スポーツ向けAI解析のNineEdgeが推進する、アマチュアチームのデータ活用

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KEPPLE編集部


スポーツ選手をテクノロジーで支援するサービス「ForceSense(フォースセンス)」を開発する株式会社NineEdgeがシードラウンドにて、第三者割当増資による6000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドでの引受先は、ANOBAKA、サムライインキュベートが運営するファンド、ドーガン・ベータ、複数の個人投資家。

スマートフォンで撮影した動画を動作解析

プロスポーツ業界では、テクノロジーを駆使したデバイスやツールの活用で、技術やコンディショニングの向上が進んでいる。一方、アマチュアスポーツでは使える予算や場所の制限があるため、テクノロジーの活用は難しい。

ForceSense はアマチュアスポーツ選手向けのプロダクトで、プロスポーツレベルの映像解析・データ測定機能を持つ。現在は、野球向けのプログラムが先行して開発されている。運動の様子をスマートフォンで撮影し、動画をアップロードするだけで、打ったり投げたりする際の身体の軌道・傾き・スピードなどが自動で解析される。


2022年11月24日にWebサービス(β版)をリリース。無料トライアル版のアプリを順次リリース予定で、来春以降には改善点のアドバイスやトレーニング提案など、チームで活用できる機能を実装した有償版のリリースも予定している。調達資金はプロダクト開発や営業などの採用拡大に充て、サービスをさらに向上させる。

代表取締役CEO 渡辺 一矢氏に、サービスの強みや今後の展望などについて詳しく話を伺った。

データ活用の普及へ、指導者の理解を深めたい

―― これまで、スポーツ業界にはどのような課題がありましたか?

渡辺氏:スポーツ業界全体では、トラッキングしたデータを分析できるアナリストが不足しています。それに加えて、アマチュアチームには専門知識のある指導者(監督・コーチ)が少ないのが現状です。データ活用の理解を深め、適切な指導方法を普及させる事が必要です。そのためには指導者のみならず、各カテゴリーの連盟の方々に至るまで、意識や考え方を変えていかなければいけません。

ForceSenseが選手と指導者の間に入る補完ツールとなることで、指導者のレベルアップ、選手のパフォーマンス可視化に取り組みたいと考えました。

―― プロ仕様のプロダクトをアマチュアチームが活用できないのはどのような理由からですか?

プロスポーツ向けのサービスとして、野球・ソフトボール向けの3Dトラッキングシステム「ラプソード」が挙げられます。メジャーリーグ全30球団や日本のプロ野球チームなどが利用していますが、導入・運用コストは安価とは言えず、アマチュアチームにとっては大きな負担です。また、多くのデータが取れるのですが、先述のようにアナリスト不在では、活用が難しい面もあります。

ForceSenseは、スマホで操作できる手軽さと、元プロアスリートによる活用支援をセットで提供することによって、小中学生でも簡単に使えるサービスを目指しています。また、費用もプランによっては月額数百円からご提供しており、従来のサービスより安価で利用することができます。

スタートアップスカウト

―― ForceSenseを始めようと思ったきっかけを教えてください。

前職は、ディープラーニングを活用した映像・画像認識システムのサービス開発や大手クライアントと共同研究する会社でCOOを務めていました。ディープラーニングの領域に長く携わる中で、スポーツのDXが進んでいないと感じていました。海外では、データを活用した練習メニューを採用してうまくいく事例が出てきていますが、日本では依然として気合と根性のスポーツ指導が根付いています。そのことが原因で、競技から離れてしまう選手も多いと思います。

私たちの強みの一つは、メンバーの多くがエッジAI(※)に携わってきたことです。リアルタイム処理が必要な解析はエッジ側で実施。そうでない処理はサーバーで行い処理負荷を低くするなどの取り組みにより、このようなサービスをスマホで展開することが可能となりました。たとえ後発のプロダクトでも、スマホによるサービスで他社との差別化ができるのではないかと考えました。私自身は小学校から大学まで野球に打ち込み、甲子園出場やプロ野球選手を目指していました。野球だけでなくスポーツが大好きなので、スポーツ科学の領域でチャレンジしてみようと思いました。

(※)エッジ(ネットワークの端となる手元のデバイスや、その近くに配置されたサーバー)でAI処理を行い、クラウドとの通信を極力減らす仕組み。クラウドAIのコストやリスクなどの課題を解決する。

プロ野球選手のセカンドキャリア構築にも一役

―― 資金調達の背景や使途について教えてください。

ForceSenseはバーティカルSaaSなので、私たちが実際に現場に出向き、選手や監督に活用方法をレクチャーし、データ分析をサポートしていかなければならないと考えています。月1〜2回程度は選手と指導者に対して、元プロ野球選手などと一緒にツールの理解を深め、パフォーマンスを向上できる機会を設ける予定です。

元プロ野球選手やバイオメカニスト、データサイエンティストといった専門家との体制構築のため、プロ野球選手のセカンドキャリア構築にも取り組んでいます。アスリートの多くは引退するとそのスポーツから離れてしまいますが、一方で携わり続けたいと思う人も少なくありません。ただ、働き口は限られていますので、私たちの事業を通してセカンドキャリア環境を整備していきます。

現在、元読売ジャイアンツで活躍した片岡保幸氏にエバンジェリスト兼アドバイザーとして参画いただいています。今後さらなる協業連携も含め、今回の資金を活用する予定です。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

スポーツにおけるAI活用はこれからです。データをパフォーマンス向上に繋げることは、野球に限らずどのスポーツにも当てはまります。まずは高校野球の強豪校での利用を進めながら、野球以外のさまざまな競技に広げたいと思っています。

そして、NineEdgeからトップアスリートを輩出できる環境を構築することに注力していきます。多くのアスリートや専門家をスポーツ界に送り出したいですね。将来的には教育の領域にも展開できればと思っています。スポーツを軸とした学校教育で、引退後にはビジネス界でも通用するアスリートを育成できる環境作りを目指します。

他には、スポーツメーカーとの協業なども考えています。私たちが持っているデータをもとに、パフォーマンス向上に繋がる商品開発などができればいいですね。スポーツ領域でデータを軸にしたさまざまなビジネスモデルを構築していき、スポーツ業界の発展に貢献していきたいです。

株式会社NineEdge

株式会社NineEdgeは、AIを中心としたテクノロジー活用を様々なスポーツへ進める企業。 選手の特徴/個性を高度に可視化して、データに基づいたトレーニングのアドバイス及びPDCAを支援することで、選手がトレーニング後の改善度合いを映像とデータで振り返ることができるサービス『Force Sense』を開発。2022年11月に初期版として個人で活用できる『Force Sense』のWEB版をリリースした。

代表者名渡辺一矢
設立日2020年11月19日
住所東京都中央区銀座5丁目15-1南海東京ビルディング
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