関連記事
ペイトナー、12億円調達 - 請求書自動化サービスの機能拡充へ


個人事業主・フリーランス向けのオンライン型ファクタリングサービスを提供するペイトナー株式会社は、約23億円の資金調達を実施したと発表した。
調達資金は、マーケティング、採用・組織体制の強化、プロダクトの機能拡充、IPO準備に充てる。同社はテレビCMなどを通じた認知拡大に加え、個人事業主向けの与信モデルの高度化にも投資する方針だ。
同社は、個人事業主やフリーランス向けのオンライン型ファクタリングサービス「ペイトナー」を提供している。取引先に発行した入金前の請求書をアップロードすると、取引先に知られることなく、最短即日で報酬を受け取ることができるサービスだ。同社によると、2026年4月時点で累計申込件数は70万件を突破しており、取材時点では80万件を超えたという。

今回の資金調達の背景や、個人事業主向け金融サービスの今後について、代表取締役社長の阪井 優氏に話を聞いた。
「ペイトナー」の利用者について、阪井氏は「建設業に関わる方の利用が最も多い」と話す。建設業は多重下請け構造になっており、実際に報酬が入金されるまでに長い期間がかかることが多い。こうした入金サイクルの長さが、利用の背景にあるという。
建設業以外では、エンジニアやデザイナー、ライターなどの個人事業主・フリーランスの利用が多い。近年は、同じく多層的な下請け構造を持つ運送業でも、個人ドライバーによる利用が増えている。
「運送業も、実際にお金が入ってくるまでに時間がかかりやすい業界です。個人でドライバーをされている方の利用も増えています」と阪井氏は説明する。
同社によると、半数以上の利用者が2回目以降も継続して利用している。一方で、1回のみの利用も少なくない。確定申告や引っ越しなど、一時的に支出が増えるタイミングで利用し、その月を乗り越えた後に利用を終えるケースもあるという。
阪井氏は「法人と違い、個人事業主は事業で使うお金と生活費が密接に連動している方が多い」と指摘する。売上は立っていても、入金まで時間がある。その間の資金繰りを支える手段として、同社のサービスが利用されている。
個人事業主がまとまった資金を必要とした際、従来の選択肢はカードローンやキャッシング、銀行からの借入などに限られやすかったという。
ファクタリングは、売掛債権を売却して早期に資金化する手段だ。特に、利用者とファクタリング事業者の間で契約が完結する2者間ファクタリングは、取引先を介さずに入金を受けられる点が特徴となっている。
同分野では金融機関やフィンテック企業の参入が続くが、その多くは法人や中小企業向けを主軸とする。これに対し、ペイトナーは個人事業主の少額な請求書の先払いに特化してきた。
阪井氏は「新規参入するプレイヤーの多くは法人や中小企業向けのファクタリングを手がけています。当社は、個人事業主の少額な請求書の先払いに特化しており、個人事業主向けの与信を構築してきた点が競争優位につながっていると考えています」と語る。
同社は、銀行口座の入出金データ、仕事に関する発信情報、公共データなど、さまざまなデータをもとに与信モデルを構築してきた。創業初期は人の手で審査を行っていたが、現在はAIを活用した自動審査と審査オペレーターによる目視確認を組み合わせている。
「最初は手探りでした。個人事業主向けの与信を作っている会社がほとんどなかったので、ゼロから作っていく必要がありました。今は自動化できる割合も増え、審査モデルの精度も上がってきています」と阪井氏は振り返る。
こうした個人事業主領域での強みを生かし、同社はクレディセゾンとの連携も開始している。両社の顧客基盤を活用した相互送客などを進める方針だ。
資金使途について、阪井氏は「認知や顧客の獲得が最も重要なフェーズに入っている」と話す。マーケティングやPR、ブランディングに加え、現在一部エリアで実施しているテレビCMを全国へ広げるための資金として活用する方針だ。あわせて、与信モデルを高度化するための研究開発にも投資する。
同社はテレビCMを試験的に放映しており、関西エリアでは認知率が放映前の3倍以上に高まったという。
阪井氏は「Webマーケティングだけでは取り切れない層がいます。請求書を先に資金化できるという概念自体がまだ新しく、個人事業主の中でも知っている方は多くありません。まずは、ペイトナーというサービスがあることを多くの方に知っていただきたい」と語る。
ペイトナーは今後、請求書の先払いにとどまらず、蓄積した与信データを活用した新たな金融サービスの展開も視野に入れる。
具体的には、個人事業主向けのクレジットカードやプリペイドカード、保険といったサービスを検討している。個人事業主の場合、クレジットカードの審査に通りにくいケースもあるため、同社が持つ与信データを活用することで、新たな選択肢を提供できる可能性がある。
保険領域については、保険会社との連携やM&Aも選択肢になり得るという。阪井氏は「保険はライセンス等が必要で、参入障壁が高い領域です。ゼロから始めるよりも、すでにライセンスを持ち事業を行っている会社と組む、あるいは買収するという選択肢はあると思います」と述べる。
阪井氏が個人事業主向けのサービスにこだわる背景には、前職での経験がある。起業前に在籍していたSTORESでは、個人事業主の顧客が多かったという。
「個人事業主の方は、大企業と比べて使えるツールやITリテラシーの面でギャップがあります。法人化しなくても、個人のままでメリットのあるサービスや制度を活用できるようにしたい。それが原点です」と語る。
「日本では個人事業主が労働人口の1割ほどである一方、米国では3割を超えると見ています。個人として挑戦する人が増えることは、日本が豊かになるうえで必要だと考えています。独立する際にお金の心配があるという状況を、少しでも減らすお手伝いができれば。日本で挑戦する人が増える未来を支えていきたいと思います」
今回の調達を機に、ペイトナーは個人事業主向けファクタリングの認知拡大と、与信データを軸にした金融サービスの拡充を進める。個人が資金繰りの不安を抑えながら挑戦できる環境をつくれるか。今後の展開が注目される。
スタートアップの資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ。
1週間分の資金調達情報を毎週お届けします。
※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします
※配信はいつでも停止できます