政治をテクノロジーでDXするスタートアップ5選

この記事では、6月13日週に資金調達が報道されたユニコーン(企業評価額10億ドル以上の未公開企業)3社を評価額順に紹介します。
第一位は、インドで教育プログラムを運営するupGrad(企業評価額 22.5億ドル)です。過去の特集記事では、過去にBYJU’SなどのインドのEdTech企業を取り上げており、インドのEdTech企業の好調さが際立っていました。しかし、コロナ後の対面教育の再開や金利上昇などに伴い、インドのEdTech企業が逆風にさらされています。BYJU’Sの傘下であるWhiteHat Jr(プログラミング、算数、音楽などのオンライン授業を運営)が1,000人に退職勧告を行ったり、BYJU’Sの競合であるUnacademyが1,100人を一時解雇したことが報道されています(※1)。そのような厳しい環境下でupGradは昨年の資金調達から企業評価額を倍増させており、同社の強固なビジネスモデルに注目が集まっています。
設立期:
2015年
本社:
インド
企業評価額:
22.5億ドル
今回調達額:
2.25億ドル(企業評価額の10%)
参加投資家:
Lupa Systems, Educational Testing Service, Lakshmi Mittal, Sunil Bharti Mittal, Temasek Holdings
試験・留学対策、大学のオンラインコースなどを配信。インドネシア、ベトナム、中東にも進出しており、2023年3月までに売上5億ドルを目指している。
第二位は、市場分析やビジネス・インテリジェンス機能を持つAlphaSense(企業評価額 17億ドル)です。同社は、昨年の資金調達から評価額が倍増したことで、ARR(年間定期収益)1億ドル以上かつ評価額が10億ドル以上という「ケンタウロス」企業の仲間入りをしました。昨年までの企業評価額を中心に注目が集まった時は「ユニコーン」であるかどうかが重視されていましたが、安定収益が少ない企業の評価額が上昇しすぎた反省もあり、「ケンタウロス」という概念が生み出されています。「ケンタウロス」企業は同社を含め世界に150社程度しかない貴重な存在です。同社のARRは大きいものの、利益はまだ出ていないようです。
同社のサービスの主な利用ユーザーは金融機関に所属するアナリスト、投資家、ファイナンシャルプランナーなどであり、意思決定をするうえで同社が配信する証券会社や米国証券取引委員会のレポートが必要不可欠になっています。BloombergやFactSet Research Systemsなど一部機能が重なるところがあります。
同社の強みは、単に第三者の情報を集約できるだけでなく、集約した情報の分析を試みている点です。例えば、レポート間で市場予測の数字(例えば、SaaS市場規模の予測データなど)が異なる場合、各データの算出根拠を確認し、比較検討ができます。また、誰が市場予測について楽観的か、ヒートマップなども作成できます。コロナ発生後、対面での調査に制約があるため、これまで以上にレポートを分析する技術が求められています。
設立期:
2011年
本社:
アメリカ
企業評価額:
17億ドル
今回調達額:
2.25億ドル(企業評価額の13%)
参加投資家:
Goldman Sachs Asset Management, Viking Global Investors, BlackRock
ビジネス・インテリジェンスの検索プラットフォーム。銀行や資産運用会社を中心に3,500以上の顧客を抱える。
第三位は、AIによるコールセンター業務サービスの向上を目指すInvoca(企業評価額 11億ドル)です。コロナ発生後、対面店舗に行けないなどの理由でコールセンターの負担が増えています。企業にとっては、顧客対応満足度を上げながらコールセンター業務を効率化することが喫緊の課題です。同社のサービスの特徴の一つは、分類システムです。例えば、通話中に顧客が頻繁に使う単語を特定し、その顧客属性を理解しようとします。ARRは9,700万ドルであるため、「ケンタウロス」企業のステータスに近づきつつあります。
設立期:
2008年
本社:
アメリカ
企業評価額:
11億ドル
今回調達額:
0.83億ドル(企業評価額の8%)
参加投資家:
Silver Lake Waterman,Upfront Ventures, Accel, H.I.G. Capital
AIを活用した音声分析、電話応対の自動採点、自動音声応答機能を統合したプラットフォーム。米国とカナダが主要市場だが、欧州、メキシコ、南米にも進出する予定。
この分野では、米国が先行しており、Replicant、Tenyx、Observe.ai、Loris、Level AI、Uniphoreなど数多くの企業が存在します(※3)。日本でもオルツ、レトリバ、Empathなどがコールセンター業務をAIで支援しています。
株式会社オルツはなどAIサービスの開発を行う企業。 主力サービスの「AI GIJIROKU(AI議事録)」は会議音声の文字起こしサービス。事前に登録した声紋をAIが認識し、複数人の会議でも誰が発言したかを特定できる点が特徴。 他にもAIによるコールセンターの支援システムや、アンケートに自動回答するシステム「ナルティテュード(Nulltidude)」も開発を進める。「ナルティテュード」は、過去のアンケート回答やオンライン上での行動歴などを学習し「AIモニター」を作成、AIモニターが企業のアンケート調査に自動でAIが回答する。AIモニターのもととなった個人に対して、アンケートの依頼企業から謝礼が支払われる。 2018年6月、経済産業省が推進するスタートアップ企業の育成支援プログラム “J-Startup” に選出された。
株式会社レトリバは、自然言語処理や機械学習の技術を持つ企業。コールセンター支援業務が主力。AIを利用して、コールセンターの問い合わせを分析し、FAQなどから解答候補を提示し回答を支援するほか、会話を文字データにし、要約を作成する。また、ロゼッタと提携しAI音声翻訳に向けたカスタム音声認識エンジンを共同開発する業務提携契約も発表した。 プリファードネットワークスの前身となるプリファードインフラストラクチャー(PFI)から検索エンジン事業をスピンアウトする形で設立された。
株式会社Empathは、音声から気分状態を可視化するエンジン「Empath」を提供する企業。 「Web Empath」では、音声の物理的特徴量を解析することで、リアルタイムで喜怒哀楽と元気度を判定できる。このほか「Empath」を利用したアプリケーション「じぶん予報」と「スマートコールセンター・システム」も開発しており、メンタルヘルス対策やマーケティング等に有効に利用されている。日本国内で研究機関や企業などの幅広い分野で活用されているとともに、海外でも注目を浴びており、開発者向けに提供している「Web Empath API」は世界50か国以上で利用されている。 世界中の人々が互いを思いやることができる社会を作ることを使命としている。
※1
https://inc42.com/features/indian-edtech-startup-bubble-bursts-as-byjus-unacademy-co-downturn/
※2
https://techcrunch.com/2022/06/15/alphasense-an-analysis-and-business-intel-search-engine-finds-225m-at-a-1-7b-valuation/
※3
https://techcrunch.com/2022/06/14/proving-that-contact-center-tech-remains-desirable-invoca-raises-83m/
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