伝統技法×プレカット×AI木目認証  KNOTTERが描く“循環する家具”の未来

伝統技法×プレカット×AI木目認証  KNOTTERが描く“循環する家具”の未来

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伝統技法と未利用木材を活用し、繰り返し解体・組み立てできる家具を開発・販売するKNOTTER(ナラー)株式会社は、2026年4月7日よりクラウドファンディングサービス「Makuake」にて、ベッドフレーム「RAFT」とサイドテーブル「BEACON」の先行販売を開始した。

(左)RAFT (右)BEACON:伝統技術「背割り」を活用(画像は同社ウェブサイトより)
(左)RAFT (右)BEACON:伝統技術「背割り」を活用(画像は同社ウェブサイトより)

RAFTとBEACONは、日本の伝統構法とプレカット技術を組み合わせた家具だ。釘や接着剤を基本的に使わず、工具不要で解体・組み立てできる設計を特徴とする。ライフステージの変化に合わせて移動し、修復し、再利用できる「旅する家具」をコンセプトに掲げる。

KNOTTERは、2024年に創業した建築家チームによるスタートアップだ。代表取締役Co-CEOを務める真島嵩啓氏は、法政大学大学院建築学専攻を修了後、京王電鉄に入社。その後、一級建築士事務所SATO+やハフニアムアーキテクツで意匠設計・構造設計に携わり、2023年に独立。2024年に同社を創業した。

CTOの稲田勲保氏は東京大学大学院で木質構造を専攻し、竹集成材やCLT耐力壁の開発などを手がけてきた経歴を持つ。今年2026年からはCOOとして夏井俊氏が参画。真島氏の大学院時代の同期で、設計事務所での10年の実務経験に加え、フォトスタジオや設計事務所「studio texte」を自ら経営してきた人物だ。

引っ越しのたびに捨てられる家具への問題意識

プロダクト開発の背景には、現代の家具が短命化しているという課題意識がある。

真島氏は、「現代に生きる人は、進学・就職・転勤など、ライフステージの変化とともに頻繁に引っ越しをする。引っ越しのたびに気軽に捨てられる安価なものが選ばれやすくなっている」と指摘する。

家具業界では、低価格・大量生産型の製品が市場の大部分を占めており、引越しのたびに家具を廃棄・購入し直す消費行動が広く定着している。環境負荷を低減する観点から「長く使える家具」への関心は高まりつつあるが、解体・再組立を前提にした設計を持つ製品はいまだ少ない。

真島氏は、「デザインとエンジニアリングの側面から、『人生』という旅のパートナーとなるような家具を作れれば、この課題が解決できると考えた」と振り返る。

また、環境基準の変化も見据える。「特にヨーロッパでは、ホテルにプラスチック製品が含まれるだけでNGというほどストイックな基準が当たり前になってきている。その流れは遅れて日本にも入ってくるのではないか」と見る。

木材を組む伝統工法と、プレカットのイメージ(画像は同社プレスリリースより)
木材を組む伝統工法と、プレカットのイメージ(画像は同社プレスリリースより)

KNOTTERの家具は、プロダクトは日本の伝統構法を活用しながら、プレカット(機械による木材加工)技術を組み合わせた独自工法を採用している。

伝統構法により、釘や接着剤を使わずに木材を組み合わせることができる。これにより、何度でも解体・組み立てが可能な設計を実現した。一方で、プレカットを採用することで、加工精度を担保しながら製造コストを抑えているという。さらに、バンドで強度を補完している。「木が組み合わさっているだけではガタツキが出てしまうので、それをギュッと固める役目をこのバンドが担っている。組み立てが簡単なよう、鍵を回すことでベルトが締まる仕組みを開発した」と、真島氏は説明する。この機構については特許出願中だという。

同社では金属部品が木材に癒着しない「可逆工法」を原則とし、「金属が木材に埋め込まれていないので、分解して機械に入れ直せば拡張したり再利用したりすることができる柔軟さを持っている」と語る。

材料には、東北から茨城北部、福島県にかけての山林で採れた間伐材などを使用している。ベッドフレームには、通常は市場流通しにくい「節あり材」を、サイドテーブルには樹齢80年の丸太(大径木)を用いる。同社はこうした利用されにくい木材を独自に「遊休木材」と呼んでいる。

COOの夏井氏によると、この言葉は木材業者との対話の中で生まれたものだという。木材業者から「使われていないこの材をどうにかできないか」と問いかけられたことが、プロダクト開発のきっかけの一つになった。大径木には、乾燥収縮によるひび割れを抑制する伝統技術「背割り」を活用。背割りとは、木材にあらかじめ割れ目を入れることで、それ以上のひび割れを防ぐ技術だ。

真島氏は「あらかじめ割れを入れておくことでそれ以上ひび割れを防ぐこの技術を現代的に解釈し、コードの通り道として機能させることでサイドテーブルを壁にぴったりと収められる設計にした」と語る。

木目をAIで認識し、木材の来歴を追跡する 

KNOTTERが注力しているもう一つの取り組みが、「木材トレーサビリティ」だ。木目の画像をAIに学習させ、加工や流通の各段階を経ても木材の来歴を追跡できる仕組みを実証実験中だという。真島氏は「スマホで読み取ると、どういう歩みをしてきたのかがわかるようになる。回収・修復して次の使い手に届ける際、木目が多少変わっても追えるよう、何百枚・何千枚の木目をAIに学習させて認識できるようにすることを今開発している」と説明する。「銘木と呼ばれる価値ある木材については産地表示があるが、すべての過程をトレースしようという試みはいまだかつてないと思っている」(真島氏)という。

木目認証のイメージ。ベッドフレームなどの木目を読み込むと、産地や流通課程、生産者のストーリーなどを読み込むことができる仕組み(画像は同社プレスリリースより)
木目認証のイメージ。ベッドフレームなどの木目を読み込むと、産地や流通課程、生産者のストーリーなどを読み込むことができる仕組み(画像は同社プレスリリースより)

事業の対象市場については、個人消費者と法人の両面を視野に入れている。個人向けには引越しを繰り返す若年層へのベッドフレーム普及を優先課題とし、今後はサブスクリプション形式での提供も準備中だ。法人向けにはホテル・民泊・家具付き賃貸向けの卸販売や、什器の受託設計を事業の柱に据える。「循環型の社会に意識の高い人だけが向かうのでは本末転倒。循環型であることが低価格につながり、意識していない人も自然と循環の輪に入っているような状況を目指したい。ベッドフレームといえばKNOTTERというファーストチョイスを目指している」と夏井氏は語る。

2025年開催の大阪・関西万博では、フィリピンパビリオンの展示什器をオーダーメイドで開発・納品し、大型機材を含む10点を提供した。会期終了後は解体・梱包してフィリピンへ輸送しており、同社の循環設計コンセプトを大型案件で実証した格好だ。

今後の資金調達についてはCVCとの連携を想定している。同社は、「環境と経済を両軸で追うものづくり企業や、ホテル・不動産、オフィス関連メーカーなど、幅広い事業会社との接続を作りやすい事業だ」としており、2026年中に調達を進めていく方針だ。

伝統技法、遊休木材、木材トレーサビリティ、可逆的な設計。KNOTTERのプロダクトは、家具を「買って使い捨てるもの」ではなく、人生の変化に合わせて移動し、修復され、次の使い手へ受け継がれていく存在として捉え直すものだ。

Makuakeでの先行販売を通じて、同社が掲げる「旅する家具」というコンセプトが、どのように市場に受け入れられるかが注目される。

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