中小企業向けのM&Aエージェントサービス「RISONAL M&A」を運営するオーナーズ株式会社がシリーズAラウンドにて、約11億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、SMBCベンチャーキャピタル、DEEPCORE、三菱UFJキャピタル、SBIインベストメント、池森ベンチャーサポート、みずほキャピタルの6社。
後継者不在の事業承継を支援するM&Aエージェント
日本全体の企業のうち99.7%を占める中小企業。超高齢化社会の進行に伴い多くが世代交代の課題に直面する中、M&Aによる事業承継の円滑な進展が求められている。
RISONAL M&Aは、こうした課題を抱える売り手企業のM&Aを支援する専属のエージェントサービスだ。売り手と買い手の双方と契約する従来のM&A仲介とは異なり、売り手と専属契約を結び、理想のマッチングを追求することで顧客の利益を最大化する。
専属のエージェントとして契約することで、M&A仲介サービスのネットワークに限定されずに幅広く買い手を探索することができる。案件あたりの手数料を抑えることで、取引価格を最大化する。
同社にはM&A専門の公認会計士や投資銀行出身者を中心とした経験豊富なプロフェッショナルが在籍し、テクノロジーを活用してノウハウや知見をサービスに落とし込むことで、リーズナブルな価格でサービスを提供している点が特徴だ。
今後は調達資金をもとに、LLMを用いたAI開発を通じて属人性を減らし、より高品質なサービス提供を目指している。
また、同社は証券や銀行、保険、不動産などあらゆる資産クラスをカバーしながら、事業オーナーの視点に立った理想的な資産運用・財産継承を提案する「RISONAL WEALTH」も展開している。
今回の資金調達に際して、代表取締役 作田 隆吉氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
売り手に寄り添うM&Aを実現
――中小企業のM&Aにおける現状や課題について教えてください。
作田氏:日本では、多くの中小企業がこれから10~20年で世代交代を迎えます。後継者不足は大きな問題で、後継者がいないことによる黒字廃業も多く、高齢経営者の事業継承対策が急務です。日本企業のM&Aは、民間と支援センターを合わせて年間6000件近く成約していますが、政府が目標として掲げる年間6万件に対してはまだまだ届いていない現状です。
中小企業がM&Aを実施する際は仲介サービスを利用することが一般的で、買い手企業はこれまでに何度か仲介によるM&Aを経験していることがあります。一方で、売り手となる事業オーナーが過去にM&Aを経験しているケースは非常に稀です。そのため売り手の目線では、勝手がわからないまま交渉が進んでしまうことも珍しくありません。
加えて、M&A仲介は買い手と売り手双方を顧客として支援するその性質上、売り手にメリットのある提案をすれば買い手の利益減少につながります。そのため、双方の利益を最大化する提案は困難です。これらの背景からM&Aにおいて、売り手を支援するニーズが非常に高まっています。
大企業を中心とした大型の取引においては、これまで投資銀行や大手コンサルティングファームなどによるFA(Financial Advisory)サービスが提供されていました。売り手、もしくは買い手のどちらかと契約することで、顧客の利益を最大化する支援を提供しています。
FAサービスは、これまで中小企業向けにはほとんど提供されていませんでした。そのため中小企業の事業オーナーには、そもそもFAサービスの存在が知られていません。
―― どのようなきっかけからオーナーズを創業したのでしょうか?
以前は、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーで多数のM&A案件に携わり、4年間在籍したロンドンオフィスではヨーロッパの案件を支援していました。
ヨーロッパの案件に携わる中で感じたのが、日本と比べて規模が小さい国ばかりであるにもかかわらず、一人当たりの所得が高い水準にある点です。税金が高い背景もありますが、医療や教育などのレベルも高く、社会が非常に高いレベルで循環している印象を持ちました。
こうした経験からいくつかの指標に関する国別のデータを眺めていたところ、日本については特に中小企業の生産性の低さが社会課題であることに着目し、中小企業の支援をしていくべきだと思い、オーナーズの創業に至りました。
事業オーナーに支持されるNo.1M&Aサービスへ
―― 調達資金の使途について教えてください。
目的の一つとしては、LLMを用いたAIを開発することで、専門サービスの属人性を減らしていくための開発資金として資金調達を行いました。具体的には、面談議事録のシステムへの自動入力や提案書ドラフトを自動で生成するような機能を予定しています。
一方で、お客様との深いコミュニケーションなど、人間でなければできない業務は残り続けます。テクノロジーを活用して不要な属人性を排除し、人間にしかできない価値提供により注力することを通じた売り手の利益最大化が重要です。テクノロジーを活用してサービスの品質を向上し、事業オーナーに最も支持されるプロフェッショナルファームを目指しています。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
今後は、事業承継や相続など事業オーナーが課題や悩みを抱えやすい周辺領域におけるサービスの提供体制を整え、事業オーナーの悩みをワンストップで解決できるような事業展開も検討しています。
加えて、金融業界や士業との連携も強化していきます。中小企業のオーナーと接する機会の多い事業者が当社のサービスを紹介することで、仲介しか選択肢がないと思っていたオーナーの満足度向上に繋がるはずです。各事業者との連携を拡大しながら当社サービスを普及することで、健全なM&A市場の発展に貢献できるよう取り組みます。
オーナーズ株式会社
オーナーズ株式会社は、売り手側の理想のM&A実現支援に特化したサービス『RISONAL M&A』や、資産運用支援サービス『RISONAL WEALTH』などを運営する企業。 『RISONAL M&A』は、事業売却をする顧客向けに、専属のエージェントが取引の支援を行う。また、買い手企業を広く検討し、業界・買い手企業分析に基づき、事業親和性の高い企業などを提案するという。 『RISONAL WEALTH』は、証券や銀行、保険、不動産など、さまざまな資産運用・財産継承などの支援サービスを行う。顧客のライフプランに応じた資産運用の目標の設定や、それまでの資産運用について提案・アフターフォローなどを行うという。
代表者名 | 作田隆吉 |
設立日 | 2021年7月1日 |
住所 | 東京都港区六本木6丁目2番31号六本木ヒルズノースタワー |