バイエルのオープンイノベーション戦略──日本発スタートアップと共創する創薬エコシステム

バイエルのオープンイノベーション戦略──日本発スタートアップと共創する創薬エコシステム

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2025年9月3日、バイエル薬品株式会社主催によるラウンドテーブル「日本の創薬の未来を切り拓く、バイエルの“共創”モデル~バイエルのオープンイノベーション『Bayer Co.Lab』~」が開催された。

本イベントでは、ドイツ・バイエル社の医療用医薬品部門 リージョナル事業開発&ライセンシングおよびBayer Co.Lab責任者であるフリードマン・ヤヌス氏をはじめ、京都大学発の創薬スタートアップであるリジェネフロ株式会社 CEO 森中紹文氏、バイエル薬品株式会社 執行役員 事業開発本部長の風間信宏氏が登壇。

講演およびパネルディスカッションを通じて、創薬における共創の重要性や、日本のサイエンスの可能性、そしてグローバル展開を見据えたオープンイノベーションの今と未来が語られた。

世界規模で加速する創薬競争と、共創の必要性

イベント冒頭、ヤヌス氏は「イノベーションは世界中どこででも起こりうる」と語り、オープンイノベーション戦略の重要性について強調した。

Bayer Co.Lab責任者であるフリードマン・ヤヌス氏

2015年から2021年の間に米国で承認された新薬のうち、72%が外部との連携により生まれたというデータを示しながら、「共創(co-creation)や外部とのコラボレーションは、もはや選択肢ではなく必須条件」だと断言した。

さらに、「日本は高水準のアカデミアサイエンス、台頭するスタートアップ、政府による支援体制と、三位一体でイノベーションが起こる土壌が整っている」と述べ、グローバルから見た日本のポテンシャルにも強い期待を寄せた。

グローバル共創プラットフォームとしての進化

ヤヌス氏が責任者を務めるBayer Co.Labは、バイエルが世界4都市(ケンブリッジ[米]、ベルリン、上海、神戸)で展開するライフサイエンス・インキュベーター。拠点ごとに先端的な研究支援環境を整え、スタートアップに対して実験設備・オフィス提供にとどまらないグローバルメンタリングと事業開発支援を提供している。

「単なるラボスペースではなく、バイエルの専門家が伴走し、科学的・事業的なアドバイスを提供する“共創の場”であることが特徴です」とヤヌス氏。

さらに、バイエルが出資するプラットフォーム型企業(例:BlueRock、Vividionなど)を挙げ、「一定の距離感を保った関係性によって、起業家精神や科学者の創造性を失わずに支援できる」と語った。

拠点を超えてスタートアップを支援

こうした物理拠点型のCo.Labの価値を拡張すべく、2025年に新たに始動したのがBayer Co.Lab Connectである。

これは地理的に既存拠点にアクセスできないスタートアップに対しても、メンタリング・投資家紹介・海外展開支援などのリソースを提供するプログラムで、いわば「Co.Labのグローバルネットワークにリモートで接続できる枠組み」だ。

ヤヌス氏は「Bayer Co.Lab Connectは、世界中の革新的なエコシステムとつながることを目指したモデル。日本やスイスのスタートアップが、ボストンやケンブリッジのVC・研究者と直接接点を持つ機会を創出する」と説明。

実際に、京都大学発スタートアップのリジェネフロ株式会社が2025年のConnect選出企業として米・BIO Internationalのイベントで登壇するなど、グローバル展開の足がかりとなっている。

日本代表として選ばれたリジェネフロの挑戦

リジェネフロ株式会社は、京都大学のiPS細胞研究所(CiRA)発のシーズをもとに設立された創薬スタートアップである。

iPS細胞を活用した再生医療・細胞治療や、そこから発見された低分子化合物による創薬を展開しており、特に腎疾患領域にフォーカスしている。

パネルディスカッションの様子

登壇したCEOの森中紹文氏は、「サイエンスの質では海外に劣らないが、社会実装の壁が厚い。だからこそ、製薬企業や行政、アカデミアとの連携が不可欠」と語る。実際に同社は、研究成果を実用化に向けて橋渡しする中で、規制対応や製造スケールの課題、資金調達の壁に直面してきた。

こうした課題を打破する手段として、Co.Lab Connectは大きな意味を持ったという。「世界的製薬企業バイエルのネットワークを活かすことで、グローバル展開や資金調達、規制対応への突破口が開けると感じた」と森中氏は語る。

共創を基軸に、創薬エコシステムの未来をつくる

ヤヌス氏は「日本の科学は深く、質が高く、データの信頼性も世界的に評価されている」と述べたうえで、「こうした強みを、スタートアップや製薬企業とつなぎ、国際的な創薬へと育てていくために、共創の仕組みが不可欠」と強調した。

実際にバイエルでは、京都大学との長年にわたる産学連携や、Co.Lab卒業企業による国際的な資金調達成功事例など、数多くの共創モデルを展開している。

森中氏も、「アカデミアとスタートアップ、製薬企業がそれぞれの強みや役割を理解し合い、スムーズに連携できる環境が整えば、日本の創薬エコシステムは大きく進化する」と強調した。

今後、バイエルはBayer Co.LabおよびBayer Co.Lab Connectを軸に、日本のスタートアップやアカデミアとの連携をさらに強化し、革新的な医薬品をグローバルに届けるための共創を推進していく考えだ。

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