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宇宙技術開発のダイモン、超軽量小型の探査車で挑む月面開発


株式会社ダイモンは、超小型・超軽量の月面探査車「YAOKI」を開発するロボット・宇宙技術開発ベンチャーだ。2023年のKEPPLE取材から約3年。同社は2025年3月、米Intuitive Machinesの月着陸船「Athena」に搭載され、YAOKIの初ミッション「Project YAOKI 1(PY1)」を実施した。

現在、同社は月面探査車の開発にとどまらず、月面へのペイロード輸送を担うコンテナの開発にも取り組む。探査車や実験機器などを着陸船に外付けし、月面まで安全に運ぶための輸送ケースだ。JAXAとはコンテナの汎用化・標準化で連携し、ispaceとは同社向けランダーに最適化したコンテナ開発検討の基本合意を結んでいる。
将来的には月面に多数のYAOKIを展開し、各機が取得したデータを集約して地球へ送る「月面データセンター」構想を描く。さらに、月面探査で培った技術を応用し、原子力発電所の廃炉点検をはじめとする地上インフラ点検ロボットの開発も進めている。
2023年の前回取材では、YAOKIの小型・軽量性や月面輸送契約、複数機展開による月面データ取得構想を中心に取り上げた。実際に月面到達・稼働を果たしたことで得た知見をもとに、同社の技術開発は次のフェーズに差し掛かっている。月面輸送を支える「コンテナ」開発、将来的な「月面データセンター」構想、地上インフラ点検ロボットへの応用について、代表取締役CEO兼CTOの中島 紳一郎氏に話を聞いた。
──前回の取材から約3年。2025年に実現した月面到達について教えていただけますか。
中島氏:2040年には140兆円規模になるといわれる月面開発市場に向けて、人数の少ない我々のような会社でも成功できることを示せた意義は大きいと思っています。ただ、成功といっても状況はかなり過酷でした。
着陸船「Athena」がクレーターの中で横転してしまい、YAOKIはデプロイヤーの外に出ることができませんでした。月の南極ですからマイナス100度という環境で、充電もできない。これ以上劣悪な宇宙環境はないというような状況でした。
さらに、(ライドシェアで他のプロジェクトも着陸船に乗っていた中で)我々の実施順番が最後だったため、着陸してから10時間待機しました。他のチームが2時間以上の実施時間をもらっていた中、我々に与えられた時間は10分でした。ここまで準備してきて、10分では確認できることが限られてしまう。
交渉の末、実施時間を2時間延長してもらうことができ、凍りついたバッテリーを復活させ、YAOKIを稼働させることができました。チームの団結力が本当に意味を持った瞬間でした。なお、このバッテリーを復活させる方法については独自のもので、特許を出願予定です。

──現在はYAOKIに加えて、月面デプロイメントシステムの開発も進められています。概要を教えてください。
月面探査車を月に運ぶには、着陸船に外付けする形でデプロイメントシステム、つまり「コンテナ」に収納する必要があります。ところが民間宇宙開発においては、このコンテナを誰が作るのかという役割が空白になっていました。着陸船メーカーは担当せず、ペイロード開発者も取り付け方まで考えが及んでいない。少なくとも当時は、この役割を明確に担うプレイヤーが見当たりませんでした。実際に月面輸送に取り組む中で、初めて必要性に気づいた領域でした。

今はJAXAと連携し、このコンテナの汎用化・標準化を進めています。月面輸送に関わるサイズ、取り付け方法、コネクタ、電力、通信といった要素をワンパッケージで標準化しようという取り組みです。物流の世界でコンテナの標準化が輸送コストを劇的に下げたように、月面輸送でも同じことを日本が主導して実現しようとしています。
コンテナの標準化が、ペイロード開発者の負担を減らし、月面開発への参入ハードルを下げることにつながると考えています。
ispaceとは、同社向けランダー(月着陸船)に最適化したコンテナ開発検討の基本合意を締結しています。
──今後のYAOKIの開発計画を教えてください。
5年間のロードマップを描いています。1年目が現在で、カメラによる撮影。2年目に資源センサーを搭載し、水資源を探索できるようにする。3年目にエッジAIを実装して自律走行を実現し、人がいなくても自動で観察・探索できる状態にします。その後、月面での充電や複数機による通信連携を実装し、5年目には100機程度のYAOKIを月に送り込む構想です。
100機のYAOKIにカメラや資源センサー、充電機能、無線通信連携、自律走行機能を搭載し、群制御によって月面を探索する。そうした仕組みを通じて、月面のデータを集める存在になっていきたいと考えています。
──「月面データセンター」という構想も打ち出していますよね。
月面でのデータ取得は、まだごく限られています。
地球でいうデータセンターというと、サーバーを置くイメージがありますが、私たちが考えているのは、月にサーバーを置くことではありません。YAOKIが月面のデータを取りにいき、それを地球へ送るという意味での「データ取得側」のデータセンターです。
YAOKIを月面に100機展開し、各機が撮影・探索したデータをコンテナで集約し、地球に送信する構想を描いています。衛星コンステレーションとの違いは、地表を自在に動き回り、状況に応じて集結・分散といった配置を変えられることです。衛星が定まった軌道をたどるのに対し、100機のYAOKIは一カ所に集まることも、広く分散することもできます。この柔軟性が、月面探査において大きな価値を持つと考えています。
──月面技術の地上応用についても進めていらっしゃるそうですね。
YAOKIの技術をベースにした地上向けインフラ点検ロボットの開発を進めています。月面向けは超軽量化が最優先ですが、地上向けは走破性を重視して6輪仕様にしています。まず廃炉点検への応用を皮切りに、放射線環境など人が入れない場所での点検作業への活用を目指しています。
取材前日にも福島を訪れ、試作品のデモンストレーションを行いました。走破性については一定の評価を得られてきており、2026年度中には現場での実績を獲得したいと考えています。実績が一度できれば、スケールアップに確信を持って進められます。
──量産化と今後の展開について教えてください。
私たちは研究開発の会社として、量産自体は製造パートナーに委ねる考えです。当社は技術と設計を提供し、1台ごとのロイヤリティ収入を得るモデルを想定しています。5年後には量産といえる領域に入っていきたいですね。
月面でも地上でも、YAOKIが社会インフラの一部として根付いていく。そういう未来に向けて取り組んでいきます。
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