【開催レポート】バイオAIサミット2026|“データの質”で挑む日本発バイオAIの現在地

【開催レポート】バイオAIサミット2026|“データの質”で挑む日本発バイオAIの現在地

Written by
KEPPLE編集部
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今年で2回目を迎える「バイオAIサミット2026」が、2026年9月17日、東京・丸の内のTokyo Innovation Baseで開催された。

スタートアップ、大企業、アカデミア、医療機関、投資家、行政など、バイオAIに関わる多様なプレイヤーが集結。主催はバイオAI協議会(BAIA)、後援は東京都、科学技術振興機構(JST)、LINK-Jが務めた。

BAIAは、日本発のバイオAI産業の国際競争力強化を目的に、今回発足が発表された団体だ。尿などの体液に含まれるマイクロRNAを解析する技術でがんの早期発見を目指す、2018年創業のバイオAIスタートアップCraif株式会社が発起人・代表幹事を務める。同団体には、Taxa Technologies、bitBiome株式会社、株式会社digzymeが参画している。

当日のセッションでは、バイオAIの世界的な潮流やグローバル競争、研究開発と社会実装、AI時代のデータ基盤について活発な議論が交わされた。会場では登壇企業による新サービスの発表やライブデモも行われた。

本稿では、当日の様子をレポートする。

オープニング:米国で感じた「バイオAIの熱」と日本の勝ち筋

Craif株式会社 代表取締役(CEO) 小野瀨 隆一氏
Craif株式会社 代表取締役(CEO) 小野瀨 隆一氏

事務局を務めるCraif 代表取締役(CEO)の小野瀨 隆一氏は、米サンディエゴにラボを開設し自ら移住した経験をもとに、米国でのバイオAIの盛り上がりを紹介した。米国では血液検査に取り組む企業が多いとした上で、さらに負担が少なくデータを自動で取得できる領域はまだ空白だとし、Craifが同領域への進出を準備していることを明かした。

企業に従業員の健康診断を義務付ける日本の制度や、学校健診等で幼い頃から定期的に尿検査を実施する仕組みは、米国から見るとユニークだという。小野瀨氏は、こうした制度や取り組みを背景に、日本には健康・生体データを継続的に取得しやすい土壌があるとの見方を示し、「我々は絶対勝てると思っています。その理由は、日本で生まれた企業だからと考えています」(一部抜粋)と語った。

(画像:Craif株式会社)
(画像:Craif株式会社)

続いて東京都副知事の宮坂 学氏が登壇。「AIの進化によって、創薬・診断・医療の全ての領域において、AIは強力なゲームチェンジャーになるという確信がある」(一部抜粋)と語り、バイオAI領域の政策提言を歓迎する姿勢を示した。

グローバル競争の最前線:競争力は「出口を見据えたデータ」に宿る

Craif 最高執行責任者(COO)水沼 未雅氏、bitBiome 代表取締役社長CEO 鈴木 悠司氏、Taxa Technologies Japan GM 横田 尚己氏、digzyme 執行役員CFO 川辺 一毅氏
(左から)Craif 最高執行責任者(COO)水沼 未雅氏、bitBiome 代表取締役社長CEO 鈴木 悠司氏、Taxa Technologies Japan GM 横田 尚己氏、digzyme 執行役員CFO 川辺 一毅氏

セッション「グローバル競争の最前線」には、今回発足したBAIAの参画4社が登壇した。尿中マイクロRNA解析によりがんの早期発見を目指すCraif、においの原因菌を無臭の菌に置き換えるデオドラントを開発するTaxa Technologies、微生物ゲノムデータとAIを活用して酵素や菌株を開発するbitBiome、化学反応を進める生物由来の触媒「酵素」の開発プラットフォームを手がけるdigzymeだ。

パネルでは、製品やサービスの出口から逆算してデータを取得する重要性が共有された。日本の強みとして、臨床研究コストの低さや、バイオものづくりを支える多様な自然環境・微生物環境が挙がった一方、データ創出を投資と捉える意識がまだ十分に浸透していない点などが課題とされた。

bitBiomeの鈴木氏は、AIモデルの性能競争で米国や中国に勝つのは容易ではないとしたうえで、データの量・質が勝負を分けるフィジカルAIやバイオAIの領域であれば、はるかに勝機があると述べた。

当日はCraifの新サービスも発表

(画像:Craif株式会社)
(画像:Craif株式会社)

当日は、事務局を務めるCraifから新サービスの発表も行われた。

Craifは、尿中マイクロRNAを用いたすい臓がん診断補助医療機器プログラムについて、国内12施設のピボタル試験で検体収集を完了し、年内の薬事申請を目指すと報告した。あわせて、同じ尿検体と技術基盤で「生物学的年齢」を推定するエイジング検査「miAge(マイエイジ)」の先行販売開始を発表した。

また同社は、尿検査を行う自社ラボで開発・運用してきた業務効率化基盤を「Oyster Lab OS」として外部向けに提供すると発表した。

「21世紀はバイオの世紀になる」

クロージングで小野瀨氏は、「この21世紀で(AIによって)ライフサイエンス、ヘルスケアが劇的に変わるのではないかと思っている」と述べた上で、AIで生まれた成果を社会実装し、「本当の社会課題解決に繋げる」には官民学の連携が欠かせないと語った。

立場の異なる登壇者に共通していたのは、出口を見据えた良質なバイオデータこそが競争力になるという視点だった。この場から次の1年でどんな成果が生まれるのか、注目したい。

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