福祉医療向け企業年金、将来に希望を持てる社会へ

福祉医療向け企業年金、将来に希望を持てる社会へ

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KEPPLE編集部


福祉医療業界を中心とした企業年金制度の導入・設計をサポートする株式会社ベター・プレイスがシリーズBラウンドにて、第三者割当増資による3.8億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドでの引受先は、東大IPC、PARAMOUNT BED Healthcare Fund、15th Rock、みずほキャピタル、ちゅうぎんキャピタルパートナーズ、大分ベンチャーキャピタル、ほくほくキャピタル、紀陽キャピタルマネジメント、四銀地域経済研究所とその他個人投資家。

今回の資金調達により地方銀行との連携を強化し、福祉医療業界のための年金基金制度「福祉はぐぐみ企業年金基金(以下:(はぐくみ基金)」の普及を全国に拡大し、企業年金のオンライン導入手続きがオンラインで完結する体制構築化を目指す。

社会を支える人々のための新しい企業年金制度

「はぐくみ基金」は、保育や介護などの福祉医療業界向けに2018年に設立された確定給付企業年金基金だ。基金設立後わずか5年間で、1,476件の事業所、46,458人(2023年8月時点)が加入している。

DBと企業型DCの比較
事業主は元手なしで退職金制度を構築し、経営者や役員も加入可能だ。退職年金制度を充実させることで、従業員の将来への経済的な不安を軽減し、人手不足が深刻化する福祉医療業界の離職率低下に貢献する。

また、原則60歳以上にならなければ受け取りができない企業型DCやiDeCoと比較して、退職時や休職時でも受け取り可能な点が特徴だ。

今後は「はぐくみ基金」の加入者増加に加え、リテラシーに関わらずすべての人々が金融サービスを利用できるよう、金融包摂事業も推進していく。

今回の資金調達に際して、代表取締役社長 森本 新士氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。

※金融包摂(Financial Inclusion):経済的に不安定な状況にある人々が金融サービスを利用できるようにする取り組み。銀行口座を持たない個人への預金・送金機会の提供や融資などが含まれる。

医療・福祉業界で働く方の未来への備え

―― 医療・福祉人材が抱える課題について教えてください。

森本氏:今後、生産年齢人口が減少していく中で、福祉医療業界は需要が高まる一方、給与水準は高くありません。業務も対人援助職と言われる感情労働も多い仕事で、身体的にもきついため、長期で働くことが難しい現実があります。

福祉人材の平均勤続年数
将来への不安を感じていながら、資産形成に関するリテラシーも不足していることが多く、自身で証券口座を開いて投資を行う人も少ないです。多忙な日々に追われ、自分で資産形成について勉強する余裕もない場合もあるでしょう。

―― 「はぐくみ基金」に加入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?

企業型DCと異なり、基金が資産の管理や運用を行うため、加入して積立を開始するだけで、投資への知識がなくとも税金や社会保険料の軽減効果を享受しながら運用することができます。

はぐくみ基金の特徴
また、受け取り可能なタイミングの多様さも特徴です。基金加入者の多くが女性でライフイベントも多いですが、育児・介護休業時にも積立金を受け取ることができます。預貯金と比較して得られる利息も多く、将来の資産形成の一助になることで、安心して長く労働を続けることにつながると考えています。

スタートアップスカウト

―― 創業のきっかけを教えてください。

大学卒業後に保険業界での勤務を経て、ベター・プレイスとは別の独立系の運用会社を設立しました。お金に余裕がない人のための資産形成として、月々1000円から積立可能な投資信託を作りましたが、資金や広告宣伝のノウハウなどの不足もあり、3年ほどで自分が設立した会社を離れることになりました。

BtoCビジネスの難しさを実感し、まずは企業へのメリットを提供しつつ、中小企業従業員の資産形成を支援するBtoBtoCの方向へ転換し、2011年にベター・プレイスを設立しました。

―― 「はぐくみ基金」はどのようなきっかけから設立に至ったのでしょうか?

ベター・プレイス設立当初は、DC(企業型確定拠出年金)に関するコンサルティング業務を行っており、主に大手のクライアント向けに退職金の制度設計などを支援していました。そのため、全国でDCの仕組みや投資教育に関する説明会を行ってきました。

多くの方々は説明を熱心に聞いていただけますが、DCでは自分で運用商品を選択する必要があり、ある一定の金融リテラシーが求められるため、なかには、関心を持っていただけないことも少なくありませんでした。魅力的な制度であるDCが、必ずしもすべての層に適しているわけではないことを痛感した経験が、「はぐくみ基金」の設立につながっています。

また、社会福祉法人で働く人には、退職共済という退職金制度があり、国や地方公共団体から掛金補助が行われていましたが、財政難により介護と障がい分野で補助が廃止になってしまいました。保育分野においても廃止が現実味を帯びてくる中、保育業界のクライアントから相談を受け、福祉医療業界にマッチするような制度として「はぐくみ基金」を設立しました。

設立から順調に加入者数は増えています。ありがたいことに、初期に加入いただいた法人が「はぐくみ基金」に大変好意的で、保育や介護団体の会合への説明機会を多数設けていただきました。全国で「はぐくみ基金」の説明を行った結果、保育や介護などの福祉法人だけではなく、中小企業にも広がり、設立した2018年から2019年にかけて一気に加入者が増加しました。

経済的な不安なく自分らしく働ける環境を

―― 資金調達の背景や使途について教えてください。

地方銀行との連携強化による全国への普及拡大を主な目的として、今回の資金調達を行いました。

「はぐくみ基金」のお客様の内、97%は従業員が300名未満の中小企業です。企業年金は無理なく効率的に資産形成ができるパワフルな手段であるにも関わらず、企業年金制度を備えていない企業に勤務するなど、この制度の恩恵を受けられない人は全国で約2300万人もおり、とりわけ中小企業勤務の方に多い傾向にあります。こうした中小企業の顧客を多く抱える地方銀行と提携することで、「はぐくみ基金」の加入者を増やしていきます。

さらに、貧困や差別などによって金融サービスから取り残され、経済的に不安定な状況にある人々が、基本的な金融サービスへアクセスできるよう支援する「金融包摂事業」の推進にも取り組みます。具体的には中小企業向けの職域ローンや保険の見直し、NISAを活用した長期の資産形成など、多岐にわたるサービスを展開していきます。

また、企業年金の導入は、給与規程の改定なども含まれるため非常に複雑で、制度設計に数か月要することも珍しくありません。手続きをオンラインで完結する体制を構築することで、導入までの期間を短縮するようなシステム開発にも注力していく予定です。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

数年後にはIPOを予定しており、それまでには現在約4万7000人いる加入者数を20万人に増やすことを目標にしています。実現のために、金融機関との提携に加え、同時にデジタルマーケティングを強化して積極的に顧客を獲得していきます。

企業年金の制度の恩恵を受けることができていない約2300万人に向けたサポートに加え、海外事業の比率も高めながら、10年後には最低でも100億円規模の売上を目指しています。現在は金融事業を中心に展開していますが、人々がお金の心配なく、自分らしく働くことができるよう、常に必要なサービスを提供していきたいと思います。


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