日本企業の東南アジア進出を後押し、エネクトが掲げるミャンマー人材活用の新ビジョン

日本企業の東南アジア進出を後押し、エネクトが掲げるミャンマー人材活用の新ビジョン

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KEPPLE編集部

目次

  1. 今後日本で増加が予想されるミャンマー人材
  2. 闇が深かったミャンマーの人材紹介ビジネス
  3. 日本企業はミャンマー足掛かりに東南アジア進出も

アジア人材の紹介サービス「bridge」を運営する株式会社エネクトが、介護福祉・医療・教育分野を中心に事業運営するGenki Groupに参画したことを明らかにした。

高齢化や人口減少という喫緊の課題を目前に、外国人労働者の受け入れが活発になっている日本。令和5年10月末には、外国人労働者数が200万人を超えた。国籍別では、ベトナムが全体の25.3%と最も多く、ついで中国、フィリピンといった具合だ。

これまで増加を続けてきた外国人労働者だが、昨今の円安や母国の発展を背景に、ベトナムからの来日者は減少することが予想されている。そこでエネクトが注目しているのがミャンマーの人材だ。

同社が運営するbridgeでは、国内企業の特定技能取得者の採用支援や現地における教育、入国支援を行う。同サービスを利用して来日を希望するミャンマー人に対して、入国前に日本語会話に特化した授業や職業実習をそれぞれ計240時間実施する。同社はこれから最短3年での上場を目指しているという。

人材紹介の流れの図

エネクトの代表を務める 山田 卓氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。

今後日本で増加が予想されるミャンマー人材

―― 御社の事業について教えてください。

山田氏:日本で働きたい現地の外国人と日本の企業をマッチングしています。企業への紹介で特に多いのがミャンマー人です。

ミャンマーでは、面接の練習や職業実習に加え、現地パートナーと運営する日本語学校での日本語教育など、日本での就労に必要な教育を実施しています。

―― 日本国内のミャンマー人労働者は多いのでしょうか?

現時点では、ミャンマー人の受け入れは全体の3.5%で、国籍別の労働者としては7位になります。ベトナムや中国と比べるとその数は決して多くありませんが、今後はベトナムからの労働者が増えるというよりは、ミャンマーやインドネシア、バングラデシュなどの国からの来日が増えるのではないでしょうか。

―― なぜミャンマー人労働者が増えていくと?

今は世界的な円安と言われていますが、ミャンマーでは2020年に起きた政変の影響で現地通貨が値下がりし、円高になっています。そのためミャンマー人にとって、日本で働くメリットが非常に大きいのです。

また、日本は米国やオーストラリアなどの海外と比べて、外国人労働者を受け入れる制度がある程度確立されています。治安の良さやアニメ・アイドルというイメージの強さも、出稼ぎ先として日本が選ばれる理由になっています。

実際、政変以降は大学に通わない若者が増え、日本企業の求人への応募がかなり増えました。

闇が深かったミャンマーの人材紹介ビジネス

―― 事業開始のきっかけを教えてください。

とあるきっかけでミャンマーを訪れることがあり、その際に現在の現地パートナーとも出会いました。彼は60年以上前、ミャンマーの国費で初めて日本に留学した人の一人なんです。ミャンマー元日本留学生協会(MAJA)という、日本に留学する人たちの支援をする団体の会長を務め、日本語学校の設立や日本の大手企業との合弁企業設立に携わるなど、日本との親交も深い方です。

MAJA現会長のミョー・キン氏、元会長のミン・ウェイ氏、エネクト代表の山田氏の写真
左から:MAJA現会長のミョー・キン氏、元会長のミン・ウェイ氏、エネクト代表の山田氏

「アジアのラストフロンティア」と呼ばれるほど、当時のミャンマーには熱気があふれていました。それほどチャンスがたくさんある一方で、課題もありました。例えば、ミャンマーから日本に人を送るビジネスは以前から多くありましたが、悪質な詐欺も多かった。日本人が加担していることもあったほどです。

こうした現状についてパートナーと相談するうちに、ミャンマーの人が安心して日本に行ける環境を作ろうと、コロナ前から事業に取り組み始めました。

日本企業はミャンマー足掛かりに東南アジア進出も

―― Genki Group参画のきっかけや目的について教えてください。

Genki Groupは医療や介護福祉の施設を多く展開しています。その中で海外の事業に関する関心も強く、会長が海外の人になんらかの形で貢献したいという強い思いを持っていることを知人から聞き、実際に会長と話す機会をいただいたことが最初のきっかけです。

当社の事業や実現したいことをしっかりと説明すると、その翌月には会長がミャンマーに来てくれて。その翌々月には事業連携の具体的な話が決まり、スムーズに今回の資本提携に至りました。

連携によるメリットはたくさんあります。外国人の働き先として、グループの取引先網を活用することができますし、彼らは教育事業も行っています。当社のミャンマーに関する知見とGenki Groupの教育事業ノウハウを組み合わせ、より良い教育ができるはずです。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

ミャンマー人に向けたキャリア教育を重視しています。未来のキャリアプランを考えるための教育が、現在のミャンマーでは不足しています。実際に日本に来るミャンマー人に将来の目標を聞くと、軒並み「レストランを開きたい」と話すんです。多数の選択肢から選択するのではなく、ただそれだけにとどまってしまっているのではもったいないなと。今後は、職業訓練校の機能を拡大し、ミャンマーで何か産業が生まれた際に一定の知識やスキルを持つ人材を送り出せるような展開を考えています。

キャリア教育の写真

加えて、日本では、これから人口減少を背景にあらゆる事業の国内市場が縮小していきます。ミャンマー人を雇用していれば、事業を日本からミャンマーに進出させる手助けになるかもしれません。

―― ミャンマー進出による日本の課題解決も目指すのですね。

人材紹介や教育の次に注目しているのが農業です。日本では、高温障害※によって米の収穫量が減り、販売価格も上がっています。一方のミャンマーは、稲作に適した気候条件がある。日本の農業技術をミャンマーに伝え、ミャンマーで作った日本のお米を日本に流通させるために、早ければ来年からミャンマーでコシヒカリを育て始める計画です。

東南アジアは日本企業にとって魅力的なマーケットです。一方で、正攻法がミャンマーで通用するとは限りません。実際に現地に足を運び、現地の企業や人材と会話する。これが海外進出を実現するために必要なことだと思います。そのサポートをし、双方にとって有益なビジネスの機会を生んでいきたいと思います。

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※稲の吸水が蒸散に追いつかず、しおれて枯れてしまう障害

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