余るようになっています。

電気も株式市場のように、時間帯ごとに価格がつきます。太陽光発電が集中する昼間には価格が大きく下がり、発電しても十分な売電収入につながらないことがあります。一方で、脱炭素経営を進めたい企業にとっても、メガソーラー由来の電気をどう調達すればよいのかは分かりにくい。

そこで私たちは、いわば企業の「社外再エネ事業部」として、発電所のオーナーと、電力を使う企業の双方を支援しています。

──昼間に電気が余ることは、なぜ問題なのでしょうか。

電気は、使う量とつくる量を常に一致させる必要があり、このバランスが崩れると停電につながるおそれがあるためです。

日本全体として、クリーンなエネルギーを増やしていく必要があります。ただ、太陽光発電は昼間に発電が集中するため、その電気をどう安定的に使うのかが課題になっています。

そこで私たちは、既存の太陽光発電所に後から蓄電池を併設し、電気を売る時間をずらします。昼間に余った電気を蓄電池に充電し、夕方以降に放電することで、売電収益を高める仕組みです。

2026年6月には、大分県日田市の太陽光発電所で、企画から運用まで支援してきた蓄電池併設の第1号案件が運転を開始しました。この案件を起点に、発電所を持つかがし屋さんと共同で進めてきた取り組みが、太陽光発電協会の2026年度「ソーラーウィーク大賞」で優秀賞に選ばれました。

画像:同社が支援してきたかがし屋日田発電所

また、余った電気をためて活用する系統用蓄電所の開発も手がけています。土地の確保から許認可、送電網への接続までを整えて事業を組み立てます。案件によっては、稼働後の運用も担います。

FIT後の発電所を、地域の電源として残せるか

──FITからFIPへの移行で、発電所オーナーにはどのような影響がありますか。

FITは、市場価格にかかわらず、いつでも一定の価格で売電できるシンプルな仕組みだったため、発電所オーナーにとっては収益を見通しやすい制度でした。

一方、国はFIPへの移行を進めています。FIPになると、市場価格を踏まえて売電する必要があります。また、電気が余ると、電力会社は発電所に発電を止めるよう求めます(出力制御)。このルールが見直され、FITの発電所は、市場に合わせて売り方を変えられるFIPの発電所よりも先に止められるようになります。 エリアごとに、2026年度末から2027年度にかけて始まる予定です。

ただ、FIPでどの程度の収益が見込めるのかを計算するには、1年分のデータ分析が必要になります。発電量や市場価格、出力制御、プレミアムなど、さまざまな条件を踏まえた分析が必要です。

制度が複雑になる中で、発電所オーナーが十分な知識や実務体制を確保するのは容易ではありません。私たちは、ここを埋める存在が必要だと考え、その判断と実行を支える役割を担っています。

図:FIT・FIPの仕組み(同社作成)

──FITの買取期間終了を見据え、既存の発電所を長く運営するには何が必要でしょうか。

東日本大震災後に増えたメガソーラーは、2032年度以降、順次、FITの買取期間を終えていきます。そのタイミングで、発電所を続けるオーナーもいれば、やめるオーナーも出てくるでしょう。

このままでは、太陽光発電所の大量廃棄のような問題が起きる可能性があります。再生可能エネルギーを2050年以降も日本の主力インフラにしていくには、既存の発電所をどう活かし続けるかが重要です。

私たちは、蓄電池の併設や電力の販売先づくりを通じて、発電所の付加価値を高め、事業を長く続けられる状態をつくりたいと考えています。

地銀と組み、地域の発電所を支援する

──発電所オーナーには、どのような事業者が多いのでしょうか。

小規模な事業者では、年商5000万円から1億円未満の地元企業もいます。地域の金融機関から融資を受け、太陽光発電所を建設したケースも少なくありません。

そのため、私たちは九州を中心に地方銀行と連携し、取引先の紹介(ビジネスマッチング)や共同での提案を進めています。

銀行も課題を感じています。20年間、あるいはそれ以上の事業継続を前提に融資しているにもかかわらず、発電所の収益が落ちている。一方で、発電所の付加価値をどう高めるのかを、各支店の担当者が説明するのは難しい。

そこで私たちが銀行と一緒に発電所オーナーへ提案します。蓄電池の併設など追加投資が決まれば、銀行にとっても貸出機会が生まれます。発電所オーナー、金融機関、私たちの三者にとってメリットのある形をつくっています。

──蓄電池を併設すると、どの程度の効果がありますか。

九州では、出力制御などの影響で、収益が当初の想定より1〜2割ほど落ちている発電所が少なくありません。そこに蓄電池を併設した場合の収益を発電所ごとに試算すると、併設前の1.5倍程度、条件の良い発電所では2倍近くになる見込みです。

FIPでは、市場価格が下限の1kWhあたり0.01円まで下がる時間帯に売った電気には、プレミアムがつきません。昼間の電気を蓄電池にためて夕方以降に売れば、市場価格に加えてプレミアムも受け取れます。電気の価値と政策的な支援の両方が効いている形です。

──同じ領域のスタートアップと比べた時、御社の強みはどこにありますか。

一言でいえば、発電所の開発から電力の運用までをワンストップで手がけることです。

これまでの再エネ領域では、発電所を作って売却する事業者、電力を引き取って市場で運用する事業者など、役割ごとに担い手が分かれていました。それぞれに役割がありますが、既存の発電所や再エネ電力を使う企業にとって最適な方法は、一つではありません。

必要なのは、発電所の状況や電力を使う企業のニーズに合わせて、事業づくりから運用までを一体で支える存在です。 発電所の開発、蓄電池の導入、電力の運用、企業への供給までをつなげて考える必要があります。

私たちは、電力、金融、コンサルティング、メーカーなど、それぞれの領域で経験を積んだ人材をそろえ、仕組みや運用の体制も含めて自ら組み立てています。大変ではありますが、一貫して支援することで、発電所と電力を使う企業の双方にとって価値を高めたいと考えています。

実績も積み上がってきました。蓄電池の併設は九州を中心に8件、対象となる太陽光発電所の出力で合計約10MWを手がけ、後続でも10件ほどが控えています。件数では国内でもトップクラスです。

ヤップ島で見た海面上昇が原点に

──河野さんが再エネ領域で起業した背景を教えてください。

原点は大学時代にあります。ヘルスケア系のスタートアップで働き、自分の問題意識をビジネスで解決していく生き方が一番楽しそうに見え、いつか自分も起業したいと思うようになりました。

取り組むテーマを決める転機になったのが、学生時代に訪れたミクロネシア連邦のヤップ島です。サステナビリティを学ぶ中で、海面上昇が実際に起きている現実を目にしました。教科書でしか知らなかったことが、現実の課題として存在している。その後、福島の原発なども訪れ、地球規模の課題をクリーンエネルギーという技術で変えられる可能性に強く惹かれました。

大学4年生の頃には、別の企業から内定を得ていましたが、再生可能エネルギーの領域に携わりたいという思いが強くなり、卒業直前に内定を辞退しました。改めて就職活動を行い、再エネ開発を手がけるレノバに入社しました。

レノバでは、太陽光やバイオマス、洋上風力の発電所開発で、数百億円規模の大規模プロジェクトに携わりました。一方で、地域には中堅・中小規模の電源も数多くあります。FIPへの移行によって再エネが市場に統合されていく中で、地域の発電所を活かしながら、電力を求める企業につなぐ役割が必要になると感じました。

私は福岡県北九州市の出身です。九州は出力制御がいち早く本格化した地域で、太陽光発電をめぐる課題が特に根深いと感じています。だからこそ、自分がこの領域で挑戦したいと思い、独立しました。

シードで約5億円を調達、新設開発にも踏み込む

──今回の資金調達について教えてください。

シードラウンドとして、第三者割当増資と金融機関からの借入を合わせて、約5億円を調達しました。

資金は主に、採用と組織体制の強化に充てます。2025年3月時点で2名だった体制は、いまは20名強になりました。2026年度中に35名程度まで増やす計画で、採用を加速させます。

あわせて、太陽光発電所と蓄電池を組み合わせた設備の新規開発にも踏み込みます。現在は既存のメガソーラーに蓄電池を併設する取り組みが中心ですが、今後は、建物の屋根や遊休地などを活用し、ゼロから太陽光発電と蓄電池を組み合わせた設備を開発していく計画です。

開発には、土地の確保や送電網への接続などで先に費用がかかります。それを担う人材と体制づくりにも、今回の資金を活用します。

──既存発電所の支援にとどまらず、新設も手がける理由は何でしょうか。

既存の発電所の収益性を高めても、電源そのものが増えるわけではありません。

国は、2040年度の電源構成に占める再エネの割合を4〜5割程度とする見通しを示しています※4。2024年度は約23%なので、15年足らずで、ほぼ倍にする必要があります。そう考えると、新設の重要性は非常に大きい。

ただし、地域によって状況は異なります。九州では、太陽光を新たに作っても昼間に出力制御され、電気が無駄になるケースがあります。一方、東京電力や中部電力の管内では、電力需要に対して再エネがまだ追いついていない。エリアごとに適地やニーズは違います。

また、太陽光発電所の開発には、1案件あたり億単位の投資が必要になります。私たちがすべてを自社で保有し、資産を抱え込んでいく形は望ましくありません。

今後は、再エネ電力を必要とする企業が、発電所の開発や運用により深く関わる動きが広がると考えています。すでに大手企業の中には、再生可能エネルギーの子会社を設立し、自社で発電所を持ち、自社拠点に電力を供給する動きも出ています。

私たちが発電所を開発し、再エネ電力を必要とする企業と連携して、その電源を活用していく。その後の電力供給や運用も、私たちが継続的に支援する。こうした展開を進めるためにも、自ら発電所をつくる機能は欠かせないと考えています。

※4 第7次エネルギー基本計画(2025年2月閣議決定)による。2024年度の割合(水力を含む)は23.1%(資源エネルギー庁「令和6年度(2024年度)におけるエネルギー需給実績(確報)」)。

地銀や企業と組み、電力を地域で循環させる

──今後3年間で注力することは何でしょうか。

発電所オーナーが蓄電池を導入しやすくなる資金の仕組みづくりと、再エネ電力を使う企業との連携です。

現在の蓄電池併設は、オーナーに数億円を投資していただき、私たちが一緒に推進する形が中心です。今後は、地銀やリース会社と組み、オーナーの資金面の負担を減らしたいと考えています。

同時に、再エネ電力を使う企業側でも、その価値を正しく評価できる体制が整えば、電気の価値はさらに高まります。

金融機関や企業と連携し、地域の中で電力を循環させることで、その価値を最大化していく。まずはこの3年、その仕組みづくりに力を注ぎます。

──中長期の展望を教えてください。

目指しているのは、全国の各地域で、地元の企業がその地域の電力を担っている姿です。まずは九州から、その形をつくっていきます。

現在は、九州の発電所であっても、東京や大阪の事業者が保有しているケースがあります。しかし今後は、手放される太陽光発電所が、地域に根付いた有力企業へ集約されていくと考えています。地方銀行とも連携しながら、発電所の売買(M&A)が進む可能性があります。

地域企業には信用力や実行力があります。一方で、電力事業の知見や、発電所の企画・開発・運用を一貫して担う力を自社で身につけるのは簡単ではありません。そこに私たちが入り、電力事業の企画・開発から運用までを伴走することで、地域の電源を地域の中で活かす仕組みを広げていきたいと考えています。



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