株式会社Finovo

会計データプラットフォーム「Finovo」を運営するFinovoが、シードラウンドにて1.5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。今回の調達先は、ジェネシア・ベンチャーズ。
「Finovo」は企業の経理・財務や経営企画向けのSaaSとして、2023年11月にローンチ。企業内のさまざまな部門から集められたCSVファイルやExcelファイルなどを自動で加工・集計し、会計報告はもちろん、予実管理や原価管理など用途に応じたフォーマットで出力できる。
従来、会計システム外のデータを取り込む際は、会計担当部門の担当者がExcelの関数などを使ってデータのつなぎ込みを行っていたが、Finovoは「手元データをそのままアップロードするだけ」で集計できる手軽さが特徴。大企業からスタートアップまでさまざまな規模の企業を対象に導入先を広げている。
代表取締役の久田 隆大氏に、Finovoの開発背景や導入状況、今後の事業展開について詳しく話を伺った。
柔軟性にこだわったサービス設計で、現場負担を軽減
――Finovoの開発に至った背景は。
久田氏:「日本は管理会計の導入が遅れている」とよく言われますが、これがまさに日本企業の競争力を弱めている現実を、私自身が目の当たりにしてきた経験がベースにあります。
私は前職、イギリスの証券会社の投資銀行部門におり、M&Aのアドバイザリー業務を通じて多くの日本企業の経理財務部や経営企画部の方々と関わってきました。皆さん、「決算に合わせて社内のさまざまな現場部門からデータをかき集め、集計することに忙殺され、集計したデータを分析するための時間まで捻出できない」という悩みを抱えていて、優秀な方々が本来の力を存分に発揮できない環境に置かれています。結果として、優れた製品やサービスを販売しているにも関わらず、会社組織として全体最適が図れていないために、企業価値が低くなってしまうケースが多いのです。
会計データの集計そのものは、使用するExcel関数で言うと5~10種類に集約され、どんな規模や業種の会社であっても共通項の大きい作業です。ただ問題は、集計作業ができる状態に持っていくまでに膨大な手間がかかることにあります。販売管理システムや原価管理システムから吐き出したデータは容量が重すぎ、そのままマクロを組んでも動かしづらいため、まずは必要部分のみを切り出す作業が発生します。さらには、必要データがシステム上ではなく、各組織で管理するExcelなどにある場合も多く、それらを一つひとつ取り寄せ、つなぎ合わせなくてはなりません。
そのうえ、締め日前後に数値に変更が発生して元ファイルが差し替えられたり、そもそも必要データを社内のどの部門が持っているのか探さなくてはならなかったり……決算のタイミングごとにこうした対応に追われるため、法律上必要な財務会計の報告だけで手いっぱい、管理会計に割けるリソースはない、という事態に陥りがちです。
――Finovoの導入で、そうした集計作業がどう変わるのでしょうか。
各種システムから吐き出されたままの大容量データ、各部門や子会社から集められたフォーマットにバラつきのあるExcelなど、すべての元ファイルを加工することなく、そのままFinovoにアップロードするだけで、自動集計できるようになります。財務管理部門や経営企画部門の担当者を単純作業から解放し、より戦略的なステップに注力できる環境をつくるために開発したSaaSだけに、「Finovoに入れるため」の作業を発生させないよう、加工対応の柔軟性にはこだわっています。
集計したデータは用途に応じ、さまざまなフォーマットで出力できるほか、今年3月からはAIによる自動分析の機能も順次リリースします。例えば、製品別、製造拠点別、販路別に利益率を比較し、特異的に低いポイントを抽出するだけでなく、原因分析の参考になるデータをそろえるため、AIが自動で明細を見に行き、ユーザーに報告する機能などを予定しています。
会計士中心に採用強化し、「プロフェッショナルサービス」を展開
――ユーザーからの反響は。
導入先は帝人のような大企業からスタートアップまで幅広く、これまで解約が発生していないほか、契約したまま活用がストップしているケースもありません。会計担当部門で使い勝手のよさを実感いただいた後、現場部門でもFinovoを使い始めてくださった例もあります。例えば営業部門で「販売管理システム内のデータだけでなく、配送関連データや会計システム内のデータも組み合わせて現状分析したい」といったニーズがある場合、既存のBIツールで対応しようとすると高度なスキルが必要になるところ、Finovoなら簡単に対応できるためです。

導入先によって取り込むデータの容量に幅があることから、利用料はアカウント料と使用できるデータ量の2軸で設定。MRRは毎月平均して19%近く成長しています。導入社数は、2026年中に200社規模を目指します。
――今回調達した資金の使途は。
Finovoの追加開発と人材採用の2点です。採用に関しては、今回の資金調達発表と併せ、新たにスタートする「プロフェッショナルサービス」を支えるメンバーとして、公認会計士もしくは財務管理や経営企画部門の経験者を増やす計画です。
管理会計を導入し、機能させていくためには、①現場部門の協力を得て、必要データの吸い上げを可能にするため、業務プロセスの見直しを行う、②吸い上げたデータを集計・分析し、企業価値向上に向けて対処すべき課題を洗い出す、③分析結果に基づき、現場のオペレーションを改善する、という3つのステップが必要です。このうち、②はSaaSでサポートできますが、①と③に関しては人の力が欠かせないと考え、プロフェッショナルサービスの立ち上げを決めました。当社メンバーがお客様の現場に深く入り込み、関係者間の合意形成から個々の事情に即したオペレーション改善の進め方まできめ細かくサポートします。
経理・財務・経営企画部門と言うと、日本国内では現状、コストセンターのイメージが強いですが、本来はデータ分析の力で企業の戦略的な意思決定を支え、利益を創出する組織になれる力を秘めています。そして、この「ファイナンス・トランスフォーメーション」は、日本企業が国際競争力を高めていくための鍵でもあると私たちは信じています。共感いただける方はぜひお声がけください。一緒にファイナンス・トランスフォーメーションを後押ししましょう。
掲載企業
Startup Spotlight

Supported by
スタートアップスカウト
「スタートアップスカウト」は、ストックオプション付与を想定したハイクラス人材特化の転職支援サービスです。スタートアップ業界に精通した当社エージェントのほか、ストックオプションに詳しい公認会計士やアナリストが伴走します。