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固定利回り型資産運用サービス「Funds(ファンズ)」を運営するファンズ株式会社が、シリーズEラウンドにおいて総額18.3億円の資金調達を実施した。今回の調達には、グローバル・ブレインとSMBC Edgeが共同運営するファンドをリードに、PKSHA TechnologyやアセットマネジメントOne、独立系新興VCのALPHA、香港を拠点とするブティック型投資銀行のQuester Capitalなど複数の投資家が参加。累計調達額は85億円を超えた。
代表取締役CEOの藤田雄一郎氏は、「これは資金調達というより、未来への戦略的コミットメント」と語る。グロース市場の変化を機に、Fundsは単一サービスから事業の多角化に舵を切った。現在では、以下の複数の事業をグループとして展開している。
「Funds Startups」は、2024年に運用を開始したベンチャーデットファンド事業であり、三井住友信託銀行や福岡銀行を含む7行をLPに迎えて設立。SaaSからディープテック領域まで幅広い成長企業にリスクマネーを供給しており、現在は38.5億円規模のファンドを運用中。すでに2号ファンドの組成に向けた準備も進めているという。

「ファンズ不動産」はSNSを活用した不動産仲介事業で、2023年にスタート。設立から2年半で累計取扱高210億円、販売件数380件以上と急成長している。既に単体黒字化を達成しており、Fundsの金融ユーザーと重複する顧客基盤を持つなど、グループ内でのシナジーが大きい。

さらに、アジアを中心とした海外展開も本格化している。台湾ではFintech企業AMFC社に出資し、2026年には子会社化を予定。同社はコンシューマーファイナンスを主力とし、4期連続で黒字を達成。香港では、現地投資銀行Quester Capitalとの合弁会社「FundsQuester」を設立し、成熟企業向けのプロファンドを提供中。シンガポールにはグローバル戦略拠点「FIGC」を構え、地域横断的な金融サービス基盤の構築を進めている。

実際に、Funds単体では114社の企業がサービスを利用し、累計募集額は1000億円を突破。登録ユーザー数は約14万人、1人あたりの平均投資額も200万円に迫る。2023年時点では150万円前後だったため、約2年で約30%の成長を記録している。また、1ファンドあたり10億円の資金を集める力を備えるなど、調達スケールも拡大中だ。
今回の資金調達は、台湾・香港・シンガポールを中心としたアジア事業の推進に加え、Fundsの基盤技術への戦略的投資にも活用される。とりわけ、審査プロセスのAI化が進んでおり、藤田氏は「現在、審査の約7割をAIで自動化できており、特に監査済みの上場企業データとの相性が良い」と語る。これにより、従来数日かかっていた作業が数時間に短縮され、精度と効率の両立が競合優位性の源泉となっている。PKSHA Technologyとの資本業務提携も、こうした技術進化を後押しする一環である。
一方で、資金調達の背景には、M&Aや先行投資に備えた柔軟な資金確保という側面もある。藤田氏は「戦略的M&Aの準備資金、技術人材の確保、上場後も支援を得られる体制づくりを重視した」と語り、事業シナジーを重視して投資家選定にあたったという。グローバル・ブレインはシリーズBから継続出資する既存投資家であり、SMBCグループは今回が初の資本参加。両者との連携を通じて、成長戦略の実行力をさらに高める狙いだ。
IPOを見据えた中長期の資本政策も進行中だ。藤田氏は「具体的なタイミングは非開示だが、着実に準備を進めている」と明かす。また、グループ全体としては6四半期連続で黒字を計上し、2025年度中には従業員数200名体制へと拡張予定。先行投資フェーズから黒字経営フェーズへの移行に向け、デットファイナンスの活用も視野に入れている。
「日本に眠る1000兆円の現預金を、アジアの成長企業へと流す“資金幹線”をつくりたい」と語る藤田氏。Fundsは、国内外の企業と個人投資家をつなぐパイプラインとして、金融を通じた社会変革を目指している。その挑戦は、資産運用の選択肢を広げるにとどまらず、新たな経済循環の中核を担う存在として注目されている。

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