新NISA始動、人生100年時代の資産形成を支えるウェルステック

新NISA始動、人生100年時代の資産形成を支えるウェルステック

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高 実那美


本記事は、株式会社ケップルのアナリストが作成したレポート「【独自調査】資産形成を後押しするウェルステック140社」の内容を基に、ウェルステック領域について触れる。当レポートで解説されている8のカテゴリーからロボアドバイザー、資産管理、年金の3つのカテゴリーを抜粋している。

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Index

  • 新NISA開始で注目されるウェルステック
  • 世界のウェルステック市場
  • 日本のウェルステック市場
  • ロボアドバイザー
  • 資産管理
  • 年金
  • おわりに

新NISA開始で注目されるウェルステック

日本では長年、資産形成の手段として貯金が一般的だった。現在、政府は個人資産の構造変化を促すため、「貯蓄から投資へ」の改革を進めている。その中心的な制度として2024年1月より新NISAが始動した。

人生100年時代を迎え、個人が保有する資産を適切に総合管理するサービスであるウェルスマネジメントを実現する企業に注目が集まっている。ウェルスマネジメントは、個人の資産を適切に管理し、将来の不安を軽減することを目的としている。近年、テクノロジーを活用したウェルステックが台頭し、中間層や若年層の需要が高まっている。

世界のウェルステック市場

ウェルステックの世界市場規模は、2023年に54.2億米ドルと評価され、2033年には261億米ドルに達すると予想されている※1。高成長の要因は、AIなどの最新技術の台頭や、パーソナライズサービスの需要増加、投資スタンスの変化などが挙げられる。

米国では、ベビーブーマー世代からミレニアル世代への資産相続が進み、ミレニアル世代は米国史上最も裕福な世代になると言われている。彼らは幼少期にIT革命を経験した世代であり、テクノロジーを使った金融情報をより重視し、ESG投資にも関心を持つ傾向にあると言われている。また、アジア太平洋地域では個人資産が増加し、富裕層だけでなく、Affluent層((10万-100万米ドルの金融資産を保有する富裕層))もウェルスマネジメントサービスを利用する需要が増えている。これにより、ウェルステック市場の拡大が見込まれる。

日本のウェルステック市場

日本では、2023年6月末時点の家計金融資産は2115兆円であり、このうちの現金・貯金が52.8%を占める。株式・投信はわずか17.4%である。一方、米国では現金・貯金が12.2%、株式・投資信託が52.4%※2で、日本の投資姿勢は積極的とは言えない。

これまで日本で投資が浸透してこなかった背景には、年金制度や終身雇用による退職金制度など老後の資産形成が守られていたことや、バブル崩壊やリーマンショックによる投資に対するマイナスイメージ、金融教育が行われていないなどいくつかの要因が挙げられる。しかしながら少子高齢化の影響により、若い世代の将来の年金に対する不安なども存在している。この他にも、物価上昇により、収入に対する支出の割合が増え、貯蓄に回すお金を確保して将来の生活を安定させるのは難しい状況となっている。

ロボアドバイザー

ロボアドバイザーカテゴリーには、国内企業5社、海外企業4社を分類している。
ロボアドバイザー
ロボアドバイザーとは、アルゴリズムを用いて、利用者に応じた資産配分の提案や投資、運用を自動で行うサービスを指す。最適な資産配分について助言のみを行う「アドバイス型」と、買い付けから運用、リバランスまですべて自動で行う「投資一任型」の2種類がある。これまで人間が行ってきた資産運用に関する情報収集や分析、意思決定を代行し、投資初心者でも簡単に資産運用ができる仕組みが注目されている。

ロボアドバイザーの世界市場規模は2022年に68.8億米ドルとされ、今後はCAGR44.1%で推移し、2030年には615.1億米ドルに達すると予想されている※3。手数料を抑え、手間が少なく、高精度な意思決定を行うことができ、ミレニアル世代やZ世代など若年層が広く利用する。日本では退職金の減少や年金制度の不安から、資産運用への関心が高まる一方で、金融教育の不足から知識不足を感じる人も多く、その課題解決としてロボアドバイザーへの注目が集まっている。

資産管理

資産管理カテゴリーには、国内企業5社、海外企業12社を分類している。

これまで個人にとって煩雑でわかりにくかった投資の仕組みを効率化するツールを運営する企業を挙げている。例えば、ブルーモ証券が運営するのは、米国株・ETF(上場投資信託)にスマホアプリで投資することができるツールだ。国内ではグローバルな投資へのハードルが高いと感じる人も多い中、他の投資家のポートフォリオを参考にして長期的な運用を行う仕組みを構築している。

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海外企業では、各国の税制上の仕組みに対応した投資を支援する企業を挙げている。NISAのモデルとなった英国のISA(税制優遇措置が受けられる個人貯蓄口座)の運用を効率化する英国発のMoneyFarmやFreetradeや、米国、豪、ニュージーランドマーケットの投資管理ツールを運営するのSharesiesや、インド株への投資を行うGrowwなどを掲載している。

また手元資金の少ない人でも投資をはじめることができる手段として、少額投資ツールも支持を集めている。手元資金がなくても投資を習慣化でき、少額でも定期的に投資することで、将来的にまとまった金額になるといったメリットがある。

他にも、2022年度の国内ポイントサービスの市場規模は2.5兆円に拡大し※4、クレジットカードやショッピングで貯まったポイントを資産運用に活用するサービスも誕生。また、アンケートや歩数計アプリとの連携でもポイントを貯めることができ、投資初心者向けの手軽なサービスも注目されている。投資をしない理由として「元手となる資金がない」と回答する人が42.8%という調査結果もあり※5、ポイントの活用は、資産運用をはじめるハードルを下げるうえで有効な仕組みと言える。

年金

年金カテゴリーには、国内企業2社、海外企業7社を分類している。

公的年金制度は、先進国を中心に少子高齢化や政府債務の増加により運用が難しくなっており、新たな働き方に対応した制度が必要とされ、世界的に大規模な改革が求められている。公的年金に頼るだけでは、退職後の人生を豊かなものとすることは難しく、個人個人が老後資金の形成を検討する必要がある。

海外では、個人が年金を効率的に把握・運用するサービスが誕生しており、特に英国で多くの企業が存在している。例えば、英国発国発のPenfoldの公的年金と個人年金や貯蓄などを一か所にまとめて管理し、退職後の資産形成に役立てるサービスや年金のデジタル化を推進し、アプリで効率的に管理できる仕組みを構築している上場企業のPensionbeeなどが挙げられる。国内では、未来貯金が確定拠出年金の運用支援サービス「みらいナビ」の運営を行っている。この他には、福祉医療業界向け確定給付企業年金を運営するベター・プレイスを挙げている。

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おわりに

ウェルステックの進化により、投資の小口化やデジタル化を背景に個人の資産形成が容易になり、選択肢が増えた。個々のライフステージや資産形成の目的に合わせたパーソナル化が進むと考えられる。

日本では2024年から新NISAが始まり、これまで資産形成を貯金のみで行っていた個人の資産形成への意識が高まり、ウェルステックの市場の成長が期待される。また、世界の市場に目を向けると、新興国では中間層の所得が増加し、それに伴いウェルステックが資産形成に関するサービスを提供し、選択肢が増え、これからますます多様化すると考えられる。

金融教育が遅れていると言われる日本でも、個々が自分の資産形成の状況や目標を理解し、リスクとリターンを考慮して自分にあった選択をすることが重要だ。そのためにも、ウェルステックを提供するスタートアップには、自分たちが提供するサービスについて正確に理解してもらうための啓蒙活動が市場を拡大する鍵になってくるだろう。

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※1 Future Market Insights 「Global WealthTech Solutions Industry Overview (2023-2033)
※2 東証マネ部! 「日米の家計金融資産を比べて見ると・・・
※3 The Insight Partners 「Robo-Advisory Market Growth Report, Share Analysis & Trends-2030
※4 矢野経済研究所「ポイントサービス市場に関する調査を実施(2023年)
※5 PR TIMES「全国20〜40代男女、投資経験は半々 投資する理由 1

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新卒で全日本空輸株式会社に入社し、主にマーケティング&セールスや国際線の収入策定に従事。INSEADにてMBA取得後、シンガポールのコンサルティング会社にて、航空業界を対象に戦略策定やデューディリジェンスを行ったのち、2023年ケップルに参画。主に海外スタートアップと日本企業の提携促進や新規事業立ち上げに携わるほか、KEPPLEメディアやKEPPLEDBへの独自コンテンツの企画、発信も行う。

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