新型コロナウイルスの流行は、リモートワークやオンラインでの仕事の増加を促し、フリーランスとして働く人の数も増加している。フリーランスとして働く上で、避けて通れないのが確定申告だ。
法改正を追い風に確定申告の電子化も進み、企業向けのソフトウェア導入が進む一方で、フリーランスに最適化されたサービスは少ない。特に初めての確定申告では勝手もわからずに進めなければいけない中、フリーランスの確定申告に関する課題が表面化している。
こうした課題を解決するのが株式会社TxToだ。同社は2023年7月、フリーランスや個人事業主のための確定申告効率化アプリ「Taxnap」をリリースした。
フリーランスに必要な機能に絞って提供し、確定申告で最も困難とされる記帳や書類作成をアプリ上で完結できる。専門的な知識は不要で、スワイプ操作で事業用と個人用の支出を区別し、取引が自動で仕訳される。確定申告を初めて行う場合でも、シンプルなUIから簡単かつ効率的な対応が可能だ。
月額980円(税抜)から利用できリーズナブルな価格設定となっている。2024年中にはTaxnapのユーザー10万人達成を目指し、Taxnapのユーザーデータを活用した周辺領域へのビジネス拡大も予定している。
今後の展望などについて、代表取締役CEO 田中 雄太氏に、詳しく話を伺った。
個人事業主の足かせになる確定申告
―― フリーランス / 個人事業主が増加している背景について教えてください。
田中氏:コロナ禍を大きな背景として、副業や多様な働き方を通じて、自分らしい生き方を望む人が増えています。インフルエンサーやシェアサロンで働く美容師など、働き方やライフスタイルが多様化しているのです。2021年時点で1600万人だったフリーランス人口は、今後も毎年平均で約9%増加していくと予測されています。
―― 確定申告について、フリーランスならではの課題があるのでしょうか?
確定申告は単純作業も多く、適切に行うためには会計知識も必要になるため、フリーランスの約75%が負担に感じています。会計ソフトは複数存在しますが、法人向けのサービスをベースにしているものも多く、個人事業主が使いやすい設計にはなっていないこともあります。
税理士への依頼も費用がかかるため、収入が一定以上でないと依頼しづらく、自力で何とかしたい人は多いです。一方で自分でExcelや会計ソフトを駆使するには手間もかかり、ミスも発生してしまいます。
近年ではインボイス制度や電子帳簿保存法などを背景に、確定申告をスマートフォンから電子申請する方法が一般化しており、従来の税務署での直接提出や郵送による申告を上回っています。そのためフリーランスに向けて、簡単に確定申告ができるような仕組みの提供が必要です。
―― Taxnapの特徴を教えてください。
Taxnapは、確定申告に詳しくない方でも簡単に3つのステップで確定申告に必要な作業を行うことができます。
まず、クレジットカードや銀行口座などをTaxnapに連携させます。家計簿アプリを提供するマネーツリーと連携しているため、多くの金融機関データへ簡単にアクセスできます。
次に、スマートフォンの画面上でスワイプするだけで、支出の明細を個人用と事業用に振り分けていただけます。個人用のクレジットカードを事業用途で使っている場合でも、負担なくご利用いただける点が特徴です。
振り分けた取引は、90%以上の精度で自動仕訳されます。多く発生する取引は自動で仕訳されるようになるため、長期ではカード連携をしているだけでほとんどの記帳が完了するような世界を目指しています。
最後に、簡単な質問に答えるだけで確定申告書の作成ができ、そのままアプリから電子提出することが可能です。
さらに経費を事業用途としてスワイプすることで、リアルタイムに自分の節税額も概算で表示できます。フリーランスや個人事業主にとって使いやすいよう設計をしていることは大きな強みだと思います。
フリーランスも働きやすい社会へ
―― 創業のきっかけを教えてください。
大学生の頃はサッカーに打ち込み、厳しい環境に身を置くことで大きな成長につながることを実感しました。新卒では「じげん」に入社し、広告営業として1年目に全社表彰を受賞するなどご評価いただきましたが、さらなる成長を求めている自分もいました。
そうした折にサムライインキュベートとのご縁があり、イスラエルの新規投資にかかわる機会をいただいて入社しました。投資活動を通じて多くの起業家と出会い、学生時代から考えていたいつかは起業したいという思いも強くなり、まずはフリーランスとして独立し、スタートアップの支援を行っていました。
その後不動産を購入するために住宅ローンを申請する機会がありましたが、大きな金額でないにもかかわらず、雇用されていないことも影響して審査に落ちてしまったんです。年収に差がないとしても、フリーランスや個人事業主は与信がつきにくいことを実感し、フリーランスに向けて最適な与信モデルを提供するためにTxToを創業しました。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
正式リリースしたTaxnapを着実に立ち上げ、2023年中には1万人、2024年には10万人以上に利用いただくことを目指します。サービスの提供を通じて、フリーランスの確定申告に限らず、今後は収支管理など、お金の問題を幅広く解決するために機能を拡充していきます。さらにその先には、フリーランスの資金繰りを支援する事業展開も検討しています。
Taxnapは一般的な会計アプリと異なり、確定申告に対して苦手意識を持つ人でも、スワイプだけで簡単に使えるシンプルさが特徴です。多くの方に利用いただくことで得られる財務や仕訳などのデータを活かし、これまでにないフィンテック事業への展開も進めます。
事業を通じてフリーランスのための最適な与信モデルを創造し、フリーランスやフリーランスになる人々が、少しでも自分らしく生活できる世界を目指して日々取り組んでいきます。
株式会社TxTo
株式会社TxToは、フリーランス・個人事業主向けの確定申告アプリ『Taxnap』の開発を行う企業。 『Taxnap』は、フリーランス・個人事業主向けの確定申告に対応するアプリ。ユーザーは、クレジットカードや電子マネーと連携することで入力が不要になる。節税額と納税額を常に表示し、確定申告の際のイメージをサポートするという。また、スワイプ操作で仕分けができ、確定申告の申請書提出までアプリで完結できるという。
代表者名 | 田中雄太 |
設立日 | 2022年11月11日 |
住所 | 東京都杉並区荻窪5丁目12-2 |