京大発・次世代発電のライノフラックス、莫大バイオマス資源を世界のエネルギーに


再生可能エネルギーの重要性が高まる中、全国に分散する約65万件の低圧太陽光発電所は、運用の改善が行われない"空白地帯"として放置されてきた。そこに正面から切り込むのが、Bluefield Energy株式会社だ。テクノロジーを武器に、アグリゲーション※と、小売電力事業者向けのバックオフィスDXという2つの事業を展開する。
2026年2月、XTech Venturesをリードに、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタル、みずほキャピタルなど金融機関系ベンチャーキャピタル6社を含む第三者割当増資と、三菱UFJ銀行・日本政策金融公庫との融資を合わせ、総額6.6億円のシードラウンドを完了したと発表した。
代表取締役の島田孝文氏に、事業の核心と今後の展望を聞いた。
※アグリゲーション:複数のエネルギーソースと工場設備などの需要側リソースを統合管理し、電力会社と需要家の間で需給調整や取引を行うこと。
──事業について教えてください。
島田氏: 私たちは「エネルギーの制約から人と社会を解き放つ」をミッションに掲げ、2つの事業に取り組んでいます。
1つは、太陽光発電所に特化したアグリゲーション事業「BFアグリ」。特定卸供給事業者(アグリゲーター)として、太陽光発電所などを束ねて運用する事業です。

具体的には、発電所が発電した電気を、日本卸電力取引所(JEPX)に入札・売却し、発電量に応じた手数料を受け取ります。
日本の野立て※太陽光発電所の総容量は60GWあります。1GWは原発1基分の発電容量に相当しますから、相当な規模です。
その中でも、低圧発電所のオーナーである個人投資家や中小企業は、専門的な運用サービスを受けられない場合が多い。売電先がないことで出力抑制を余儀なくされ、収益が下がっているにもかかわらず、どうすればいいかわからない方が非常に多い状況です。収益低迷により、そこに融資をしている金融機関のペインにも繋がっています。
政府もこの問題を認識していて、経産省は2025年度から「適格事業者制度」を新設し、低圧太陽光発電所を一定の事業者に集約して長期運用する仕組みを整えようとしています。2025年に発表されたエネルギー基本計画では、2040年に向けて太陽光の電力に占める割合を現状の約12%から23〜29%に引き上げる目標も示されており、市場としての成長余地はまだ大きい。政策の追い風もあり、私たちはここを主戦場に据えています。
また、最近は大規模なメガソーラーが土地確保の難しさなどから開発しづらくなっていますが、低圧の小型発電所は土地の制約が相対的に小さく、今後も新設が続くとみています。既存の稼働済み発電所に加え、新設分のアグリゲーションニーズも取り込める点は、市場の拡大余地として捉えています。
※野立て: 建物の屋根上ではなく、地面にソーラーパネルを設置している形式のこと

もう1つは「デジタルソリューション事業」。小売電力事業者向けに、請求管理や顧客管理など複雑なバックオフィス業務をDXするシステム「BF Cloud」を開発しています。

小売電力事業者が直面している最大のペインは、コーポレートPPA(企業が再エネ電力を長期契約で調達する仕組み)に関わる請求・精算業務の複雑さです。
例えば大規模な需要家に再エネを供給するケースでは、多数の発電所から電力を集め、その使用量に応じて需要家側の拠点ごとに分配して請求しなければなりません。多店舗展開している事業者であれば、各店舗に分配する作業が発生します。各発電所の発電実績データはCSVで届きますが、そのファイルが数百件と積み上がる。それを毎月Excelやマクロで統合・計算し、経理部や営業担当が多段階でチェックしてようやく請求書を発行できるという状況です。
あるお客様の場合、請求担当が3名で月初2週間、この作業に集中して取り組んでいました。1通の請求書を発行する作業に2〜3時間かかるケースもあります。これをシステムで代替することで、作業時間をほぼゼロに近づけられます。

すでに複数の事業者向けにコーポレートPPAの請求管理システムを開発しており、順次リリース予定です。今後は請求管理だけでなく、PL分析や営業支援機能も追加していきます。さらに、電力事業者の規模やニーズに応じて、AIを活用したBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスの提供も検討しています。BF Cloudとセットで使っていただく場合もあれば、まずBPOから始めて電力事業が成長した段階でシステム導入に移行するという段階的な活用も想定しています。
──創業背景を教えてください。
私は前職のベースフードに3人目の共同創業者として参画し、プロダクト開発責任者として22年11月にIPOを達成しました。次の起業を考えたとき、事業規模が1、2桁違う挑戦をしてみたいと考えていました。上場時のベースフードは売上100億円前後で、時価総額は400億円程度でした。次は「1兆円」の事業規模を作り出すという目標から逆算して領域を選んでいます。
ロシアとウクライナの戦争でエネルギーの供給不安が顕在化した頃から、エネルギー領域での起業を考え始めました。電力は国民の生活基盤でもあり、各国の製造業の競争力にも直結します。AIの電力需要が急拡大するなか、インフラとしての重要性はさらに増しています。それに加え、電力領域には100億〜200億円規模になり得る事業機会が複数存在している。参入チャンスの多さも決め手になりました。
──御社のチームとしての強みは。
私たちは電力業界の業務知識やテクノロジーを組み合わせた専門性が強みです。
共同創業者の野田は、京都大学大学院エネルギー科学研究科修士課程を経て、JR東海で超電導リニアの車両設計を担当した後、自然電力で数百億円規模の太陽光発電所プロジェクトをリードし、London Business SchoolでMBAを取得し、マッキンゼーで戦略構築に携わってきた人物です。
最高財務責任者の林は、大手証券会社や総合商社での経験を持ち、事業会社のグリーンボンドやトランジションボンドの組成にも携わってきました。
今、エネルギー、テクノロジー、そしてファイナンスを兼ね備えたチームで臨んでいます。
──今回の資金調達の背景と目的を教えてください。
背景としては、太陽光発電所オーナーや電力小売会社からの引き合いが強まっており、営業・開発体制の拡大が急務だったことがあります。
調達した資金は、全方面での採用に充当します。
「BFアグリ」サイドでは、営業や運用、金融機関との提携を担う営業・実務人材を採用するほか、エンジニアを迎えて「BF Cloud」の機能も強化していきます。
人材としては、ガッツとコミットメント、実行力のある方を求めています。「高性能なブルドーザー」のような、スピード感を持って物事を自分ごととして推進できる方に、ぜひ参画していただきたいですね。
──投資家は金融機関系VCが多いですね。
そうですね、金融機関との事業連携を意識した株主構成になっています。
金融機関は地域の発電事業者と深い関係を持っています。特に低圧発電所のオーナーは、地域の金融機関から融資を受けて発電所を建設しているケースが多い。そこで、金融機関と私たちがタッグを組み、発電事業者に対して共同で運用改善の提案をしていく営業モデルを構築しています。
株主となった金融機関グループの銀行とも長期運用スキームへの組み込みを進めており、全国各地の地域金融機関との提携拡大が当面の最優先事項です。
──今後の数値目標と意気込みを聞かせてください。
アグリゲーション事業では、2027年度中に運用発電所の取引電力量を現在の40〜50倍、容量で1GWの達成を目指します。これは原発1基分に相当するスケールです。金融機関との連携を活かし、全国の発電所の管理実績を着実に積み上げていきます。
BF Cloudは導入社数の拡大と機能の深化を両輪で進めます。電力小売はまだまだDXが進んでいない領域で、提供できる価値の幅は大きい。将来的にはAIを活用したBPOサービスも展開し、業界全体の業務効率を底上げしていきたいと考えています。
エネルギーの領域が大きな転換を迫られる中で、太陽光電力を含めた「電力システムの最適化」という地球規模の課題に向き合う意義は非常に大きいと考えています。1兆円企業を目指し、これからも邁進していきます。

スタートアップの資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ。
1週間分の資金調達情報を毎週お届けします。
※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします
※配信はいつでも停止できます