株式会社ヒーロープロデュース

“オークション”で隠れた優良企業の採用課題解決へ──ヒーロープロデュース、Creation Camp TENNOZに採択
知名度はないが、事業は強い。採用予算もポジションもある。それでも、人材を採れない──そんな中堅・中小企業は少なくない。
株式会社ヒーロープロデュースが向き合うのは、こうした隠れた優良企業の採用課題だ。同社が運営する「採用オークション」は、求職者が自身の経験や希望をプレゼンテーションし、企業が評価年収と採用意欲を込めたコメントを提示する入札式のマッチングプラットフォーム。企業規模や知名度にかかわらず、採用への熱意を求職者に直接届けられる仕組みを特徴とする。
さらに、同社が武器とするのは「バイタリティ人材」。M&A仲介出身者や自衛隊出身者など、圧倒的な熱量と当事者意識を持つ人材だ。後継者や経営者の右腕を必要とする企業にこの人材を届けることで、単なる採用支援を超えて、事業承継や地域企業の成長につなげようとしている。
ヒーロープロデュースは2026年7月、寺田倉庫が主催するシード期スタートアップ向けインキュベーションプログラム「Creation Camp TENNOZ」の第3期生に採択され、寺田倉庫からコンバーティブル・エクイティ方式で1000万円の出資を受けたと発表した。
同プログラムでは、約200社の応募から10社が第3期生として選出された。採択企業には、1社あたり1000万円の出資に加え、天王洲のインキュベーション施設を2年間無償で利用できる権利などが提供される。
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知名度の壁を越える「採用オークション」
「採用オークション」は、求職者が自身の経験や希望条件をプレゼンテーションし、企業が評価年収や採用意欲を込めたコメントをオファーとして提示する仕組みだ。開催は月2回。通常会では、月曜日に求職者が会場またはオンラインでプレゼンテーションを行い、企業はその日のうちにオファーを登録する。翌日、求職者には提示年収の上位5社のオファーが開示され、週内に面談から内定まで進む流れをとる。
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特徴は、知名度の高い企業だけが有利になりにくい点にある。
「知名度がない企業でも、年収やコメントを通じて採用への熱意を伝えられれば、求職者に届く可能性があります。上位5社に入れば、無名企業でも候補者に見てもらえる。そこに採用オークションの価値があると考えています」と代表取締役の西村康平氏は語る。
取材時点では、採用オークションを4回開催しており、1回あたり4〜6人が登壇。西村氏によると、登壇者1人あたり平均3件程度のオファーが入るという。会場参加とオンライン視聴、当日限りのアーカイブ視聴を含めると、1回あたり100~150社程度が見ていると話す。
なぜ「バイタリティ人材」に懸けるのか
同社が対象とするのは、M&A仲介出身者や元自衛官など、同社が「バイタリティ人材」と呼ぶ層だ。月2回のオークションのうち1回は、元自衛官を対象とした専用会として開催している。集客面では、元自衛官が運営していた転職メディアをM&Aで取得したほか、自衛隊系インフルエンサーとの連携も進めている。
「中堅・中小企業に、圧倒的な熱量や当事者意識を持つ人材が1人入るだけで会社は明るくなる。(そういった人材が)経営者になれば、地域も明るくなるはずです。バイタリティ人材に光を当て、全国の企業に送り出していきたい」と語る。
M&A仲介と中古車オークション、経験が生んだ着想
西村氏は、三井住友海上火災保険を経て、日本M&Aセンターに入社。大手金融機関との連携や新規提携部署の立ち上げに携わり、累計15件のM&A成約に関わった。その後、M&A成約案件のPMI人材として県西運輸に参画し、譲渡側である中古車オークション運営会社へ出向して経営を担った経歴を持つ。
「中堅・中小企業には、知名度はないけれど良い会社が多くあります。ただ、その知名度の壁によって人材採用に苦戦し、M&Aによる買収をためらったり、諦めたりするケースを数多く見てきました。採用に多くの時間を費やしている経営者も少なくありませんでした」
2024年版中小企業白書によれば、中核人材が不足していると回答した中小企業は約74.5%にのぼる。ポジションや採用予算があっても、知名度の壁によってオファーが届かず、大手企業に人材を採られてしまう。
この採用課題を解決できないか——そう考えていた西村氏は、経営を担った中古車オークションの「誰もが等しく入札できる」という仕組みに着目。それを採用に応用したことが採用オークションの原点となった。
人材紹介会社との連携、そして事業承継へ
今回の資金は、次段階となる人材紹介業向けプラットフォームの追加に充てる。全国の中小規模の人材紹介会社と連携し、彼らが抱える求職者を採用オークションに登録できる仕組みを整える方針だ。
さらに同社は、採用オークションを事業承継領域へ拡張する構想を掲げる。バイタリティ人材の紹介、経営者育成、M&Aや資本提携を組み合わせ、後継者不在の企業に若手経営人材を供給するモデルだ。経営者を志す元自衛官の若手人材が後継者不在の中小企業に入社し、ヒーロープロデュースが育成や営業支援を行う。すでにテストケースも始まっており、将来的には、その人材が企業の経営者候補として採用オークションに登壇し、資本提携先を探す構想だ。
「Creation Camp TENNOZ」への採択を機に、同社は全国の地方銀行や信用金庫、税理士などの士業ネットワークとの連携を進める方針だ。地方金融機関や士業は、日常的に後継者不在の優良中小企業と接点を持つ。そうした企業を採用オークションにつなげ、経営人材とのマッチングを広げようとしている。
「私たちは、地域の優良企業を救う取り組みを泥臭く続けていきます。同じ思いを持つ銀行や士業の方々と、ぜひ一緒に取り組んでいきたいです」と西村氏は期待を寄せる。
入札形式の採用支援から、若手経営人材の発掘・育成、事業承継支援へ。採用オークションが、地域企業の成長や承継を支えるインフラとなるのか、今後の展開が注目される。






