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宇宙機用エンジン開発のLetara、総額11.3億円をシードラウンドで調達

宇宙機用エンジンを開発するLetara株式会社が、Frontier Innovationsが運営するファンドを引受先とした資金調達を実施した。これにより、シードラウンドにおける累計調達額は18億円となった。
Letaraは2020年6月に設立された北海道大学発のベンチャーで、人工衛星や宇宙機に搭載される推進エンジンの研究開発、製造、販売を事業の中心としている。開発中のエンジンは、固体プラスチックと液体酸化剤を組み合わせて燃焼させるハイブリッド型で、安全性が高く、既存推進剤に比べて取り扱いが容易な点が特徴とされる。企業によると、燃料コストは最大で60%削減できる可能性があり、衛星の軌道投入や軌道間移動、いわゆる「ラストマイル」輸送への対応を視野に入れている。
このハイブリッドエンジンの要素技術は、北海道大学が20年以上にわたり研究・実証を重ねてきた「CAMUIロケット」の技術を基盤としている。Letaraは同大学・永田晴紀研究室の特許技術を独占的にライセンスし、人工衛星をはじめとする小型宇宙機向け製品群の開発に取り組んでいる。プラスチックを燃料とする構成は、廃プラスチックなどを活用することで環境負荷低減にも貢献できる可能性がある点も注目される。
代表取締役の平井翔大氏は、北海道大学工学部を卒業後、同大学大学院工学院機械宇宙工学専攻を経てTOTOに入社。その後、植松電機でハイブリッドロケットの開発に従事し、2020年6月にLetaraを設立。
宇宙産業において「ラストマイル輸送」は近年大きな注目を集めている。これは、ロケットによる打ち上げ後、衛星自身が軌道上で目的地まで自走する工程を指す。近年では、ライドシェア方式による打ち上げの普及により、多数の小型衛星が同時に宇宙へ投入されるケースが増えている。そのため、衛星が個別に軌道変更や再配置を行う必要が高まっており、推進システムの重要性が増している。2024年時点で、Space Foundationなどのデータによれば、年間1000機を超える小型衛星が世界で打ち上げられている。スペースデブリ(宇宙ごみ)対策としても、推進装置の搭載は不可欠とされている。
一方で、従来の液体燃料推進装置は爆発リスクやコスト高、搭載困難などの課題を抱えている。推進力の選択肢としては、電気推進系は推進力不足、化学推進系は高い危険性といった課題があり、選択肢が限られていた。国内ではPale BlueやAxelspaceなどが衛星推進システムの開発を進めているが、プラスチック燃料によるハイブリッド型エンジンで軌道実証を目指すのはLetaraが初とみられる。
今回の資金調達はFrontier Innovationsが主導し、Incubate Fundや全日空商事など複数の投資機関も参加している。公的支援や補助金、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業採択も含めた累計調達額は18億円となり、宇宙・ディープテック系スタートアップの中でも大規模な調達事例となる。調達資金は、2026年に予定される「ハイブリッド推進機能による軌道上実証」や、量産体制の構築、海外市場開拓に使用される予定である。
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