自律型エージェント時代へ──JAPAN AI、19億円調達で業務AIを加速


フィジカルAIとは、これまでPCの画面やサーバーの内部に留まっていたソフトウェアとしてのAIが、センサーやアクチュエータを備えたハードウェアという肉体を持ち、現実の物理空間において自律的に認知・判断・物理的操作を行う技術の総称である。大規模言語モデルやマルチモーダルAIの飛躍的な進化により、AIは単なるテキストや画像の生成を超え、ロボット、モビリティ、重機といった物理的デバイスを通じて現実世界に直接干渉し、環境に合わせた柔軟な対応を行う段階へと突入している。
フィジカルAI市場では、大企業とスタートアップの役割分担と共創エコシステムが形成されつつある。自動車や大手ロボットメーカーなどの大企業は強固な製造・保守網を持ち、スタートアップが牽引する自動運転トラックやAMRなどの先進技術を、社会インフラとして量産・普及させる役割を担う。一方、スタートアップは、視覚言語モデルや仮想環境でAIモデルを訓練し、現実世界に適用するアプローチ(Sim-to-Real)などを活用し、農業や小売、防衛など、これまで機械化が困難だった未開拓領域で新たなユースケースを次々と生み出している。
ケップルは、フィジカルAI市場の国内外の注目スタートアップ102社を独自に整理した。本稿では、一部領域のカオスマップと動向を解説する。

本カテゴリーには、人間並みの器用さを持つ汎用タスク向けヒューマノイドロボットの開発や、人間の認知能力を模倣した汎用ロボットシステムの構築などに取り組む海外企業を6社、国内企業を1社分類している。
ヒューマノイド(汎用人型)ロボットは、単一の作業に特化した従来の産業用ロボットとは異なり、人間向けに設計された既存のインフラや道具をそのまま扱える点が最大の強みである。近年はAIの急速な進化により、歩行などの運動制御だけでなく、状況を理解して自律的に動くことが可能になりつつある。これにより、工場での組み立てや物流倉庫での荷物運搬といった重労働の代替にとどまらず、施設内の警備や家事支援など、多様なシーンでの活用が実証フェーズに入っている。
海外の動向としては、北米や欧州のスタートアップが巨額の資金調達を背景に開発競争をリードしている。代表的な企業として、米国に拠点を置くFigure AIは、人間並みの器用さを持ち、製造現場や物流拠点での労働力不足解消を目指す汎用ヒューマノイドロボットを開発している。同社は、2025年9月にIntel CapitalやNVIDIAなどを引受先とするシリーズCラウンドで10億ドルの大型資金調達を実施し、企業評価額は390億ドルに達している。また、ノルウェーの1X Technologiesは、人間と同じ空間で安全に協働できるように設計された車輪型および二足歩行型のヒューマノイドを展開しており、実用性に焦点を当てたアプローチをとっている。
一方、国内の動向としては、海外のような完全な汎用二足歩行モデルを目指すだけでなく、特定の作業環境に人間型ロボットを適応させる実務的なアプローチが目立つ。代表例として、アールティは食品工場で人間と隣り合って弁当の盛り付けを行う人型協働ロボットや、教育・研究用途向けの二足歩行ロボットを幅広く開発しており、日本の強みである精緻なメカトロニクスと人との共存を重視した社会実装を牽引している。同社はフィジカルAI開発の加速と次世代AIロボット産業の構築を目的として、2025年10月に日本精工、2026年1月にDICから戦略的事業投資を受け入れ、シリーズDラウンドの資金調達を実施した。
本カテゴリーには、あらゆる形状のロボットで動作する汎用的なAI脳の開発や、深層強化学習を用いた制御基盤の構築などに取り組む海外企業を3社、国内企業を1社分類している。
AI動作モデルは、従来のロボットのように特定の動作を一からプログラミングするのではなく、AI自身が物理法則や環境を理解し、未知のタスクにも適応できるロボットのための基盤モデルとして機能する。これにより、ハードウェアの形状に依存せず、多様なタスクを自律的に学習して実行することが可能となっている。
海外の動向としては、米国企業が大規模な資金調達を行い、基盤モデルの開発を急速に進めている。例えばSkild AIは、特定のハードウェアに依存せず、四脚や二脚、ロボットアームなどあらゆる形状のロボットに適用可能な汎用的なAIモデルを開発している。同社は2026年1月に、ソフトバンクグループやNVIDIA、ジェフ・ベゾス氏などからシリーズCラウンドで14億ドルという巨額の資金調達を実施し、企業評価額が140億ドルに到達したことで注目を集めた。また、Physical Intelligenceはロボットが物理空間で複雑な操作を行うための大規模な汎用動作モデルの構築に取り組んでおり、Covariantは深層強化学習を用いた汎用AIを通じて多様な自動化ソリューションを提供している。
一方、国内の動向としては、ハードウェア開発とソフトウェア制御を統合したアプローチが見られる。Preferred Roboticsは、深層学習を活用した自律移動ロボット『カチャカ』などの自社ハードウェアを開発しつつ、そこから得られるデータを活かした汎用AI制御基盤の提供を行っており、日常生活や業務の自動化に向けた独自の展開を進めている。
※本記事は以上です

本記事のもととなった「AIカオスマップ2026:フィジカルAIのトレンドを徹底解説」は、急成長するフィジカルAI領域について、国内外の注目スタートアップ102社を独自に整理したカオスマップとともに、各領域の技術トレンドと競争構造を解説しています。技術領域ごとのユースケースを俯瞰し、市場性と社会実装の方向性を把握できる内容です。
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Writer

株式会社ケップル / Data Analysis Group / アナリスト
新卒で全日本空輸株式会社に入社し、主にマーケティング&セールスや国際線の収入策定に従事。INSEADにてMBA取得後、シンガポールのコンサルティング会社にて、航空業界を対象に戦略策定やデューディリジェンスを行ったのち、2023年ケップルに参画。主に海外スタートアップと日本企業の提携促進や新規事業立ち上げに携わるほか、KEPPLEメディアやKEPPLE DBへの独自コンテンツの企画、発信も行う。
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