創業期を支えるパートナーが語る、急成長を実現するためのコーポレートの重要性
この10年で投資額は約10倍に膨らみ、確かな成長を遂げる日本のスタートアップシーン。スタートアップ企業の数も増えていく中で、それらの成長を支えるプレイヤーも多様化している。エコシステムも徐々に成熟していく中で、いま税理士の立場に求められる役割とは何か。
2024年8月にシード・アーリー期のスタートアップに特化した事務所としてグローブ税理士事務所を立ち上げた茅根 幸祐と、2013年に同じくスタートアップ特化の事務所を立ち上げて、現在はケップルグループの代表を務める神先 孝裕が語り合った。
創業期のスタートアップを支援するプレイヤーの重要性
神先 孝裕(以下、神先):今回は茅根さんからお声がけいただいたとのことで、ありがとうございます。
茅根 幸祐(以下、茅根):自分がスタートアップに特化した税理士事務所を立ち上げると決めて、真っ先に思い浮かんだのが神先さんだったので、今日は楽しみにしていました。
神先:事務所を立ち上げる前はどちらにいらっしゃったのですか。
茅根:元々は国税局にいまして、12年ほど勤務していました。その後、税理士資格を取得して、グローブ税理士事務所を立ち上げました。
神先:なかなか珍しいご経歴ですね。スタートアップに特化した税理士事務所を立ち上げたのはどのような経緯だったのですか。
茅根:スタートアップに特化した理由は大きく二つありまして。
一つは国税局で働きながら、大学院に通っていたのですが、そこでスタートアップエコシステムの研究をしていました。エコシステムの中にはさまざまなプレイヤーの方がいらっしゃいますが、特にプレシード・シードに対する支援が少し薄いのではないかと感じていました。
大学院の研究の中でも、特に Y combinator など若いステージの企業を支援するプレイヤーがスタートアップエコシステムにどのような影響を与えているか定量的に測る研究をしており、結果として、やはりいい影響を与えているんですよね。
自分自身もプレシード・シードに対する支援を、税理士の立場で行っていきたいという思いがあり、特化した事務所として立ち上げました。
また、もう一つの理由が、国税局で税務調査をやっている中で、税理士に対する不満として、経営を見てくれないということを経営者の方からよく聞いていました。
私自身、税理士のポジションであっても、もう少し幅広いことができるのではないかと考えています。特にプレシード・シード期のスタートアップは支援すべき領域がたくさんあるので、ここに特化して頑張っていきたいと思っています。
神先:私としても、とても嬉しいですね。なかなか創業期やアーリーステージのスタートアップを支援したいと思っていただける税理士の方はまだまだ多くないと思うので。自分もやっていたので分かるのですが、結構大変ですし。
茅根:大変だろうというのは分かっているんですが、それでもやりたいなと思いまして。
神先:でも、本当にそれくらいの想いがないと、サポートできないですよね、スタートアップの場合は。
税務の枠にとらわれず、経営を支えるパートナーとして
茅根:今日ぜひ聞いてみたかったのが、シード期のスタートアップを支援するにあたって、どのような関わり方をされていたのか、また支援していく中での課題感をお聞きしたいです。
神先:私の場合は26歳と比較的若くして独立して、スタートアップとたまたま出会って。同世代の起業家の方々からたくさん相談を受け始めるようになったのですが、他の税理士の方と比較したときに、知識や経験ではどうしても敵わないので、税務の枠を超えたサポートをするところを強みにしていましたから、茅根さんの考えに近い発想で取り組んでいました。
特にスタートアップが中小企業と違うのは、エクイティファイナンスをして、調達したお金を使って、採用して、プロダクト・サービスを作って、一気にグロースさせるので、コーポレートの体制構築が追いつかないんですよね。
もう売り上げが倍々で伸びていったりしますが、そういう時はどうしても社長は事業に向いているので、コーポレートは優先度が下がったり、コーポレート人材の採用もなかなか難しい。
けれど、次のファイナンスをするためには事業計画も作らなければならないし、もちろん期限通りに税務申告もしなければいけなくて、そういう状況で唯一伴走できるのは税理士だったりするので。私もスタートアップが大好きで、確定申告だけして終わりという感じではなかったので、そういった部分を評価いただいていたのかなと思います。
茅根:なるほど。何となく私が思っていた課題感と共有する部分があります。やっぱりスタートアップってすごい勢いで成長していくので、社長は事業を伸ばしたいじゃないですか。だからバックオフィスがどうしても後回しになってしまいますけど、ただそこを疎かにすると崩壊のきっかけになることもあると思っていまして。
神先:崩壊のきっかけもありますし、次のファイナンスが決まらなくなってしまいますよね。
月次決算が締まっていなくて、実際に利益が出ているかどうかも分からないようなケースもあります。売上に関しては入金ベースで見れば伸びているのが分かりますが、着地が見えなくなってしまう。
創業期のあるあるではありますが、やっぱりそれをきっかけに、VCなどの投資家側も意思決定できなくなってしまうケースがあるんですよね。
税理士がもっと中に入り込んでサポートできていれば、何とかできるケースもありますし、待ちの姿勢ではない積極的な関わりが大事なのかなと思います。
茅根:そうですよね。私たちも関わり方としてはしっかりと深く入らせてもらうようにしていて、通常の顧問契約ではあるのですが、税務だけでなく、事業計画の策定からファイナンスの支援まで幅広くコーポレート全般を担当するような形で関わっています。外部CFOのような立ち位置としてコアメンバーのように関わっていくので、信頼関係を構築しながらご一緒に取り組みをしています。
神先:素晴らしいですね。すでにスタートアップのクライアントもいらっしゃるのでしょうか。
茅根:そうですね。開業して間もないですが、おかげさまで支援させていただいているスタートアップ企業は徐々に増えており、この前もちょうどシードファイナンスを実施できた会社さんがいて、とても嬉しかったですね。
コーポレートを支援して、スタートアップエコシステムの発展に貢献
茅根:この立場だから言うわけではないが、プレシードからシード期のリソースがほとんどない状態の時には、私のようなコーポレートを支援するポジションの人間が入った方が事業が間違いなく加速すると思うんですよね。
ぜひ自分自身がそういった関わり方をさせてもらいたいですし、その方が事業を伸ばす上でもいいんだよ、ということは伝えていきたいです。
私たちがこのポジションで頑張っていくことで、スタートアップエコシステム全体にとっても良い影響を与えられるようになりたいです。
神先:本当にそう思いますね。やっぱり内部に入ってサポートするということは、それなりにリソースをかけることになります。茅根さん以外にも頑張っていらっしゃる士業の方を私も何人も知っていますが、これだけ日本にスタートアップが増えるとサポートしきれないんですよね。
フルコミットでやっていたら、支援先数を増やしていくことはどうしても難しいので、外部からコーポレートを支えてくださる方がもっともっと増えていってほしいと思います。
特にファイナンスに関してはまだまだ課題があると思っていて。以前と比較するとさまざまな形の支援や情報も増えたと思いますが、プレシードやシードの起業家の方とお話しすると、昔と変わらない課題を持っていたりする方もまだまだいらっしゃるので、私自身も期待しています。
茅根:スタートアップエコシステム全体の発展に貢献できるように、頑張ります。
グローブ税理士事務所
シード・アーリー期スタートアップの成長を加速させる税理士事務所。経営リソースが限られる創業初期において、ビジネスサイド&バックオフィスを一手に引き受け、事業を加速させるアクセラレーター型プロフェッショナルファームとしての機能が特徴。事業のアイディア段階から伴走し、事業計画・収支計画の策定、会社設立手続き、資本政策の立案、ファイナンス支援(デット・エクイティ)、バックオフィス体制の構築・代行までをワンストップで提供している。
創業初期のスタートアップが直面する課題を熟知し、的確なアドバイスを提供するとともに、おろそかになりがちなバックオフィスの体制を確立することで、経営者がコア業務に集中できる環境を創出することに注力。日本のスタートアップエコシステムにおいて、プレシード・シード期の成長を支えるプレイヤーとして世界に羽ばたくユニコーン企業の創出に貢献する。
URL:https://grove-tf.co.jp
茅根 幸祐(ちのね こうすけ)
1985年埼玉県生まれ。一橋大学大学院経営管理科(MBA)修了。大学卒業後、IT系スタートアップでの経験を経て東京国税局に入局。税務署法人課税課、国税庁長官官房企画課、東京国税局調査部などでキャリアを積み、税理士資格を取得しグローブ税理士事務所を開業。在職中にMBAを取得し、米国Y Combinatorを中心としたアクセラレーターがスタートアップの成長に与える影響について定量的研究を実施した。スタートアップでの実務経験、100件を超える税務調査で培った企業経営の深い理解、そしてMBAでの研究知見を活かし、グローブ税理士事務所ではシード・アーリー期のスタートアップに特化した成長支援を展開している。
神先 孝裕(かんざき たかひろ)
2009年、公認会計士試験合格後、あずさ監査法人に入所。2013年にケップル会計事務所を創業。2015年に株式会社ケップルを設立し、未上場株式管理ツール「KEPPLE CRM」、スタートアップデータベース「KEPPLE DB」など幅広く事業を展開。2022年には、スタートアップ株式のダイレクトセカンダリー特化型ファンド「ケップルリクイディティファンド」を設立。「イノベーションを促進するグローバルプラットフォームとなる」というビジョンの実現に向けて、グローバルでスタートアップと投資家への支援の輪を拡大させるべく、日々事業に向き合う。
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