AI時代に「歩く」ことから人間の創造性を問い直す──日本発フットギアブランドNEULOの挑戦

AI時代に「歩く」ことから人間の創造性を問い直す──日本発フットギアブランドNEULOの挑戦

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NEULO株式会社は、足本来の動きを引き出す設計を採用したパフォーマンス・フットギアブランド「NEULO」を展開するスタートアップだ。ゼロドロップ※1やワイドトゥボックス※2といった機構により、"歩く"という日常の行為を、コンディショニングと創造性を高める体験へと変えることを目指す。

背景にあるのは、AIが生産性の高い仕事を担う時代に、人間に残された価値は「問いを立てること」や「創造性」にあるという発想だ。同社は歩行と創造性の関係に着目し、足元から思考と身体性を結び直すブランドを掲げる。

2026年6月には、シードラウンドにおいてジェネシア・ベンチャーズ、Dawn Capital、Asu Capital Partnersに加え、エンジェル投資家として宇佐美進典氏、渡辺雅之氏、元陸上オリンピック選手を引受先とする総額3.5億円の資金調達を発表している。

第1弾モデル「PathOne」は2026年9月の発売を予定する。ベトナムの工場では、独自のラスト(足型)に沿った成型や一足ずつの検品など、手作業を重ねる生産が始まった。直近では東京・渋谷や大阪、神戸で試着会も開催し、ウェイトリスト登録も受け付けている。

日本発のグローバルブランドを目指す同社の構想について、代表取締役の船瀬 悠太氏に話を聞いた。

※1 ゼロドロップ:かかととつま先の高低差(ドロップ)をなくした設計。裸足で立つときと同じ水平な姿勢を保つことができる。
※2 ワイドトゥボックス:つま先まわりに横幅を持たせた設計。足指が自然に広がることで、足指を使って歩行しやすくなる。

AI時代に"歩く"を問い直す、身体性へのこだわり

──御社が取り組む事業について教えてください。

船瀬氏:私たちはNEULOというブランドでシューズを開発しています。単に靴を作る会社ではありません。大事にしているのは哲学です。AIが生産性の高い仕事を担う時代に、人間の役割は何か。0から1の問いを立て、アイデアを着想することだと考えています。

その創造性を引き出すプロセスとして、"歩く"に着目しました。歩行が発想や認知に良い影響を与えるという研究は数多くあります。脳や創造性への効果に加え、高齢者の認知症予防や健康寿命との関連、転倒を防ぐバランス能力など、指摘される効用は幅広い。健康寿命が延びる時代に、歩くことの価値はますます高まると見ています。

一方で、私たちの靴だけが最高だと主張したいわけではありません。パンプスもヒールも、それぞれに魅力があり必要な場面がある。さまざまな靴があってよいと思っています。そのうえで、週に1日でも2日でもNEULOを選んでもらう。そんな履き分けを通じて、皆さんに楽しい靴ライフをご提案したいのです。

──具体的には、どのようなシューズなのでしょうか。

現代の一般的なシューズは、かかとが高く、ソールが厚く、つま先が反り上がった形が多い。反り上がりで転がるように進めるため楽に歩けますが、その分だけ足の指を使わなくなります。

NEULOはこの逆を行きます。特徴は大きく五つです。

一つ目は「ゼロドロップ」。かかととつま先の高低差(ドロップ)をなくし、裸足で床に立つときと同じ水平な姿勢を保てます。

つま先とかかとの高さが同じになっている(画像:同社Instagramより)
つま先とかかとの高さが同じになっている(画像:同社Instagramより)

二つ目は「ワイドトゥボックス」。つま先まわりに横幅を設け、足指が自然に広がって地面をつかむ感覚が戻ります。

三つ目は「ミニマムトースプリング」。つま先の反り上がりを抑え、自分の足指で蹴り出して歩ける形にしました。

四つ目は13ミリのミッドソール。ベアフットシューズ(極薄ソールで裸足に近い感覚を得る靴)のようには薄くせず、地面の反応を感じつつ都会でも快適なクッション性を残しています。

五つ目が、かかとでフィットする足型設計です。足幅が狭いなど、靴が日本人に合わないという声はよく聞きます。そこで日本の職人とともに足型を製作し、それを土台に開発しました。つま先の自由度と、歩行時にずれない安定性を両立させています。

前から見た様子。足の甲からくるぶし、踵にかけてフィット感が高いが、足指のスペースは広く確保されている(画像:同社提供)
前から見た様子。足の甲からくるぶし、かかとにかけてフィット感が高いが、足指のスペースは広く確保されている(画像:同社提供)

──素材についてはいかがですか。

第1弾モデルは、素材の調達先にこだわりました。アッパーの素材は、大手ブランドのスポーツシューズでも使われている素材を開発しているサプライヤーから、交渉の末に発注できるようになりました。アウトソールのゴムも、滑りにくくランニングシューズにも使われる素材です。EVA自体は一般的な材料ですが、製造する場所の品質にこだわっています。

見た目の質感にも苦労しました。光沢感を出したかったのですが、色によって光沢は変わり、耐久性や厚みと光沢は相反します。薄いほど光沢は出やすい一方、薄いとランニングシューズのように見えてしまう。サプライヤーと試行錯誤を重ね、ようやく理想の素材と色にたどり着きました。

──発売に先立ち、体験の場も設けているそうですね。

2026年2月から5月にかけて、サンプルを使った先行体験会「FIRST WALK」を実施しました。約30分歩いていただき、直後に感想を伺う形です。参加者からは、足の指が動く感覚が心地よい、かかとがぴたりと収まるといった声を多くいただきました。普段の靴に履き替えた瞬間、いかに指を使えていなかったかに気づいたという方もいます。

直近では渋谷の店舗でも試着会を開き、満員となりました。今後も体験の機会を設けていく予定です。

大手が占める市場に残された"ホワイトスペース"

──大手スポーツブランド等も手がけている領域ですが、勝ち筋をどう描いていますか。

大手出身の方からは「プレイヤーが多く難しい領域だ」とよく言われます。私はむしろ、まだホワイトスペースが残っていると考えています。今日ご説明したような機能のシューズは、まだ市場にありません。

なぜないのか。産業障壁が高く、作るのが難しいからです。障壁は二つあります。一つは生産面。この種のシューズの素材や機能は、中国やベトナムなど海外の大量生産工場に頼らざるを得ません。ブランドの実績がない状態で海外工場と交渉し、ゼロから立ち上げるのは、一筋縄ではいきません。もう一つは資金面です。ロット数が大きくなるため、初期から相応の資金を要します。

──船瀬さんご自身のご経歴と、チーム体制についてもう少しお聞かせください。

新卒で外資系のコンサルティング企業で勤めましたが、それ以降「グローバルなビジネス」に挑戦してきたつもりです。立ち上げからCountry Managerとして携わったインドネシアの教育サービスは、国の指定オンライン学習ツールになりました。

改めて自分で事業を作っていくにあたって、グローバルにチャンスのある商材としてもシューズは魅力的だと考えています。

チームには、アパレル系のスタートアップで立ち上げから拡大まで様々な役割を担ったメンバーや、大手企業のCVCからベンチャー側に飛び込んできた者、元大手スポーツシューズメーカーの開発者などが加わっています。

ベトナムでの生産の様子(画像:同社提供)
ベトナムでの生産の様子(画像:同社提供)

日本発だからこそ挑めるグローバル市場

──主なターゲットはどのような層でしょうか。

まず狙いたいのは、仕事にバリバリ取り組みながら、体とメンタルのコンディショニングにも意識が高い方々です。ランニングやジム、ヨガに通ったり、スマートウォッチやオーラリングで睡眠を計測したりする層ですね。そうした方に、足の指を動かし、自然な姿勢で歩いてほしい。将来的には立ち仕事の多い方やシニア層まで、ペルソナは広げられると見ています。

──グローバル展開の戦略を聞かせてください。

世界のフットウェア市場は約70兆円で、いまも成長を続けています。テック企業のグローバル展開はアメリカ市場が多くを占め、シリコンバレーの一流プレイヤーと戦わねばなりません。一方でシューズはアジアが約4割を占め、アメリカに依存しない構造です。

ここで日本発であることが地理的に有利に働きます。シューズの生産拠点は中国やベトナムなどアジアに集中しており、日本は工場に近い。アジア各国への展開も進めやすい立地です。加えて、メイドインジャパンや日本発ブランドへの信頼は海外で根強い。インドネシア駐在時に痛感しました。

──事業拡大に向けた、資金の使い道を教えてください。

本格的に事業を展開するための調達を実施しました。PMFを試す段階ではありません。既存の市場は確かにあり、ある意味レッドオーシャンですが、そこで戦い抜くための資金と位置づけています。

第1弾モデル「PathOne」は2026年9月の発売を予定し、オフィスなど日常で使える一足として、まずは30〜40代を開拓します。続くモデルも次々に展開していく予定です。

カルチャーの中心である渋谷を拠点に、足と向き合う時間を作りやすい場を広げていきます。グローバルブランドを目指し、挑戦を続けます。

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