HEARTBEATS、「電子トレカ®」で26団体と協業──デジタルとリアルを融合したファン体験創出へ

HEARTBEATS、「電子トレカ®」で26団体と協業──デジタルとリアルを融合したファン体験創出へ

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スポーツやエンターテインメントの世界で、ファンが「推し」への思いを形にする手段は、グッズやチケットにとどまらない。デジタル上でも自分の応援を表現・発信し、他のファンとつながりたいというニーズが広がっている。一方でスポーツチームやエンターテインメント事業者にとって、試合やライブがない期間にもファンとの接点を維持し、継続的な体験を提供することは重要なテーマの一つだ。

この領域でファンビジネスに特化するのが、株式会社HEARTBEATSだ。主力は、自社開発のファンエンゲージメントサービス「ORICAL®(オリカル)」を基盤とした、電子トレーディングカード(以下、電子トレカ®)のコレクションサービスである。

ORICAL®サービスイメージ(画像:同社ウェブサイトより)
ORICAL®サービスイメージ(画像:同社ウェブサイトより)

ORICAL®の特徴は、共通プラットフォームにファンを集めるのではなく、コンテンツホルダーごとに公式サービスを個別に構築する点にある。埼玉西武ライオンズの「L COLLECTION」、千葉ロッテマリーンズの「MARINES COLLECTION」、阪神タイガースの「タイガースコレクション」、netkeibaの「ウマトレカ」など、団体ごとに固有の名称とデザインで展開している。

導入先はプロ野球に加え、日本相撲協会、Hello! Project、日本バドミントン協会などへ広がり、2026年9月時点で26の団体と協業している。

カードはサービスや企画に合わせて新たに撮影した写真に加え、音声やモーションを付けたものも並ぶ。ユーザーはガチャや限定配布でカードを集め、トレードやランキングを通じて他のファンとつながる。試合観戦やグッズ購入、SNSでの応援といった行動に応じて限定トレカを付与する仕組みもある。2026年3月に始まったタイガースコレクションでは、選手の活躍をリアルタイムに予想する「試合連動機能」や、BGM・エフェクト付きの「動くトレカ」を搭載した。

2026年1月1日、ventusからHEARTBEATSへ社名を変更。「世界を鳴らす心臓であれ。」をフィロソフィーに掲げ、海外展開も進めている。2026年3月には韓国プロ野球(KBO)のkt wiz、7月にはSSG Landersの公式電子トレカ®コレクションサービスを、それぞれ韓国現地で開始した。

事業の現在地や今後の展望などについて、代表取締役社長の梅澤優太氏に話を聞いた。

「主役はファンとコンテンツホルダー」だからこその選択

──御社の取り組む事業について教えてください。

梅澤氏:スポーツとエンターテインメントの領域で、ファンの皆様に新しい体験を届ける事業を展開しています。中心にあるのが、電子トレカ®、デジタルのトレーディングカードです。

現在は26の団体と一緒に事業を作っています。プロ野球チームもあれば、アイドルグループもあります。さまざまなスポーツ団体ともご一緒しています。

──創業から振り返って、最も重要だった意思決定を教えてください。

2017年に創業し、電子トレカ®事業を展開する中で、2019年に大きな意思決定がありました。同じ電子トレカ®のプロダクトでありますが、ビジネスモデルを大きく変えたのです。さまざまな団体がサービスを展開するプラットフォーム型から、パートナー一社一社に寄り添って個別にサービスを作る形へ変えたのです。今振り返ると、あれが本当に大きな意思決定でした。

ファンの皆様にとって何がベストかを考えた結果です。プラットフォームの上でいろいろなものが買える形よりも、自分が応援している団体が前に出る形のほうが愛着を持てるのではないかと考えました。

その結果、私たちHEARTBEATSが前に出るのではなく、コンテンツホルダーごとに公式サービスをつくる形へと変えていきました。

各団体で蓄積したデータと知見を、新たなファン体験に活かす

──貴社の一番の強みは、どこにあるとご覧になっていますか。

各団体、そしてその先にいるファンのニーズに応えられる体制です。そこを支えるオペレーション力も含めて、現時点での大きな強みだと考えています。

ファンに対する解像度を上げるためのさまざまな取り組みを継続してきました。SNSを活用したり、現場に足を運んだりして、ファンの声を集めています。私たち以上にファンと多くの接点を持っている、球団や団体の皆様に、直接話を伺うことはかなり意識していますね。

ファンの期待やニーズに応えるには解像度が必要です。一方で、俯瞰して見る視点も必要です。両方が必要で、バランスがとても重要だと考えています。

もう一つの特徴は、自社サービスだけで完結させない点です。球団であればチケットやグッズ、ファンクラブといった顧客データと連動させながら、ファンのニーズを予測し、仮説を持ちながら進めています。各導入先に担当者を配置し、一緒に事業を作るイメージで密に連携しています。

──顧客データやノウハウが蓄積してきて、新しい取り組みにもつながりそうですね。

そうですね。電子トレカ®のサービスでは、新しい機能や企画を常に打ち出す必要があります。その際、各団体の過去データに加えて、他の団体で得た経験やノウハウを抽象化して持っている点が私たちの強みです。

例えば、「ファンがどう行動するか」という知見です。野球でいえば、球場に来られる方と来られない方がいます。その行動と、私たちのデジタル上での行動データをどう掛け合わせ、どんな示唆を得るか。そのように、いろいろと検証を重ねています。

最近は新規事業として、デジタルだけではなくリアルな領域にも手を広げ始めました。これもゼロベースではなく、これまでの積み上げの上に成り立っています。プロ野球やエンターテイメント領域で得たナレッジが、成長のエンジンになっていると思います。

韓国プロ野球を皮切りに、海外展開進める

──海外展開の第一歩として、韓国プロ野球を選んだ背景を教えてください。

理由はいくつかあります。まず、市場として、韓国プロ野球は観客動員数を更新し続け、市場が非常に大きくなっていること。私たちが日本で最も実績を持ち、得意とするのもプロ野球なので、その知見を活かすことができます。

加えて、韓国と日本のプロ野球関係者との縁もありました。社内にも、韓国語や韓国野球に強いメンバーが、縁があって加わっていた。そうした要素が重なった結果です。

──韓国展開では、現地のファン理解をどのように深めていくのでしょうか。 

少なくとも私たちが把握している範囲では、選手の電子トレカ®を集める文化は韓国ではまだ一般的ではないという認識でした。

だからこそ、現地に足を運んで一次情報を得ることを重視しています。一般的な市場調査だけでは見えない部分も多い。日本でやってきたことをベースにしつつ、それにとらわれず、 現地のファンにとって何がベストかを見出していく必要があります。発信される声だけでなく、実際に目で見たものやデータも合わせて、解像度を上げる必要があります。

デジタルとリアルのファン体験を一気通貫でつなぐ

──中長期の事業展開の方針を教えてください。

既存事業を、引き続き成長させていきたいと考えています。コンテンツホルダーの皆さんとともに、ファンの皆様に楽しんでいただけるものを作り続けます。

そのうえで方向性は二つあります。一つはリアルな領域です。デジタルとリアルの垣根は、今後なくなっていくのではないかと考えています。リアルでも同じような体験ができ、自分がどんなファンなのかを表現できる。そういうものを作りたいですね。

わかりやすいのはグッズです。グッズ販売にもさまざまな工程があります。企画・製作・製造から、販売するECサイトの構築、ショップの運営まで、一言でグッズ販売といってもさまざまな領域に分けることができます。 

どの工程を私たちが担うかはこれから見極めていく段階ですが、これまで蓄積してきたファンの行動データや仮説の立て方もグッズ領域で活かしていければと考えています。

そして、もう一つは基盤の領域です。球団や団体が、ファンのエンゲージメントをどう高めるか。会員基盤のような部分では、まだ改善の余地があると見ています。

図:同社ウェブサイトより
図:同社ウェブサイトより

プロ野球でもアーティストでも、コンテンツとファンが接する接点は数多くあります。最終的には、そうした接点をトータルで、一気通貫でより良いものにしていけるようなモデルを目指しています。その中で、ファンが自分の「好き」や「応援」をもっと自由に、もっと楽しく表現できる体験をつくっていければと思っています。

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