レスビアン向けのマッチングアプリ「PIAMY」を開発する株式会社アルトレオスがシードラウンドにて、第三者割当増資による3000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、クオンタムリープベンチャーズ、IDホールディングス、インキュベイトファンドの3社。
今回の資金調達により、有料プラン向けの機能やiOS版アプリの開発を加速する。
レズビアン・LGBTQ+向けの共感型マッチングアプリ
PIAMYは、レスビアンやセクシュアルマイノリティの女性向けのマッチングアプリだ。趣味や好きなことの発信を通じて、共感できる人とつながることができる。
趣味や関心事に関連するタグを使って投稿し、同じ趣味を持つ人をフォローしていいねやコメントで交流する。利用イメージはSNSアプリに近い。
レズビアンやセクシュアルマイノリティの女性は、他のセクシャルマイノリティに比べて孤独感が高い傾向にある。セクシュアルマイノリティにとって、コミュニティによる支えは不可欠だ。
PIAMYの利用目的は恋愛に限らない。自分と似た趣味を持つ友人や相談相手を探すユーザーも多いという。
現在は、男性によるハラスメントやなりすましなどの問題への配慮を目的に、戸籍上の女性のみが登録可能だ。身分証での本人確認に加え、不正なユーザーや悪質な利用者がいないかをリアルタイムで監視することで、ユーザーが安心して利用できるような工夫がされている。
2024年2月時点でのダウンロード数は約2.2万件。月間アクティブユーザーは約4000人だ。
登録や利用は無料。今後は有料プランの追加やiOS版アプリの開発を強化し、より多くのユーザー獲得を目指す。
今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 星 マリコ氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
女性が安心して出会える場所へ
―― PIAMYで解決を目指すのはどのような課題ですか?
星氏:私は、これまで7年間にわたってLGBT関連の活動に取り組んできました。主に就労関連の支援を行い、とくに多かったのはゲイやトランスジェンダーの方々との接点です。一方で、レズビアンの方々との接点は多くありませんでした。ゲイに比べて、レズビアンの方のカミングアウトが少ないという現状も、その理由の一つだと思います。
イギリスで実施されたZ世代のLGBTQ+への調査では、ゲイやトランスジェンダーの約50%が日々孤独を感じていると回答しました。ただでさえ高い割合ですが、レズビアンに関してはゲイの約2倍と、その数値は著しく高くなっています。
どこで出会えば良いかわからないという不安や、つながりたい気持ちはあるものの、つながる機会が少ないという声が多く聞かれ、孤独感が深まるのだと思います。ゲイ向けにはマッチングアプリなどが発展していますが、レズビアンの場合は居場所が点在しており、出会いの場が限られているのです。
また、オンライン上でのハラスメントも課題の一つです。マッチングアプリでは、女性になりすまして男性が登録し声をかけてくるなど、レズビアンに限らず女性に対するハラスメントは深刻な問題です。
ゲイやトランスジェンダー、レズビアンなどのセクシュアルマイノリティの中にもジェンダーギャップが存在しており、私たちが解決に取り組むべき重要な課題であると感じています。
―― 星さんはアルトレオスの設立前に、JobRainbowという会社を起業しています。
学生時代に弁護士を目指し勉強していた頃、社会問題解決を目的としたソーシャルビジネスについて知る機会がありました。社会課題をビジネスで解決することに面白みや希望を感じて、何万人もの人に影響を与えるようなアプローチがしたいと心から思ったんです。
ちょうどその頃、弟からゲイであるというカミングアウトを受けました。話を聞いていると、彼の友人たちは、LGBTであることを理由に就職活動で苦労しているということなんです。
そのことをきっかけに、2人でLGBTの人々の課題について話し合うようになりました。就職できたとしても転職を繰り返すLGBTの人が多い現状に着目し、まずはその課題解決に取り組もうと、弟と共同でJobRainbowを設立しています。
―― PIAMY開発に至ったのは、どのようなきっかけからでしょうか?
PIAMYはJobRainbowの新規事業として立ち上がりました。JobRainbowとして、どのようにユーザーにアプローチするかを考えていたことがきっかけです。当時、LGBTコミュニティにおいて最も人が集まっていたのはゲイのマッチングアプリです。しかし、レズビアンが集まれるコミュニティは不足していました。
レズビアンの方々にヒアリングをしていく中で、従来のマッチングアプリに対して違和感や抵抗感を持つ人がいることに気づきました。自身の写真をアップロードすることに抵抗を感じるほか、恋人だけでなく、安心できる友人関係を求める人も多いんです。
こうしたきっかけからPIAMYを立ち上げましたが、その後JobRainbowではLGBT領域に限らずD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の領域にも拡大していくことになりました。今後の方針について弟とも話し合う中で、アルトレオスを設立してPIAMYの事業を継続することになりました。
持続的なセクシュアルマイノリティのコミュニティに
―― 調達資金の使途について教えてください。
レズビアン向けコミュニティアプリの多くは、有志により運営されています。そのため継続的なアップデートがされず、閉じてしまうサービスも少なくありません。
その結果、せっかくつながることのできた友人と連絡ができなくなることもあるんです。調達資金をもとにコミュニティサービスとしての持続性を高めることで、彼女たちが安心していられる場所を提供していきます。
現在は、Android版の無料プランに絞って提供しています。これまでサービスを継続していく中で、レズビアンの方々のニーズが非常に大きく、PIAMYが彼女たちにとって必要不可欠なサービスであることがわかりました。今後はiOS版の開発に加えて、有料プランの開発も進め、機能を拡充していきます。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
日本のLGBT人口は全体の10%と言われ、ターゲットとなる女性はその約半数です。マーケットの規模は小さく見えますが、レズビアンが抱える課題は日本に限らず世界中に共通します。そのため、今後必ずPIAMYの海外展開も進めていきます。
そのためにも、まずはユーザー数10万人を達成してコミュニティを拡大し、2025年にはユーザー数30万人を達成して国内No.1のサービスになることが目標です。
現時点では、男性によるハラスメントやなりすましなどの問題があるため、戸籍上の女性のみを対象にサービス提供しています。一方、戸籍上は男性で性自認が女性の人々も、つながりづらさなどの課題を感じていることはきちんと受け止めています。今後は、戸籍上の性別による承認以外の手段で安全なコミュニティを担保する仕組みを構築し、自分らしさを大切にして周りの人と共に生きていけるようなプラットフォームにPIAMYを育てていきたいと思います。