リアルアキバがシードで約5億円調達、秋葉原カルチャーを軸にIP創出とグローバル展開へ

株式会社リアルアキバが、シードラウンドにおいて総額約5億円の資金調達を実施した。出資にはGENDA GiGO Entertainment、MIXI、カヤック、GLOE、ユナイテッド、アノマリー、スタートアップファクトリーなど、エンターテインメントやIT領域で事業を展開する複数の企業が参加した。

リアルアキバは2024年設立のホールディングス型スタートアップで、前身となるアブストリームクリエイションやISARIBIなど複数のエンターテインメント事業会社を統合し、現在は9 社体制でグループ運営を行っている。事業領域は広告・プランニング、ライブ・フェス企画運営、タレントマネジメント、秋葉原カルチャー特化の実店舗・不動産開発、新設の音楽IP開発部門など、多岐にわたる。デジタルとリアルの両面で事業を展開し、グループシナジーの構築を目指している。

同グループの中核には、アニメやボーカロイド楽曲を用いたダンスパフォーマンスでYouTubeの累計再生回数5億回以上を記録したダンスグループ「REAL AKIBA BOYZ（RAB）」がある。RABおよびジュニアユニットは、秋葉原カルチャーに根差したタレント集団として、国内外のファンコミュニティの拡大に寄与してきた。また「Meteora St.」名義で、約160名・総フォロワー数5,000万人を超えるインフルエンサーやアーティストを擁し、広告プロモーションやコンテンツPR支援にも注力している。さらに、秋葉原発の体験型店舗展開や、リアルイベントの開催など、オンラインとリアルを融合した事業モデルを築いている。

代表取締役 榊原敬太氏は、RABのメンバー「けいたん」としても知られる人物で、20年以上にわたり秋葉原とダンスカルチャーに関わってきた経歴を持つ。アブストリームクリエイションやISARIBIなどでのプロデュース・経営経験を経て、グループのホールディングス化を推進した。自身も現役のダンサー・タレントとして活動しながら、グローバル展開を見据えた経営を担う。

日本発のアニメ、ゲーム、ダンス、アイドルといったサブカルチャー市場は、近年その国際的な存在感を高めている。ライブ・エンターテインメント市場は2024年時点で約7,600億円規模に成長しており、2030年には8,700億円に達する見通しだ。国内外の動画配信サービス利用の拡大や、サブカルチャーコンテンツへの世界的な需要増加が続いている。矢野経済研究所によれば、「オタク市場」の国際化も進み、IP（知的財産）やデジタルコンテンツの開発・流通を強化する新興企業が増加。SNSインフルエンサーのマネジメントや、ファン参加型サービス、コラボグッズの分野などでも競争が活発化している。

競合環境は多様化しているが、秋葉原カルチャーに特化し、ダンスアーティスト集団・企画制作・リアル拠点・IP開発を一体で展開する体制を持つ企業は少ないとされる。リアルアキバによれば、アニメ・ゲーム関連のPRやイベント領域ではISARIBIが年間200作品以上を手がけており、独自のポジションを構築してきた。一方で、ダンスやサブカルチャー領域においては、YouTubeなどのプラットフォームやタレント育成ノウハウを有する他の事業者とも競合関係にある。今後は国内外での協業やIP共創も拡大していくとみられる。

今回の資金調達によって、リアルアキバは音楽・ライブイベントやサブカルチャー店舗の新設、IP創出など既存事業の強化とともに、グローバル市場向けの新規事業開発へ投資を進める方針だ。投資家にはコンテンツ企画やライブ運営、デジタル事業分野で実績を持つ企業が多く、各社の知見やネットワークとの連携を強化する狙いがある。ホールディングス体制下でのグループシナジー創出や、新たなタレント・IPの開発、リアルとデジタルを横断したファンコミュニティ展開が具体的な用途として想定されている。

短期的には、REAL AKIBA BOYZなど既存IPの大型イベントや海外展開、体験型店舗ネットワーク「Road To 100」の推進（5年で100店舗を目標）など、事業の規模拡大が見込まれる。中長期的には、音楽IPの創出やグローバルレーベル事業、海外配信マーケティングの強化など、秋葉原カルチャーを軸にした世界市場への挑戦を視野に入れている。あわせて、業界内外における多様なパートナーシップやM&Aも検討事項となっている。

今後、調達資金を活用した事業拡大や新規IP創出の進展が、サブカルチャー市場にどのような影響をもたらすか注目される。