AndGAMER株式会社

Apex国内プロの85%が使用、圧倒的支持を得るゲーミング“カスタムコントローラー”の成長戦略


ゲーミングデバイスの企画・販売を手がけるAndGAMER株式会社は、プレシリーズAラウンドで総額2億円の資金調達を実施したことを発表した。
本ラウンドにはリード投資家としてセレスが参加。D4VとNOBUNAGAキャピタルビレッジ、ロッテベンチャーズ・ジャパンに加え、元Anker日本法人代表の井戸 義経氏も参画している。
同社が開発・販売するのはボタン追加などを施したゲーム用途のカスタムコントローラー。操作性の高さから、プレイスキルを追い求める競技志向のゲームプレイヤーが手に取っている。
AndGAMERの設立は2020年。3つのカスタムコントローラーブランドを展開している。主力ブランド「Void Gaming」のコントローラーは、人気FPSゲーム「Apex Legends」をプレイする国内プロ選手の85%以上が使用しているという。他にも、PC周辺機器を扱う「AIM1」や、任天堂向けカスタムコントローラーを展開する「VIZARD CLUB」がある。
今回の資金調達に際して、代表取締役CEOの上森翼氏とCOOの石井拓人氏に事業や今後の展望について話を聞いた。
プロゲーマーの85%が愛用、Void Gamingの強みとは
―― 主力ブランドの「Void Gaming」について教えてください。
上森氏:「Void Gaming」は、弊社が展開するカスタムコントローラーのブランドです。既存のゲームコントローラーと比べて、スティックの操作性を高めたり、背面ボタンを追加したりと、自分のプレイスタイルに合わせたカスタマイズができるのが特徴になっています。
コントローラーは受注生産に近い形式で提供しており、お客様の要望に応じてボタンの位置やデザインを調整できるほか、人気のオプションを搭載した即納モデルも用意しています。販売は自社のオンラインショップが中心で、オンラインならではの手軽さと、豊富なカスタマイズオプションでユーザーのニーズに応えてきました。
ありがたいことに、Void Gamingはプロゲーマーにも多く使っていただいていて、世界的に人気なFPSゲーム「Apex Legends」では、日本のプロのうち約85%がVoid Gamingの製品を使ってくれています。
―― 多くのプロゲーマーの支持を得ているポイントは。
石井氏:たとえば、純正のコントローラーではボタンを「押し込む」必要があるところを、Void Gamingのコントローラーだと、マウスクリックみたいに「カチッ」と即反応します。
また、純正品にはない背面ボタンを追加して、操作の幅を広げることもできるんです。「もう純正品には戻れない」と言ってくださるユーザーさんも本当に多くいらっしゃいます。
FPSのシューティングゲームのように、「コンマ何秒を削れるか」という世界で戦ってるプレイヤーにとって、その違いは勝敗に直結するんですよね。だからこそ、プロだけじゃなくて「もっと上手くなりたい」と思っている一般のゲーマーにも選ばれているんだと思います。

上森氏:Void Gamingは3万円近くする製品もあり、純正コントローラーと比べると高価なものもありますが、それでも、国内でトップのシェアを誇っています。品質へのこだわりが多くのユーザーに支持されているのだと思いますね。
市場の拡大とIPコラボが生む新たな可能性
ーーストリーマーや人気IPとのコラボコントローラーも多数販売しています。
石井氏:売り方にも特徴があり、より多様な層にリーチするためにIPコラボに力を入れています。IPとコラボすることで、ある種のファングッズとして手に取ってくれる方も多いのです。
こうしたコラボは、ゲーマー層に加え、コンテンツファン層にも支持されています。IPコラボ製品は海外でも人気を集めており、海外売上は全体の10%を占めるまでに成長しました。さらに、いくつかの海外代理店との取引も進行中です。強力なIPを持つ日本の企業だからこそ取れる戦略です。

“ゲーム好き”が起業のきっかけに、投資家をも惹きつけた創業秘話
―― 創業のきっかけを教えてください。
上森氏:私自身、小学生の頃からFPSゲームに夢中でした。より良いプレイを目指す中で「カスタムコントローラー」という存在を知ったんです。当時国内では入手が難しくて。海外製のカスタムコントローラーを個人輸入して使用していました。
実際に使ってみると、純正コントローラーとはまったく違う、初めての操作感でした。軽くて疲れにくい。性能も段違いで、とても感動したのを覚えています。それ以来、長く海外製のコントローラーを使い続けていました。
しかし、PlayStation 5が発売された際、それまで愛用していた海外製のコントローラーが互換性の問題で使えなくなってしまったんです。当時、市場にはまだ最新のカスタムコントローラーが出回っていなかったため、試行錯誤の末に手作りのカスタムコントローラーを完成させたのが、事業のはじまりでした。
自作コントローラーは我ながら使いやすかったですし、これを販売したら喜んでくれる人も多いだろうなと思って。そこでVoid Gamingを作り、2020年に販売を開始しました。コロナのタイミングでeスポーツが浸透してカスタムコントローラーを手に取る人が増え、2021年には売上が1億円を超えました。
―― 石井さんは以前、スタートアップ投資に携わっていました。
石井氏:以前はインキュベイトファンド(IF)で投資業務に携わっていました。その頃に注目していたのがeスポーツの市場です。そんなときに偶然AndGAMERを知って、上森にすぐSNSでメッセージを送って知り合いました。
結局はIFから出資しているLink Capital(IF出身の青野 佑樹氏が設立)から投資することになったのですが、同社のビジネスの状況は継続して聞いていました。1年ほど関わる中で、上森から「ビジネスを加速させたい、ビジネスサイドを任せられるCOOがほしい」と相談を受けた際に、「だったらやります」と申し出てジョインすることになりました。
ハードウェアはソフトウェアと違って言語の壁が少なく、グローバルで勝負しやすい。良いプロダクトを作れば、ちゃんと評価されて売れていく。そんな確信がありました。
国内トップシェアの次は、世界。AndGAMERが描く未来
―― 資金調達の背景や使途について教えてください。
上森氏:今回の調達資金は、人材採用、マーケティング、新ブランドの立ち上げに活用します。具体的には、音ゲーや音響系のユーザーに向けた新たなブランドの構想が進行中で、操作性だけでなく“見た目にもこだわりたい”という層にも刺さるような、プロっぽさを演出できるデバイスを届けたいと考えています。
そのほかeスポーツ大会や人気配信者のイベントなど、プロモーション施策も強化し、認知拡大を図っていきます。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。
上森氏:今後は、コントローラーを軸に新しいデバイスやブランドを展開し、国内での存在感をより強固なものにしていきます。加えて、1万円台のエントリーモデルも投入し、より幅広い層にアプローチしていく予定です。
グローバル展開も本格化させ、数年以内には海外売上比率を5割程度まで引き上げることを目標としています。既存ブランドの拡張に加えて、良いご縁があれば戦略的に新しいブランドも取り入れていきたいですね。国内外問わず、多くのゲーマーに喜んでもらえる製品を届けていけたらと思っています。
石井氏:IPは世界的に見ても、日本が持つ強みのひとつ。近年では「推し活」文化の影響もあって、その価値はさらに高まっています。現在は国内中心の展開ですが、今後はIPコラボを一層強化し、海外でも認知を広げていきたいですね。
将来的には、「国内最大のグローバルゲーミングデバイスグループ」の実現を目指しています。
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