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農業由来カーボンクレジットのフェイガー、脱炭素推進のインフラへ

農業分野のカーボンクレジット創出と販売を手がける株式会社フェイガーは、第三者割当増資によるシリーズAラウンドで総額約24億円の資金調達を完了した。今回のラウンドにはJICベンチャー・グロース・インベストメンツ、鈴与商事、住商ベンチャー・パートナーズなどが参画している。
フェイガーは2022年に創業し、農業由来の温室効果ガス排出削減量を「J-クレジット」などの形で認証・流通させる事業を展開している。とくに水田での「中干し」期間延長によるメタン排出削減や、バイオ炭の施用を通じた炭素貯留など、脱炭素型農法の導入支援に注力してきた。農家に対しては、排出削減量の計測・認証からクレジットの販売まで一貫したサポートを提供している。
2024年現在、フェイガーのネットワークには全国35都道府県で約1300戸の生産者が参画し、13.6万トン分のCO₂削減クレジットが認証された。2027年までに100万トン超のクレジット創出を目標として掲げている。農業現場への収益還元と地域経済の活性化を両立させる新たなモデルを目指す。
代表の石崎貴紘氏は、外資系コンサルティング企業で海外事業を経験した人物であり、シンガポールでの商社支援経験から課題を痛感し創業に至った。石崎氏が創業したフェイガーには、環境や農業の専門知識を持つ多様な人材が集まっている。業務はフルリモート体制で行われており、都市・地方を問わず幅広い課題に対応してきた。
農業・食料システムは世界の温室効果ガスの約30%を占めるとされ、日本でも水田由来のメタン排出や施肥によるN2O排出といった点が削減の難しい領域とされてきた。2023年にはGX-ETS(排出量取引制度)が本格導入され、J-クレジット制度の利用も拡大しているが、排出削減量の認証や取引スキームの運用には複雑な制度設計と高度なデータ管理が求められる。フェイガーは、申請手続きの簡略化や品質管理、クレジットの買い取り保証などを通じて、生産者が参入しやすい仕組みづくりを推進してきた。
近年では、製造業や自治体、金融機関などの企業もカーボンクレジットの調達やCO₂削減対策への関心を強めており、企業側でもGX-ETS対策やCSR色の強い地域版クレジットの導入が増えている。カーボンクレジット市場自体は制度の整備とともに拡大傾向にあり、エネルギーや森林由来のクレジットを扱う事業者も多様に存在している。
今回の資金調達で、フェイガーは生産者ネットワークの拡大、クレジット生成のデジタル管理強化、企業向け支援体制の拡充を進める方針だ。今後も、海外での展開を拡大し、研究機関・国際機関との連携も進めていく予定だ。
農業由来カーボンクレジットの市場は、今後も制度面や需給動向で変化が続くことが予想される。業界を横断したパートナーシップや標準化の動きも進展しており、競合としてはエネルギー・森林分野のクレジット事業者、農業分野の新興プレイヤーが挙げられる。フェイガーの成長戦略と、独自の農業ネットワークを活かしたクレジット創出モデルが今後どのように市場に浸透するかが注目される。
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