(決算) DocuSign 4Q 2022決算、コロナの追い風が止まったことによる今後の成長に懸念

(決算) DocuSign 4Q 2022決算、コロナの追い風が止まったことによる今後の成長に懸念

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KEPPLE編集部

電子契約サービスを提供するDocuSignが3月10日に第四半期決算を発表した。4Q単体売上は35%増で市場予想を3%超過。在宅勤務の高まりにより、契約書の締結を対面からオンラインに切り替えるニーズは引き続きあると見られる。営業利益は赤字だが、粗利率は81%と高い水準を維持している。

同社は、2023年通期予想で売上18%増を見込んでおり、市場予想を6%程度下回っている。直近の数四半期を見ても、売上は40-50%増加していたため、同社が示した来期予想はかなり弱い。投資家も、コロナの追い風が弱まることは予想していたものの、ここまで成長が鈍化するとは思っていなかったとみられる。決算発表翌日、株価は20%下落しており、直近のネットフリックスやMetaの大暴落を彷彿させる。

また、同社では、営業の執行能力の低下が指摘されており、営業のトップを変えるなど組織体制の変更も見られる。



日本では、弁護士ドットコムとGMOグローバルサインが主な競合。ハンコが依然として使われている日本では、電子契約の普及率がまだ低いため、日本企業2社の電子契約の時価総額や売上規模はDocuSignに比べるとかなり小さい。インフォマートが2021年に実施した調査によると、回答企業の電子契約の導入率は3割だったという(※1)。一方、米国での電子契約普及率は、80-90%程度といわれており、ほとんどの企業で使われている。



SaaS企業は単一サービスに注力する場合が多いが、弁護士ドットコムとGMOグローバルサインは事業を多角化している。2社とも祖業が別にあり、その後、電子契約の市場に潜在性を感じ、電子契約のサービスを提供し始めた。弁護士ドットコムは、電子契約サービスのクラウドサインが売上に占める割合が42%、GMOグローバルサインは、電子認証・ 印鑑セグメントが売上の58%(個のセグメントには、SSLサーバ証明書などの売上が含まれるため、電子契約の売上構成比率はさらに低い)である。

最後に日本での競争環境を見たい。コロナの前は、弁護士ドットコムが導入企業数でNo.1だったものの、コロナ後にGMOグローバルサインが販促や無料プランを強化したことで、導入企業数では逆転したようだ。直近の各社の開示によると、GMOグローバルサインは50万社、弁護士ドットコムは30万社に導入されたとみられる。一見すると、GMOグローバルサインの方が有利に見えるが、売上成長率では弁護士ドットコムが圧倒している(弁護士ドットコムのクラウドサイン単体の直近四半期売上は年71%増)。これは、GMOグローバルサインが無料ユーザーを囲い込んで導入企業数を増やしているのに対し、弁護士ドットコムは、有料ユーザーからの収益を伸ばすフェーズにあるからと思われる。Docusignは主に海外展開をしている大企業を中心に利用しており、日本での導入企業数では2社に比べて少ないと推測される。

注)
(1)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000331.000013808.html
(※2)
時価総額、売上は1ドル115円で計算。

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